第210話 相討ち

 翌朝は普通に目覚めたので、2人を起こさない様に部屋を出てダイニングで食事の準備をする。収納から出して並べ始めると、クレアとニーべルングが朝の挨拶と共に現れた。

 クレアは配膳の手伝い、ニーベルングは紅茶を煎れてくれた。


 食事の準備をしていると皆が揃ったので、そのまま食事をして、その後は何も無かったかのように戦闘準備をし、ダンジョンに繰り出していった。


 先のボスでのドロップはお揃いの鎧だった。サイズがナンシーとクレアのだった。


 ここからは幾何学模様の壁の階層が始まった。

 道中の魔物はごく普通で問題はなかったが、皆が交代で戦闘をしていて、俺はドロップの収納係だ。拾うのも皆がする。


 この後のボス戦が俺がやらざるを得ないと分かっているから、道中は収納しかさせてくれない。勿論魔力は温存だ。


 49階層はボス前のウォーミングアップの為少しだけ戦ったが、殆ど出番はなかった。


 皆強くなっているが、それはステータスアップをしている事以外でもだ。


 そして50階層のボス部屋に向かう。俺は何となく感じてはいたが、クレアの忠告でアンタレスを出し、ライトソードも顕現している。

 俺以外は角にて待避させる。1人でボス部屋に入る選択肢はなかった。皆で一緒に入らないと、俺以外がボスを倒したとの認定をダンジョンからされない恐れがあったからだ。


 先ずはいつものコンボを試す。違いは中心部にもアイスウォールを出した事だ。

 多分顕現した瞬間にアイスウォールによるダメージが入る筈だ。


 やがて中心部が光出した。

 ボスが出現してきているので出現中に熱湯を注ぎ蓋をしている。


 やがて俺は何かを剣で受け流したようだ。

 アイスウォールが破られるとそこからデーモンが出てきた。40階層の奴と少し違うのだが、それは格が違った事だ。


 俺が受け止めた為に逆上して狂ったように襲ってくる。

 魔法を織り混ぜて剣で斬り結ぶと、時折何かを弾いていた。アリゾナ達を斬った技かスキルのようだ。


 アンタレスもライトソードも奴の攻撃を防いでいる。


 時々お互いダメージを貰う。


 偶然奴の片手を斬り落としたが、それでも見えない攻撃が止まない。

 やがて俺は耳を斬り落とされ、体に傷をいくつも負う。

 40合位打ち合い、アイスアローが奴の頭にヒットしてふらついたので、転移で頭上に飛んで落下しつつ脳天にライトソードを刺して決着したが、その時に反対の左肩から袈裟懸けに俺の体は斬り裂かれた。


 俺は崩れ落ちて倒れていくが、咄嗟にヒールを唱えると出血は収まったが、心臓を持っていかれていた。

 つまり相討ちだった。


 やがて誰かが駆けつけて来たが、意識が遠退き、ブラックアウトした。


 俺はふと目覚めた。

 何故か涙に顔を濡らした妻達に囲まれている。

 脚に力が入らない。しかも心臓が止まっているっぽい。

 そういえば戦闘で斬られたなと思い出すが、意識が遠のきそうだったので、欠損部位修復と心で唱えるとまず心臓が再建され、斬られた部位が復活して行く。俺は更に立派になった筈だ。


 そして下半身がスースーしている事に気が付く。

 ガバッと起きると下半身が裸だった。

 鎧も途中で斜めにスパッと切れている。本来切れる鎧ではないが、奴の次元刀は物理防御の鎧では防ぎきれなかったようだ。


 皆が見ている前で股間丸出しは流石に恥ずかしいので、収納からズボンを出して取り急ぎ履き、まずは身なりを整えてから皆に話しかけるが、皆の視線は(・・;)だった。


「どれ位気を失っていた?」


「ああ、完全に死んでしまったと思ったのに、良かった。気を失っていたのは1分位よ」


 ナンシーが泣きながら伝えてくれた。俺は頷いて立ち上がると、斬られていた体の中央より下の部分を見つけた。我ながらちょっと引いてしまった。


 慌てて鎧を脱ぎ、死体から装備を外して鎧を取り敢えず仮でくっつけながら大量の魔力を流すと、鎧は発光して修復していった。ハイエンジェルアーマーがスパッと切れるとは恐ろしい相手だった。


 周りの話だと相討ちだったらしい。まあこれを見れば嫌でも分かる。

 裸にした己の死体の処理を悩んだが、ボス部屋の出口の扉を開いてから外に出して燃やそうと思い、一旦収納に入れた。


 かなり疲れたのでシェルターを出して即時に中に入る。皆も続いて入る。

 風呂の準備をして貰いつつ、余りにも腹が減っているので、クリーンを掛けて先に食べ始めた。鎧は先程外しているままだ。

 俺は皆の食事を食べながら収納から出していたが、即時に誰かが並べて行く。


 先に食べ終わると風呂に行き体を確かめると、肉体に変化があった。

 今までより腹筋が割れていて、脚も筋肉質になっている。そして更に立派になってしまった。


 風呂を上がると鎧に強化を施す。ボスの魔石を使うと、強化値15。能力に次元刀を100%防ぐと有る。


 もう2つボスの魔石が有るのでドロップの鎧を強化できる。


 悩んだ末にアリゾナとクレアの鎧に施す。このダンジョンでの鎧が無い者は残り僅かだが、恐らく最終的に全員の分が集まりそうだ。


 強化値は14。それと次元刀を防ぐと出た。これで3人はもう大丈夫だから先が見えてきた。次元刀が厄介だが、ライトソードとアンタレスだと辛うじて防ぐ事は出来ていた。


 ボスの強さは次元刀さえなければ大した事はない。明日は3人で一気に終わらせようと思った。

 このダンジョンでのボスからの出たドロップの鎧が無いのはホーネット、アリア、メイベルだけになっていた。勿論俺のは先のダンジョンの分があるから大丈夫だ。


 今日の添い寝当番はクレアとシェリーだ。

 新品になった後の初戦闘をシェリー達に行い、恍惚に浸っているのを見ながら、新しい体の慣らし運転を終えて眠りについていったのであった。

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