第136話 アレイは空気を読めない

 4日目 day3


 またもや皆が集まっていたが、見慣れない女性が居る。

 どことなく背格好がナンシー嬢に似ているが顔が違う。丸顔で金髪の可愛らしい女性だ。側にセレナもいる。手を握りたいと思うと何か柔らかいものを掴んでおり、ついつい揉む。みるみるセレナの顔が複雑な表情をしているのが分かる。

 不思議な事にセレナの胸が勝手に揺れている。

 ふと手を止めると揺れが無くなった。どうやら神の手はセレナの胸を触っていたようだ。いや、揉んじゃった。


 周りが言う。


「ナンシー様どうか気をつけて下さい。」


 どうやら金髪の見知らぬ女性がナンシーと呼ばれている。

 等と感じていると意識が戻りセチアの胸を揉んでいた。


「やあおはよう。ごめんなさい。寝ぼけてついつい胸を触っていたんだね。嫌だっただろう?」


「ううん。むしろ嬉しかったんですよー。このまま私のふごご」


 何を言いたいのかが分かったので、挨拶代りのキスでその先を言わせない。


 といった感じでスキンシップを深めていたが、メイドさんが朝食の準備が出来た旨を知らせてくれた。


 急いで着替えて食堂に向かう事にしたが、ついついセチアの着替えをチラ見し、特に胸を意識してしまったが、セチアは俺の視線に気が付いていた。


「やせ我慢は体に毒ですよ。私で発散して下さい。私なんて性奴隷でしかお役にじょっふぁああ」


 またもやけしからん事を言うので、その口をキスで塞いだ。


「悲しい事を言わないでね。2度と自分の事を奴隷、しかもよりによって性奴隷だなんて言わないで欲しい。ね。頼むから哀しい事を言わないで」


 俺は涙を流しながら懇願したが、どうやら心に響いたようだ。


「申し訳ありません。もう2度と性奴隷だなんて言いませんから、だから、だから、どうかお許し下さい」


 土下座して謝るので慌てて起こし、力強く抱き締めて2人で暫く泣いていたが、俺のお腹が鳴ったのを契機に我に返る事が出来た。そして2人仲良く食堂に行く事が出来た。その時に丁度アレイ殿とタオが現れ一緒に食事を頂く事になった。


 アレイ殿は空気を読めないようだ。


「ランスロット卿よ。セチア嬢にちゃんと刻印を刻んだのであろうな?」


「いや、昨日は疲れが酷くてそれどころではなく寝てしまいました。今日はギルドに行った後セチアとデートなんですよ!2人の思い出を作りたいなって思うんですよね」


「ふむふむ。ちゃんと考えておるのだな。セチア殿よ、ちゃんとお強請りをするのだぞ!」


 この爺様、要らぬ事を言ってくれるので、セチアは真っ赤じゃないか!デートの後の事をつい意識し期待してしまうじゃないか!と思うが、その後のセクハラ攻撃はいっこうに止まる気配が無い。  


 どういう風に男に尽くすのかと、恐らく自らの性癖を暴露している感じで、彼に対するメイドの冷たい目が面白かった。

 貴族って皆こんな感じなのかな?と思いつつも、真っ赤になったセチアを可愛いなと思う。だが、助け船を出さないようなゲス行動を発症していたが、途中から真面目な話になっていた。


 セチアの滞在中の扱いだ。

 メイドの教育と、貴族の令嬢の教育をしてくれるという。当人も希望したのでお願いする事にしたのだが、またえらく気に入られたものだ。

 俺の訓練は明日からとなる。一日中ではないので、時折セチアとデート出来そうだが、この町をちゃんと見ておきたかった。


 気になっていたのは初心者ダンジョンだ。バルバロッサにも有って俺も攻略していたようだが、セチアのパワーレベリングをいずれしておきたいので、このダンジョンはどうだろう?と思案をしていた。

 セチアはもう帰る所が無く、俺の居る場所が自分の居場所となっているので、ボレロ王国に行くのは問題ないのだが、道中が長い。2人だけではまず無理だろうし、今の実力程度では命がいくつあっても足りない。セチアに強くなって貰う必要がある。少なく共、先日村を襲った盗賊如きに遅れを取らないようにまではしておきたい。


 小さくても良いので、家を買おうと思う。移動して家で休み、翌朝リスタートする為だ。ただ、移動自体はリスタートをするのであって省略出来ないので、セチアの護衛や御者を行える者が欲しい。セチアを家に残す手もあるが、出来れば避けたい。


 信用できてボレロ王国に迄同行出来る面子が欲しい。尤もそのような都合の良い奴がいる訳がない。欠損奴隷を購入し、修復してボレロで解放か、その後も仲間としておくか?というところかな。


 タオとアレイ殿に相談してみた。

 小さな家で良いのならば貸そうかと言うが、そこは俺の意地で購入したいと言い、不動産屋を紹介して貰う事となった。


 奴隷について聞いたが、奴隷商に行くと良いと言う。俺の能力で欠損修復が有ると伝えると他の所では喋るなときつく言われた。ひっきりなしに治療を求められて身動きが取れなくなると警告をされたが、旅の仲間にするのは奴隷を購入するのが良さそうだ。


 それと近日中に奴隷オークションがあるというので、戦闘奴隷を買えば良いという。バルバロッサは性奴隷で有名だが、ここでは戦闘奴隷をオークションの目玉としている。とはいうものの、性奴隷向けもあるから両方共買えば良いだけの事だと、セチアの前なのにしゃあしゃあと言ってのけた。ただ、何故かセチアも怒るどころか頷いていた。


 俺の持っている物に奴隷引換券が2枚有り、高級奴隷をこれで確保できそうだ。使い方は手帳に書いてあった。

 さすがに今日は奴隷を買うのは無理だが、今日のデートでは不動産屋を回ってみる事も考え始めた。


 家はボレロ王国を目指して移動を開始する時点で必要だと思う。

 ゲートで家に帰る事が出来るが、それなりの部屋は欲しい。

 いずれの事ではあるが、ボレロ王国に到着しても、こちらに全員で移り住んでも良いかなと思う。中々良い国だ。


 色々考えていると時間はどんどん過ぎていて、考えに夢中で手が止まってしまっていた。


 途中からセチアにあ~んで食べさせて貰っていたのだが、さりげなくなので食べ終わる頃まで餌付けされていた事に気が付かなかったのだ。


 食事の後セチアと腕を組みながらギルドに向かうのであった。

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