第137話  運命の悪戯とオリヴィアとの出会いと失禁

 俺とセチアはアレイ殿に見送られながらデートに出発した。


 特に急ぐ必要もないので、ぶらぶらと街並みを楽しみながらゆっくりと腕を組んで歩いて行く。


「バルバロッサとは建物の造りが違うんだなあ。色が違うのかな?」


 俺は呟いていたが、セチアは不思議そうに見ていた。


 建築材が木とレンガの組み合わせの建物の比率が違うのだ。

 ふと思うそう言えば何故城壁もそうだが、町並みもバルバロッサと比べられたのだろうか?

 ギルドの位置や武器屋の位置もはっきり判るが、店主の顔が思い出せない。頭の中に地図があり、配置が分かっている感じだ。


 ふと気が付くと道の片隅でセチアが抱き付いており、背中をさすってくれていた。


 どうやら急に呆然として呟きだしたらしい。少し考察したいと喫茶店に入り、紅茶を啜る。バルバロッサの記憶は町並みは思い出すが、どういう行動を取っていたのかを思い出せないし、ゲートも出せなかった。

 はっきりとここには来た事がある ”筈” と思うも駄目だった。例えばビデオやテレビで見て、この景色は知っている!でも訪れた事はないから知識だけ有る!そういう場所、つまり知識だけでは駄目で、訪問している必要がある、そんな感じなのだと解釈した。


 自己完結して満足すると、セチアにお礼をして店を出ると真っ直ぐにギルドへ向かう事にした。俺はセチアの腰に手を回して歩いて行くのだった。


 程なくしてギルドに着いたので、まず受付に並ぼうとしたが、比較的空いている時間帯のようで丁度対応が終わったので空いた受付があった。その為そこに行ったのだが、10代後半から20代前半の年齢不詳な感じのサバサバした闊達そうなショートカットの受付嬢がいた。


「いらっしゃい若いお兄さん!ギルドへ!ようこそ!」


 意外と若い高い声だった。丁寧に喋ってはいるが、周辺の冒険者の目が俺を睨んでいた。テンプレ発生かなと思いつつ、先手を打つ事にした。そう、ギルドカードをおもむろに出して少し大きめの声で告げた。


「俺はS級冒険者のランスロットだ。今日はこの子の初心者講習の日程の確認と、俺がこの子と一緒に初心者ダンジョンに入る許可、昨日今日受け取りとした討伐した盗賊団の報酬を受け取りに来た。査定は終わっているか?ギルドマスターが対応してくれたぞ」


 後ろに近付いてきていた奴らが散り散りになって行くのが分かる。受付嬢が俺のカードを見て驚いた。


「あれっ?ランスロット様はS級ですが、ナンシーと言う職員はおりませんが?」


 そう言うのでカードの所属の所を指し示し、所属を伝えた。


「こ、これは失礼しました。遠方よりご苦労さまです。ですが、このような遠方にまた、どうなされたのですか?」


 うるうるした目で聞いてくる。立ち上がったので分かったが身長は175cm位と俺よりは低いが、ここにいる女性というよりも、男を含めた誰よりも背が高かった。だがやはり胸に目が行くが、あれがびゅーっと出ちゃいました。


名前 オリヴィア(本名表示不可偽名)

種族 ヒューマン(隠蔽中堕天使)

性別 女性(処女)

B83 W56 H84

身長 175cm

年齢 19


 あっ意外と若いんだな!20代に見えたのは色気の所為か。

 

「堕天使・・・偽名?」


 つい呟いてしまった。


 彼女は見る見るうちに青ざめ、震えているのが分かる。  

 おまけに失禁しているのは俺が怖がらせたのだろうか?ツーンと匂いがしてきたのだ。

 肩に手を当てクリーンを唱えた。


「ちょっと込み入った話があるので、会議室か何かで話が出来ませんか?」


 震えてはいるが、クリーンを掛けて貰った事のお礼をして3人で会議室へ向かった。


 会議室に入り適当に腰を掛けると彼女は一言言い俺にしがみついて泣きながら懇願してきた。


「私を殺しに来たのですか?出来れば痛くしないで下さい。実力差が顕著ですから抵抗はしません」


 震えながらまたもや怯え、失禁が止まらない。再びクリーンを唱えた。


 彼女の頭を撫でると俺は吹き飛び、彼女も吹き飛んで驚いたが、更に立ち上がろうとしていると急に泡を吹いて気絶していた。


 直接触れた時の反応としては異例だろう。手帳にもこれから起こる事を幻覚で疑似体験すると有るが、そんな生易しいレベルでは無かった。


 彼女が天使として天界に居るのだ。どうも俺が彼女の立場を回復して戻したらしくそれと俺が召喚された事に関わりがあるらしい。

 俺は天界の者に命令を下しているっぽいんだ。背中には羽がある?

 一体俺は何をやるのだ?流石について行けない。


 オリヴィアを抱き上げるとほっそりとしているが柔らかく温かだ。触れると神々しさすら感じられるのには驚いた。

 髪の色が青から美しい銀髪に変わっている。顔付きも闊達なサバサバした感じから、優しいお姉さんというか美人の雰囲気だ。顔が変わったのではなく、表情から雰囲気が変わったのだ。


 頭を撫で、口に付いた涎を拭き取ってやり、セチアに体を触らせて異常はないか確認するものの、特に何もないようだ。気絶しているだけのようだ。


 5分位で意識を取り戻したが、俺の顔を見るなり俺の服が温かい何かにより濡れてきたのが分かったので、2度クリーンを唱え、ステータスカードを渡した。勿論口にはしないが恐怖から失禁している。


「天使族の方よ、貴女を害する気は無いので、まずは落ち着いてください。貴女は何者なのですか?」


「本当ですか?本当に殺さないのですか?私は大丈夫なのですか?」


「信じろと言うのは無理でしょうが、私は転移者です。しかも真の勇者認定ですし、何より貴女を殺す理由がありません。こんな素敵で美しい女性を愛する事があっても、害する事は有り得ませんよ。良かったら事情を教えてくれませんか?」


 彼女は安心したようで簡単な自己紹介をしてくれたが、ここでは無理なので、夜仕事が終わったら話をしますとなった。18時に終わると言うので2人で迎えに行くのだが、表向きはセチアと友達になり、食事をするのだが、セチアの彼氏の俺が同席する感じにして欲しいと頼まれ、2人共頷いた。


 とりあえずセチアの初心者講習の日程を確認して貰うと、2日後だという事が分かったので申し込みを確定してもらう。


 先の盗賊の報酬の話しになると、ギルドマスターの所に行き、会議室に戻ると後を付いてくるようにと言われ、ギルドマスターの部屋に3人で入っていった。


 相変わらずのボディコンで、やはり胸がこぼれ落ちそうだ。


「遅かったわね。まあ座ってちょうだい。オリヴィア貴女もね」


 有無を言わせずオリヴィアを隣に座らせ話を始めたのであった。

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