第169話 おっさんとの再会
まだ昼前だったので、昼食までに1階層位は行けそうなので野営を撤収して、といっても収納に入れるだけなので1分も掛らないのだが、出発準備を進めた。
出発前にふと思い出し、アリゾナの大剣に先程のキメラの魔石で強化を行ってみた。
+13の補正と、剣が3重に見え、相手がこちらの攻撃を躱しにくくなり、相手からしたら地味だが嫌なスペックが付与された。
スペックを説明するとアリゾナはにやりとした。ただし、発動中は魔力がそれなりに消費されるので、ここぞと言う時以外はストップになりそうだ。
元々のスペックには剣が触れた物の重量が100%アップになり、斬り結んだ相手が唖然としてしまう力だった。
剣の重さが倍になったら簡単には剣は振れなくなるので、武器や盾を使う相手にとってはとんでもないスペックだ。
生き物のステータスはなぜか見えなくなっているが、アイテムの鑑定系は無事で、サクサク鑑定できているのだ。
今日は27か28階層までにしようと伝え、出発した。
26階層は俺の戦闘勘がかなり鈍っているのが痛い程分かり、主に俺が戦う事とした。
このフロアからは石造りの壁で、如何にも迷宮といった感じの作りだった。
出没する魔物は小さめのミノタウロスかオーガだった。
マクギーに教えられた剣技のみで、スキルを使わずにどこまで行けるのかを確認していると、フロアボスもあっさり行けてしまったので、アリゾナが驚いていた。
純粋な剣技だと、俺にはまず勝てないという。ただ、種族の違いによる身体能力の差が有るから、10回やれば2、3回位は勝てるかもと査定をしていた。
27階層はオリンズ、28はシカゴ、29はホーネットが主軸で戦っていた。サクサク進んでいたので、予定を変えてボス部屋の手前まで行く事にしようとし、今は29階層に来ていた。
風の流れを感じるので周辺を調べると、どうやら隠し扉があるようだ。そっと覗くとかなり広い部屋へ続く扉があった。
一旦止まり、皆の意見を聞くと、罠の可能性もあるが万全の準備をして行ってみようとなった。意味もなく隠し扉がある訳がない筈だとなった。
隠し扉を開けて皆で中に入ると、中にはぽつんと宝箱が一つのみ置かれていた。
ホーネットが近付いて触ろうとするので止めさせて、部屋を確認していく。
この部屋は小学校の体育館位の空間で、元の入り口を確認するも消えていた。
どうやらこの宝箱を開けてイベントを発生させないと先に進めないようだ。
俺が宝箱を確認して罠等を確認するも、箱を開けるとアラームが鳴る以外は特になさそうだった。
皆に戦闘準備をさせて宝箱を開けると、中にはいつものあれが入っていて、仕方がないので取り出すとアラームが鳴り響いた。いつものチケットだ。
部屋の中央が光り出して、何かが出てくる気配があった。
急ぎ俺とホーネット、アリゾナ以外をコーナーに向かわせ、強めの魔力を込めたアイスウォールを展開して直接彼女達を狙えないようにし、オリンズ、シカゴに守りを固めさせた。
中央の光が消えるとそこには50匹を超えるオーク達がいた。
オーク以外にオークナイト数匹とオークジェネラル、オークメイジがいるのだ。
そして見覚えのある一際大きなオークみたいなのがいた。そう、キングだ。
そいつを見ると思い出した。今持っている愛刀の一つはバルバロッサのダンジョンにて同じような状況があり、その時にこのキングから貰ったのだった。
俺はキングに挨拶をした。
「ようおっさん!元気だったか?」
「お主はちと複雑そうだが、健在で何よりだ」
「こいつらおさんの仲間か?」
「いや、偶々一緒に転移して来ただけだ」
そんなやり取りをしているとオーク共が襲ってきた。
「じゃあ邪魔だから蹴散らすが、良いんだな?」
「問題ない。儂も手伝おう」
そういうので俺は各種魔法を大量に放ちつつ剣を振り、3分程でキングと一緒に全滅させた。
「ほう!この短期間でかなり腕を上げたな」
「まあ色々有ったからな。おっさんはどこに行けば会えるんだ?」
「ほう儂にまた会いたいのか?」
「そうだな。今の異変に対処するには共闘して行かないとダメな気がするんだ。ちなみにおっさんの名前は?おっさんじゃ言いづらいからな。俺はランスロットだ」
「うむ儂はヴォルガンじゃ。そうじゃな、ボレロ王国の北側にあるシューマン山の中腹にあるダンジョンに来ればいつでも会えるぞ。そして儂も魔王として召喚された他の世界からの転移者じゃ。本来転移できない筈なのだがな。そして真の魔王は他にいるのだ。それと今回の戒も残り時間はあまりないぞ」
「分かった。いずれ向かうから、その時は力を貸してくれ。敵対行為がなければこちらからは手を出さないと約束する。あとこの剣は助かっている。お礼にヴォルガンの剣を強化させてくれ」
頷くと剣を差し出してきたので、29階層のフロアボスの魔石で強化を行い
+13補正と強制的に付与されている援護や強化魔法を無効化するデバフであるディスペルが付与された。
「なんともお主の能力はチートな力だな。有り難く使わせてもらうとするよ。本来の召喚条件を満たさずに無理に召喚術を発動させた為、バルバロッサが招いたのは勇者だけではなく、異界の悪しき者達も呼んでしまっているのだ。それも召喚の数だけな。お主もそうじゃが、儂の方もその影響を少なからず受けておる。お主は無理そうだが、少なくともその根源を絶てば儂は元の世界に戻れる筈じゃ。すまんな。儂は元の世界に帰りたいんじゃ。真の勇者認定者が話の分かる奴で助かるよ。それと最後に忠告じゃ。召喚されてきた奴は直ぐには殺さぬ事じゃ。ではまた会おうぞ!」
そうしておっさんもとい、ヴォルガンは消えていった。
ため息をつきつつ魔石を拾ってから開いた出口から出ていき、30階層に向かった。
ボス部屋の入り口前にて野営を行い、皆に俺が思い出したバルバロッサにて会ったおっさんとの遭遇の事を話し、本日はお開きになっていったのだった。
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