第182話 ロトナとドロシー
慌ただしい夜だったなと思いつつ目が覚めると青ざめた。
結んだ筈の紐が解けていたからだ。
慌ててロトナを起こし、ステータスを確認させ、更にカードを出させた。
無事に刻印がステータスに反映されていたのでホッとした。
翌々考えると念話を使えば良かったのだが、今は封印されてしまったようでステータスが見えなくなっているのは痛かった。
ロトナの様子を確認するも、やはり少しだるそうだった。
しかし嗜虐心がそそる相手である。ある一点を見つめながらいぢる事にした。
「起こして悪かったね奥様。ちゃんと刻印者になっていて良かったけど、所で紐が外れていたけど心当たりはない?」
ロトナは昨夜の痕跡の残るシーツを見ると手で顔を覆い、真っ赤である。可愛かった。
「夜中にね、トイレに行きたくて目が覚めたの。ステータスを確認したら刻印が刻まれていたから、紐を外してトイレに行っていたの。結び直そうとしたけど、難しくて断念したの」
俺は安心したが、次の者からはちゃんと説明しないと怖いなと胸を撫で下ろしていた。
「今日は1日中体がだるいと思うから無理をしないでね。俺の魔力が君の体に取り込まれ、馴染む迄に1日近く必要だから。昨夜のロトナは全てが綺麗で素敵だったよ。愛しているよ」
やはり顔を真っ赤にしていて可愛かった。こうまで恥ずかしがられると、こちらもいけない事をした?と感じてしまう。
ロトナのスタイルはすらっとしていて、所謂モデル体型だった。ウエストは極端に細い。普段はメイドにコルセットをきつく巻かれており、そういったドレスを着る事が多いと言う。
胸はけっして小さくはなく、アリアと比べると小振りだが、ごく普通に程よいサイズだ。
本人は気にしていて、昨夜もそれを言うので俺の好きなサイズで、オブジェにしたいくらいに綺麗だよと言って漸く納得してくれた。
ロトナを城の自室に連れていき、俺は朝の鍛錬に向かうが、シカゴとオリンズに声を掛けると行くという。その前に侍女を城に送った。
ラニーニャも一緒に訓練に参加しており、ロトナに代り冒険者の出で立ちに着替えたドロシーを連れて宿に戻り、朝食になった。
顔は3つ子の様に似ているので、誰も入れ替わりに気が付かない。わざと、あのさあ、とか、えっと等と名前を呼ばずにいたからと言うのもある。
ロトナが試してみてと言っていて、ドロシーも面白がり、試したら誰も気が付かなかった。
先行するシカゴ達にはきのうと同じで、宿の手配とデートスポットの確認をお願いし、お小遣いを渡して送り出した。
食後に宿を引き払い、早々に町を出た。
町を出て少ししてから脇道に入り、城にゲートを繋げて護衛の兵士を呼び寄せ、出発した。
馬車の中では俺とドロシーの2人きりだが、早速お茶タイムを始めた。
ドロシーは趣味でお茶を煎れるのが好きで、紅茶を振る舞って貰った。
美人が煎れるのだ、それだけでも美味くない筈がない。というのではなく、本当に美味しかった。
「うめええ!なんでこんなに美味しいの!?」
「はい!それは私のね、愛情がこもっているからなの。こんなのはどうですか?」
口移しで飲ませてきた。それはそれで嬉しいのだが。
「ありがとうね。こんなに美味しいお茶は初めてだよ。向こうの世界のストバより美味しいな!」
ドロシーは急に態度が変わった。
「あの、良かったら向こうの事を教えてください!」
俺はそんなドロシーの頼みに思い出せる限りの事を話していったが、いつの間にか涙を流していて、ドロシーに抱き寄せられいた。
「ごめんなさい。もう帰れないのでしたね」
「いや、多分帰れる筈だよ。でもね、もう帰らないと心に決めたんだ。ユリアなんかは帰りたければ返してやろうと思うけど、俺は無理だな。帰るのは愛する人を置き去りにする事を意味するんだ」
ドロシーは頷いた。そして話題を変えてくれた。
彼女には妹が2人と兄が2人、弟が1人いると。妹の一人は双子だという。
やはり双子の親から双子が生まれている。しかし既に他国に嫁ぐ予定だという。それも半年後に政略結婚をさせられるというのだ。
「なあドロシー、妹はそいつの所に行きたいと思っているのか?」
首を振る。
「俺が止めさせてやろうか?」
ドロシーに泣きつかれた。なんでもバルバロッサに脅迫されているという。許せない。一刻も早くカービングに入り、バルバロッサに行くのを止めないといけないと心に誓う。
ドロシーはしっかりしていて、常識人だった。ロトナは王族らしからぬ振る舞いだし、アリアは王族の責務より市政の民を労る事を選んだ為に政治には疎かった。
しかしドロシーは第1王女だけあって帝王学を修めていた。なのであの2人の姉貴分で、時折ロトナを叱っていたりしていたのだなと思う。
ドロシーは芯のしっかりしている女性で、俺には勿体無いくらい気品に満ち溢れていた。目立たないようにしていたのは、俺の人となりをじっくりと観察する為で、決して物怖じをしていたのではなかった。
国元を離れて寂しくないのかと聞くと、泣き出してしまった。
俺は焦って抱きしめる。お国の為と重圧に耐えてきたのだ。こんな細い肩で。
彼女は小柄だ。スタイルはアリアとロトナと似ている。胸の大きさはアリアと一緒位かな。いや、少し大きいか?実は最近はギフトのスリーサイズの表示を封印している。予測する楽しみが減るからだ。
そんなドロシーが愛おしくなりしばらく抱き合っていた。
段々落ち着いてきたようで、留学の事やカービングの事を色々話してくれた。
なんだかんだと言っても18歳である。一応確認した。
何処で刻印の儀をしたいかと。そうすると屋敷の寝室か、今日の宿でと。まあ宿はどんな部屋か、それ次第だけどな。
ドロシーは典型的な王族だった。政治の事はまあドロシーに相談するのが良さそうだった。
段々打ち解けてきて、色々愚痴をこぼしてきた。普段はあまり感情を出す事をしないのだが、俺には心を開いて来ているようだ。時折笑顔も見え始めた。彼女の笑顔は儚げで美しかった。
暫くするとお互い見つめ合っていた。どちらからともなくキスをする。アリアともロトナとも性格が違い、ドロシーは大人の雰囲気のする淑女だった。色気があり、ついついお触りをしてしまう。
「夜まで待てないんでちゅか?いけない子でチュね」
いかんいかんこれは!と思うも意外なドロシーの発言にございます。固まりましてございます。そして僕は腐っていきまちゅ。誘惑には弱いんでちゅ。
気がつくと膝枕をされていて、俺はドロシーに甘えていた。チュウチュウしています。まさに赤・・・・・
ふと目覚めるとドロシーは俺を見つめていた。どうやらいつの間にか昼寝をしていたようだ。
「あ、あのさ、は、恥ずかしいから、さっきの事は俺とドロシーの2人のひみちゅにしてね」
ドロシーは穏やかな笑顔を見せてくる。そっと俺の頭を撫でておでこにキスをしてくれた。まるで母親のようだった。
「勇者でも息抜きは必要よ。そんな相手に私を選んでくれたんだよね。嬉しいわ」
既に遅いが、幼児退行して心のバランスを取ってしまった。みんな内緒にしてね!
15時過ぎには今日の目的の町に着いてしまった。
町に入り、シカゴ達と合流して宿に向かう。良さげな高級宿のスイートが借りられたのだ。
ドロシーも部屋を気に入ったようだ。ラニーニャにデートスポットを教えて貰い、ドロシーと2人でデートを楽しむ為に宿を出るのであった。
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