第160話 新居へ
ふと気がつくとセレナ達が馬車で移動する準備をしているのが見えた。
昨夜はクロエとの刻印の儀だったので寝る前の念話は控えていたが、皆疲労の色が見えるものの、着々と進んでいる様に見えた。
今日こそはセレナさんの手を握りたい!と思っていると、隣りで準備をしているナンシー嬢が「キャッ」と短い悲鳴を上げた。何か柔らかい物を揉んでいる感じで、ナンシー嬢を見ると胸がたぷんたぷんと上下に揺れている。俺が揉むのを止めると揺れが止まったので、神の手はナンシー嬢の胸を揉んだようだが、何となく覚えのある感触だったので短く念話を送る事にした。
「こっちでギルマスが妻になり第2と第3王女とカービング帝国第1王女を娶る事になった。俺が王になる幻覚を見た。日本人一人を保護した。ごめん」
長い話が出来ないので、ぶっきらぼうな念話になり、魔力がやばいので止めたが、まだ神の手は出ていたが、ナンシー嬢が神の手を探り当てたようで握ってきた。俺もギュッと握り返したが、時間が限られているのだと理解しているようで簡潔に話してきた。
「話に着いていけないけど、ランスがする事だから意味があると思うし信じるよ。ランスなら国の一つや二つは治めても不思議じゃないよね。ランスの手の感覚だね。愛しています。皆無事です!」
限界が来たようなので一瞬強く握り、緩めると姿が見えなくなったが、同時に手も消えた。どうやら見えている時にしか神の手は出ないようだ。
俺が目覚めるともう朝で、クロエは既に目覚めていたが、俺が何やらしているのを不思議そうに見ていた。
「おはよう愛しい人」
とキスをしてその細い体を抱きしめた。
普段は大きな存在に感じるが、俺だけの時は仮面を脱ぎ捨てた本来のしとやかな可愛らしい女性に戻るのだ。
昨夜の痕跡が残っており、真っ赤なクロエは保護欲を掻き立てる。嗜虐心が少し出ていて痕跡を残していたんだ。そしてわざとらしく眺めていたのだけれどもね。
「おはようランス。やっと貴方の妻になれましたわ。愛しております」
クロエは普段と喋り方も違っていたのだ。
先程何をしていたのかを話すと、クロエはアドバイスと言うよりも考察をしてくれた。
「神の手は見えている所であれば、距離に関係なく発動するのではなくて?」
そう言われてから考えると、今まで夢の世界にいる時にしか無理なのだと先入観から決め付けていた為、試していなかったのだと気が付いた。クロエに言われるまで思いもよらなかったが、思い込みにより考えていなかったのだ。
試しに神の手でテーブルの椅子に掛けてあるクロエのナイトガウンを掴もうとしたが、サクッと発動して掴めたのでクロエの前まで持ってきた。
その様子にクロエは絶句していた。それは服だけが勝手に宙を浮いて飛んでいる感じだからだ。 これで練習ができる!と嬉しかったのだが、不思議なのは距離が関係ない事だ。恐らくリアルタイムで見えてさえいれば発動する筈だが、ナンシー嬢は睡眠中しか見えないのがもどかしい。ちゃんと見えて紙に書けたとしたら、念話よりも話が伝えられるのだが!と溜息をついていた。
志郎は能力を使い熟したいのだが、見る能力も思い込みから自ら能力に制限を掛けている事に暫くの間気が付かないのである。思い込みとは怖いものだ。
クロエにはまだこのギフトに関しては秘密にして欲しいと頼んだが、お花畑だった。
「いいわね!2人だけの、い・け・な・い・秘密って。志郎の事だから、悪戯で誰かのお尻を触ったり、胸を触るのでしょ?うふふ。いけない子でちゅね!」
からかわれたので、神の手を発動した。
「じゃあご要望通りにもみもみもみもみマッサージ♪」
歌いながら神の手でクロエの胸を揉んで、その形が不自然に変わる様子を涎を垂らしながら観察していたが、やられた当のクロエは複雑な表情をしていた。
そうこうしていると朝練の時間が来たので、服を着て向こうのクロエの部屋にゲートを出し、彼女をベッドに寝かせてから朝のランニングに出掛けた。
オリヴィア、セチア、ユリア以外に戦闘要員となる4名が庭で待っていた。俺は頷くと軽くストレッチをし、皆を引き連れてランニングを始めたが、やはりセチア、オリヴィア、ドラゴニュート以外が遅れ始めたので、流石に少しペースを落として進む。ランニングのついでに寄り道をする。といっても我が家だ。つまり紅屋敷の庭に来ていて、今いるメンバーに語った。
「今日からここが俺と君達の住む所だ。外壁の色は残念だが、2、3日後から塗装工事に入る。4人には明日以降となるが、転居が落ち着いたら初心者ダンジョンに入って貰い、ステータスを上げてもらいたい。オークション奴隷の2人には今日は防具をちゃんと選び直して貰いたい。今渡しているのは講習と訓練の為の物だから、午後から買いに行こう。遠慮をして安いのを絶対に選ぶな。サイズが合わなければオーダーするんだ。安いのを買うとしたら、オーダー品が完成するまでの間の繋ぎとしてだ。俺は普通の奴とは違う。セチアから聞いていると思うが、奴隷にこそ良い装備を与えるべきなんだ。それにより主人の生存率が上がる。その場に踏み止まれだなんてのは馬鹿な命令以外の何物でもない。自らの首を絞めるだけなんだ。それと俺はいずれ奴隷制度を潰すのに戦争をする。君達には将軍になるつもりで頑張って欲しい。いずれ奴隷から解放する。それと首輪を外していなかったね。屋敷に入ってから外そう」
全員が玄関に入り、首輪が嵌められている2人の肩に手を当て、隷属契約へ変更すると何時ものように首輪が外れ、唖然としている2人が首に手をやり、もはや首輪が無いのだと確認し、涙したのを見たのであった。
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