第173話 終息とアリアデイ

 追悼式の後についての話だが、いよいよ俺への王権譲渡を行い、その後カービング帝国へはロトナを伴い兵2万を率いて出立する事になりそうだった。


 既に今回のスタンピート及び王権移譲の件についての手紙をドロシーに持たせ、先行させる事となった。


 まずは兵5千を先行で付ける事となり、明日出立だ。また、使者としてロトナが俺と同行する為、俺の名代として先遣隊にアリアが加わっての派遣となった。つまりドロシーとアリアが先遣隊として一足先にワーグナーを出立する。


 その為俺への戴冠式には三宝姫では唯一ロトナが参加する事となった。


 いよいよ大陸制覇に乗り出さざるを得なくなったのだが、取り敢えずは皇帝を名乗る事になりそうだった。それとこの展開は絶対 ”愛の覇者” が関係していると思いつつも、怖いのと現実から逃げていてギフトを確認していなかったが、もう逃げる訳には行かなくなった。


 ギフトの詳細はこうだった。


 異性で有り純粋な好意の持ち主(甲)が、ギフト主(乙)に触れると乙に対する甲の純粋な好感度が100倍になり、乙も好意を持っていれば甲に対する好感度が100倍になる。添い遂げる事が可能な相手にしか発動しない。

 また好感を持っている権力者に純粋な好意を持たれていて、己より実力が上だと判断すれば、自ら求めて従属する。


 うーん凄過ぎる能力だ。オリヴィアに聞くと、本来付与できないギフトの一種だと言う。俺を転移させる時に慌てていて、正直なところ何を付与したのか覚えていないと。天界のコンソールならば調べられるが、今は封印の解除条件を偶々満たすしか分からないという。


 オリヴィアの能力がまだ封印中の為、ある程度の事しか分からないが、チートどころではないのだ。

 この大陸だとバルバロッサ以外は従属するのではないかと思えてきた。

 今までに触れた女性に対する愛情が膨れ上がったのはこれの影響なのだろうが、邪な好感では発動しないのが幸いだと思った。だから宿の女将さんとか、店の店員の方がお釣りを渡す時に指が触れても何も起こらなかったと。


 それと2日後の王権譲渡の時に、アリアとロトナの俺への婚姻(ハーレム入り)が正式発表となる。

 俺の屋敷は皇帝の屋敷としては不適切と言うので、別の所に新築で建てるそうだ。王城の直ぐ近くになるので、今の屋敷はそれまでの仮の屋敷の扱いとなる。


 おそらく各国に皇帝の居を構え、バルバロッサを直轄領として治める事になりそうだ。

 それと気が早いが、大陸一つを1国家とする事になるので、首都を決めないといけなくなるだろうな。


 現在の各国の国王を大公に任命し、州のような扱いとなりそうだった。この辺りはおいおい決めなくてはいけないっぽいので、アリアに要相談だった。ただ、細かい事は追々だが、大公に任命するのは決めてある。


 今後の事を考えると国の運営等はとてもではないが俺には無理だ。政治に疎い。


 おそらく当面はカービングにドロシー、ワーグナーにロトナを残してアリアを同行者としてアドバイスを貰う事になると思う。当面はそのように調整するつもりだ。


 ふと思うのだが、どうしてこうなったと俺は叫ばずにはいられなかった。皇帝?ただのしがないサラリーマンの俺がだ。


 夕刻にアリアが俺の所に現れて、いきなり刻印をとお願いされた。明日から別れての行動の為、今晩刻印をと希望されたのだ。しかも国王と王妃まで来て3人に土下座までされお願いされてしまったが、アリアは不安なのだろう。

 俺の身近な者としてセチアを同行させるようにした。いつもセチアは俺といるばかりだから、今回は良い機会だし、少しは自立して欲しい所ではある。


 それとは別にアリアと食事をする事にした。


 クロエの御用達の食堂に敢えてした。まだ今ならそんなに顔が知られていないから、アリアに冒険者が着る服を着せて、市井の民に紛れさせている。しかも变化の指輪で姿を変えている。


 孤児院に行っている時は孤児院にて出される昼食を食べていたが、何故かここの定食より上等の物が出ていると言う。

 アリアに酷な事実を伝える事にした。世間知らずだった。


「残念だけどね、城の誰かが手を回していて、アリアが行く日だけ普段と違う食事を出している筈だよ。孤児院でここのより良い食事が出る訳がないんだ。それにここのは庶民的だけれども、決して安い訳ではないんだよ。まあ高くもないけどね」


「それでは私が今まで食べたり見たりしていたのは、全て嘘偽りなのでしょうか?」


「ううん。それは違うよ。料理はそうだけど、アリアが着ていた服は粗末な修道院や孤児院のそれだよ。まあ職員の中に護衛が紛れてはいると思うけどね。それ以外は真実だよ。食事もね。少なくとも子供の行動には大きく干渉できないからね。料理はどこかの貴族の雇われの調理人が作っていたのだろうけどね」


「結局私が行って来た事は意味が無かったのでしょうか?聖女等と言われ、もてはやされていましたが?」


「それも違うよ。市民の評価は厳しいんだよ。王族が粗末な服を着て孤児院に侍女も連れずに来ていると、上辺だけではないと評価をされているからこそ、アリアは聖女だと人気があるんだよ。それに俺はアリア、貴女の勇気ある行動に感服したんだよ。俺が見たのは子供を庇った一人の女性であって、王女を見たんじゃないんだ。それに第三王女を好きになったんじゃない。子供を庇った勇気ある心の綺麗なレディーに惚れたんだ。王女でも聖女でもなく、アリアを、ただのアリアを愛している!」


 アリアはその言葉に泣いたのだった。

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