第157話 三つ子もどき

 アリアはにこやかに微笑んだ。


「ごきげんようランスロット様。お陰様で顔に受けた傷も綺麗に治っております。流石ですわね。姉の悪ふざけに引っ掛かったと見せて、実は見抜いておいででしたのね。実際は引っ掛かったのは姉の方なのですね。面白い方ですわね。私達の入れ替わりは父母でも見抜けないのに。やはり胸ですか?クロエ姉さまの言われる通りなのですね。無類のおっぱい好きと、美人を見たら何かと理由を付けて触りたがるからと、私も触られたのと嬉しそうに語っていましたわ。それでどちらが怪我を治した方か確認するのに胸で判断するから、私達に服を脱ぐように 言われていたのですね。自己紹介がまだでしたね。私は第3王女のアリアで御座います。胸だけでなく私を好いて貰えれば嬉しいですわ。ランスロット様の事を心の底からお慕い申し上げます」


 俺は狼狽えて少しふらついた。


「あっ、あのう、人の話を聞いていますか?胸はパットを入れたり、服が違えば違和感を感じ難いですよ。喋り方や所作の違いで分かったんですからね。それに先程は申し訳ありませんでした。服を脱がせたのは本気度を見たかったからと、あそこで脱がなかったら、実は間諜だと判断していましたから」


「冗談ですわ。うふふふ。ランスロット様の狼狽えた所を見る事が出来てほっとしましたわ。クロエ姉様は私の胸をいやらしい目で見ないんだよ、こんな男は初めてだよ。私がまるで子供扱いだよと珍しく熱くランスロット様の事を惚気ていましたよ。それで興味があったのですが、予想外の場所でお会いでき、まさかあれほどの紳士様だったとは驚きでした。私は勇者様ではなく、ランスロットと言う一人の男性を好きになりましたの」


「ははは。あと、こちらのレディを紹介して頂けると有難いのですが。確かメイドに紛れていましたよね。見覚えがあります。お母様はアリアさん達のお母様の双子ではないですか?」


「これは驚きました。何故知っているのですか?」


「あくまで予測ですよ。姉妹としか思えない位に似ていますし、歳は同じか1歳も違わないでしょう?そこから推測したまでと、母親が双子だと双子が生まれる確率はかなり高いのですよ。貴女方も双子であっても別に驚きはしませんよ。というか、双子でしょ?」


「 あ、わわたくすかー、失礼しました。カービング帝国第一王女のドロシーと申します。その宜しくお願い致します。」


 緊張しまくっているようで、言葉が変だったが、それは最初だけだった。


「あれ?隣国から来ているんだ。うん、宜しくね」


「はい、こちらの国で留学をさせて頂いており、ロトナとアリアとは三つ子のようにしております。お噂は色々聞いておりますが、私の判断もランスロット様は油断ならない傑物ですわ。昨日のおじ様とのやり取りは驚きましたわ。宜しくお願いします」


 当たり前のように握手を求めて来た。


「アリアさんから俺と肌が触れると何が起こるのかを聞いているのならば良いけれども、多分後戻りが出来なくなるよ。確認出来てはいないギフトがある。恐らくそのギフトには、お互いが愛すると思う程に相手を想い、どうしようもない位に好きになり、相手を大事にしたいと思う想いが強くなる力が俺自身に対しても発動するようなんだ。既に発動したかもだけど、接触すれば確実に俺のハーレムに入る事になる筈だ。2人は好ましいとは思うが、まだ好きだとか、恋を語る事が出来る程の時間話をしてはいないよ。だけど、アリアさんの事は既に愛おしく、愛しているとさえ感じているんだ。アリアさんは多分君達2人のような憧れではなく、俺の為に全てを捨て去る覚悟がもう有る筈だ。だから、ギフト抜きで俺を見極めて、それでも愛せられると確信したのならば、その時は妻として迎えたいから、出来れば時間を掛けて欲しいんだ」


 3人は頷いたが、藪蛇だった。いきなり飛び付いて来て、あっさりと手を握られたからだ。やはり2人の幻影が思い浮かび、各自の国の王冠を彼女達が俺に被せている。


 王権を俺に委譲する儀式の中で、王冠を被せる役をしている。幸いなのは両国の国王に請われ、2国を合併した事だ。現在の国王を大公として領主に任命したので、実質的な統治は変わらないが、俺が大陸統一に走った事が理解できる。アリアの時に見たのはバルバロッサに戦いを挑んでいるのだろうと判断し、俺は恐ろしさのあまりその場で崩れ落ちたが、慌てたアリアに抱きしめられた為、頭を床に打たなくて済んだのだ。


「俺は一体何者なんだ!何の為にこの世界に来たんだ!」


 そう叫ぶのがやっとで、ギフトが発動しているのと、ギフト表示封印解除条件を満たした旨のアナウンスがあり、ギフト名が 愛の覇者とアナウンスが出たのだ。


 俺は愕然としていたが、何とか立ち上がり、屋敷を契約する為の支払いと、その後の引き渡しの為にこの場にいる全員でギルドに向かったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る