第185話 オリヴィアへの刻印の儀に異変あり

 オリヴィアと夜の散歩に出るが、今までにした事がない場所に行く事とした。城の頂上へ飛んで行き、頂上の屋根に乗ったのだ。現在俺がこの国のトップだ。例え誰かに発見されても罰せられる事は無い。


 本来城の屋根に修理作業以外で登るなんて許されない。

 いけない事をしているのだが、景色はとても素晴らしかった。2人でその背徳的な景色を堪能している。

 オリヴィアにネックレスを渡し、彼女は箱を開けるとうっとりしながら中身を俺に渡し、後ろを向いて首を向ける。その首にネックレスを着けてあげると、喜びで泣いていた。


 そのまま屋敷に行き、一緒に風呂に入るが、清めの儀式を忘れていると指摘された。誰に言われたのか、いつの間にか刻印の儀の前に清めの儀もする事と聞いているようで、行わないと不安になってしまう為、オリヴィアを丁寧に洗い、ゆっくり湯船に浸かった。すっかり忘れていたのだ。もう清めの儀はやらないと。

 そうして風呂を上った後、オリヴィアの部屋にゲートで入った。


 オリヴィアは神々しかった。流石に天使だというだけあり、体の素晴らしさもそうだが、何より魂の輝きが違う。


 俺もちゃんとした服を着て、オリヴィアもドレスを着る。タオ殿と奥方、改めお母様にこれからオリヴィアとの儀を執り行うと報告をした。

 タオ殿もお母様も泣いて喜んでいた。

 挨拶のあと、オリヴィアをお姫様抱っこで部屋まで連れて行く。


 ベッドの上に下ろし、今一度意思を確認すると、刻印を希望した。


 俺達はこの世界に俺が召喚されたその儀式の最初から関わりを持っている。俺の召喚時に一番最初に触れた相手なのだ。だが残念ながら意識がないから幻影は見たとしても分からない。


 俺はオリヴィアを愛してしまった。

 オリヴィアも俺を愛してしまった。

 本来人間と天使の恋は禁則事項だ。それは厳密には肉体関係を結ぶ事が禁止されているのだ。禁止されているのには訳があるのだが、俺達は知らなかった。知るのは先の事だ。


 刻印の儀を始めるにあたり、キスをしたが早々に理性は吹き飛んでしまい、熱烈に愛を確かめて、一つになり、やがて眠りに落ちたのだった。


 儀式を始めてから約4時間が経過した時、突如俺達は目覚めた。


 オリヴィアに聞くとまだ刻印が完成していないという。

 そう報告を受けていると、俺の体に異変が感じられた。


 魔力の流れが俺からオリヴィアに向かっていたのだが、逆になりだした。

 つまりオリヴィアから俺へ魔力が流れてきている。

 オリヴィアに刻印が刻まれた事を今、急に理解できた。オリヴィア自身も確認できたが、まさにそのータイミングで魔力の流れが逆転し始めたのだ。


 魔力の流れ方がやばいので、手に巻いた紐を外すも何故か手が離れない。

 魔力はこの接触している手から移動しているのだ。それも急激に、そう大量に。


 俺達は慌てた。手を離そうとしても離れないのだ。

 そうしているとオリヴィアは魔力が尽きて気絶し、それでも魔力の流れに変わりはない。俺は段々苦しくなってきて呻き始めた。そして体中が熱くなり、心臓の鼓動が徐々に早くなる。


「ヤバイヤバイこれ絶対やばい」


 心臓が破裂しそうな勢いだか、どうにもならない。息が続かないし助けを呼ぶにも声が出ない。この魔力の流れを断たないといけないと思い、己の腕を切り落とす事を決断した。


 ウインドカッターを使おうとするも外に魔力を放出する事が出来なかった。

 収納から剣を取り出し、躊躇いもなく自らの左腕を切り落とした。欠損修復で急ぎ再生するも魔力の流れを断ち切れなかった。


 やがてオリヴィアが口から血を吐き出し、心臓が止まった。


 慌ててオリヴィアに触れようとすると、俺の心臓がついに破裂したのが分かる。慌ててヒールを強く唱えるも効果がなく、欠損修復を念じた。すると心臓が動き出した。

 しかし、魔力の流れは止まらず、心臓の動きがまたもや物凄く早くなり、2度目の破裂となったのだ。

 もう一度修復を行い、同じ事を繰り返し、何とか踏みとどまっていたが、10回目程で俺の魔力が尽きて、遂に心臓が破裂したと同時にブラックアウトしたのだった。魔力がどんどん流れているがそれでも魔力が切れたのだ。

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