第231話 大陸統一と葬儀

 死亡した高校生達の葬儀を行う事になった。兵士達はまた別に執り行われるか、葬儀は城の広間で行われる。


 死体は棺に入れられており、木で組まれた火葬台に整然と並べられていた。


 ひとりひとりに花を添え、金貨を利き手に握らせ、閉じられた目には銀貨を置いて行く。そして最後に銅貨を口へ置く。


 これがこの国の最上級の送り方だという。庶民は銅貨や鉄貨で代用するようだ。


 俺が演説をする事になったというか、葬儀と大陸統一の宣言だから俺がやるしかない。

 また、国王や王族の国葬も一緒に執り行う。

 何度も分けてしまうと気が滅入るとの意見が多く、当然日常生活にも支障を来すからでもある。何度も葬儀に参加したいと思う者はいない。


 皆は当然の事として、俺に例えば葬儀の段取りの事や、市民からの要望をどこに持っていけば良いのかや、誰が処理をするのか?等々全ての事を聞いてくる。


 そして側に控えている政治に強い者の意見を聞いて決断をしていく。

 ロトナやメイベル達の誰かが必ず俺の側にいてくれる。そうしないと俺がパンクするし、そもそも答えられない。


 為政者がそういった事に対応出来ないと市民が不安がり、最悪の場合暴動に発展しかねない。その為にアドバイザーを必要としていた。


 俺は大陸統一の宣言を行い、ルシテルを総督に任命すると、群衆から大歓声が沸き上がっていた。


 因みにワーグナー、ボレロ、カービング、ジャックナイフの総督も来ている。代理に副官を置いており、妻の誰かが連絡役として総督府に残っている。総督府は基本的に城に設置され、謁見の間はワーグナー以外で廃止とし、多目的ホールとする案を出している。カービングを含め、謁見の間が襲撃された所はそのままホールにする工事が進められる。


 俺の宣言の後、聖職者により弔いの言葉が述べられ、棺が置かれた祭壇に火がくべられ、城で亡くなった者の死体が火葬されていく。王族の方に火を点ける役は騎士団長のトマスになった。

 国葬の時は騎士団の式は副長が執り、騎士団長達が火をくべる役をするが、残った騎士団は第4騎士団のみだった。基本的に騎士は増やさないから、唯一のボレロ地方の騎士団になる。


 高校生達の火はオリヴィアが着けた。


 見た目もまんま天使だからだ。それに転移時に関わりがある。俺やセレナには無理だった。

 俺達は死んでいった者に別れの言葉を添え、各々献花台に花を添えていった。


 殆どの者は献花をするか献花台に一礼をしてその場を去っていく。

 俺達は最後まで残り、最後は俺のファイヤーウォールで完全に焼き付くしていく。焼け跡に残った灰は近隣の畑にまかれる。

 そういう風習だった。

 死者は大地に還り、その養分は作物として育ち、それを食べ生きていく。そうする事で魂が安らかに輪廻転生すると信じられているのだ。また単なる迷信なのだが、今はその想いが必要なのだ。


 町の状態はそれは酷いものだった。

 ジャックナイフも酷かったが、魂食いによる人的な被害の方が遥かに酷かった。

 復興の為の人員は被害に応じて投入し、バルバロッサに一番力を入れて復興をする事になる。要は一番状況が悪いからだ。


 そして各地方に配置する妻達をどうするかになり、既に嫁会議でローテーションが決まっているというのだ。流石ナンシー、抜かりがない。


 勿論それに対する俺の意見は全て却下だ。良い意見は参考にする程度だ。ただ、皇帝としての指示とすれば別だが、そんな強権発動は避けるからしていない。


 嫁会議の議長も誰か教えれくれず、結果はその時に選出された伝達役の者が俺への報告役を務める。


 皆仲が良い。それもその筈で、ソウルメイトは魂が繋がっているので、上下関係も何も無く、本当の姉妹のように仲が良いのだ。

 ただ、取り纏め役としてナンシーとシェリーがその役を担っている。

 各役割も各地方由来の駐在当番以外はローテーションだとか。


 俺の強みはこの世界にない通信手段を、限定的な条件だが持っている事。

 刻印を持った妻から念話が届くと必要に応じて俺がそこに赴くのだ。

 まあ昔のポケベルのような状態だ。誰からかの念話なのかは分かるので、皆の魔力だとあっとかうっとかで終わるので、呼び出しにしかならない。それで十分だ。


 今日は葬儀で皆精神的に疲れたので早々に休む事となり、各地方に駐在の者をゲートで送り、俺も寝る事になった。


 添い寝はユリアとセレナだ。日本人の死に対し、気持ちがかなり沈んでいるからとナンシーが決めたのであった。

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