第105話 盗賊もどきの討伐

 洞窟の中には30人位がいるように思われた。

 先ずは見張りをナイフを投擲して倒し、内部に突入していく。

 直ぐにT字路になり、俺が右に突っ込み、2人は左だ。

 右は牢屋で見張りが2人いただけだ。速攻で倒し、2人に念話を送り、こちらに来るように伝えるが、遅かった。乱戦で2人共囲まれていた。


 魔法でも使っているのか、音や声が聞こえてこなかったのだ。


 俺が駆けつけると2人は血まみれで、瀕死のフレデリカを傷だらけのトリシアが守っていた。転移で割り込み、更に洞窟の入り口にゲートを開き2人をセレナに預けて回復を任せた。

 俺はアイスアローを撃ち込みまくった。


「あの二人が倒されるなんて」

 相手は普通の強さではない。変だなと思っていると生き残りが予想より多かった。


 長剣の一撃を辛うじて避けた。

 おかしい。盗賊の一撃ではない。

 正規の訓練を受けた手合いの剣戟だ。先日の女騎士団長より強いし、ああいった真っ当な剣筋だった。

 俺も囲まれた。転移で先程の一撃を入れてきた奴の後ろに跳び、その首を刎ねた。

 そいつの背後からそいつの体ごと貫いた剣が俺の鎧を掠る。脇に当たったので横に反れたが、俺のステータスによる補正でも躱しきれなかった。

 剣の実力では敵いそうに無い。しかも仲間の体ごと躊躇なく刺してきた。


「こいつらA級からS級の実力が有る」


 俺は唸った。

 ステータスに頼り切った戦闘をしてきた付けだ。

 フレデリカ達の所に行かせたくはない。

 俺が討ち漏らすと彼女達の所に行ってしまう。多分実力が彼女達より上の者が生き残っている筈だ。


 余裕が無く相手のステータスを確認できない。一旦後方に転移して距離を置き、コンボ技に出る事にした。大きく魔力を込めてアースホールを実行する。


 直径は通路一杯で、深さ10m位のが出来た。残りの奴が6人程落ちていったが、それでも生き残りがいた。


 穴の底にアイスアローを30発ばかり打ち込むと、流石に生き残りはいなくなった。


 急いで外に出るとフレデリカ達の治療は無事に終わっていた。

 奴隷にした奴に尋問をした。嘘をつくなと命じて。


「これから聞く事に正直に答えろ。お前達は盗賊ではないな?盗賊の振りをしている何処かの組織に属している者達だろう?お前達は何処の所属だ?若しくは誰に命ぜられて盗賊行為を行っている?」


 そう聞くと片方がしゃべり出した。


「俺達は他のエリアから移ってきた只の盗賊だ」


 見る見るうちにどんどん苦しんでいっている。嘘をついている証拠だ。


「嘘をついているのは分かっているんだ。そのまま嘘をつけばお前は死ぬぞ。お前達は何処から来た?雇い主は誰だ?」


「うがああああ」


 もうひとりがいきなり唸り出して俺に襲い掛かってきたが、奴隷紋の力で呼吸が出来なくなりやがて息を引き取った。嘘をついた者も程なくして事切れた。


 中の気配を探ると牢屋の中以外で生きている者の気配は何もない。


 周辺を警戒させつつ、俺は一旦ニーベルング達の所にゲートを開き、待避所に移った。

 次に皆を屋敷に送り、馬車を持ってこさせた。

 馬車を木に繋ぎ、皆の所に戻るとシェリー達に馬車を持ってくるように指示をして牢屋に向かう。

 中には若い奴隷の女が4人いた。高級奴隷のようだ。しかし女だけで奴隷商人の姿がない。ステータスによると生娘のままだ。次回のオークションの為に向かっていたが襲われて監禁されていたといった所か。


 やはりあいつらは盗賊ではない。盗賊ならば彼女達は既に犯されているだろう。


 牢を壊して助けようとするが、恐らく警戒するだろう。そこでナンシーとレフトアイを呼んで3人で牢の前に行ってから声を掛ける。


「大丈夫か?盗賊共は俺達が倒した。君達を助ける。取り合えず身の回りの世話は彼女達に頼むから心配をするな。一体何が有った?」


 1人が答えた


「冒険者様、助けて頂き有難うございます。私達を月に一度開催される奴隷市にてオークションに掛ける為に、バルバロッサの首都に連れて行くと聞かされていました。2日前に盗賊共に襲われ、オークションに掛けられる私達4名の奴隷以外は恐らく全員殺されております。護衛も屈強な方が20名もおりましたのに、一方的に倒されておりました。我々も犯され殺されると思っておりましたが、こちらに閉じ込められ、食事もあの者達と同じ物を出されていました」


 俺は頷いた。


「取り合えず分かりました。一旦安全な所に避難しましょう。先ずは牢を出て外に行きましょう。仲間の女性達が外に居ますので」


 俺は牢から出すときに一気に4人の首輪に触れ、仮主人から俺に主人を変更した。


「奴隷25を取得しました」

 と28まで流れてきた。

 女奴隷24人か。まあ6人は違うんだけどね。


 今回の子達も超美形揃いだ。

 皆驚いている。彼女達について奴隷の主人が出来たのだから。

 もう笑うしか無いよね。買ってもいないのに奴隷がまた増えた。勿論奴隷としては扱わないけど、シェリーがそうだが、奴隷根性が抜けない。


 外に出ると皆口をぽかーんと開けていて只驚くばかりだ。

 セレナはプルプルと震えている。

 取り合えず馬車に乗せる。

 2号車にセレナとクレアに移って貰い、当初の目的の町に向かう事にした。


 俺以外は一旦待機してもらい、俺は死体の回収とお宝の探索に出た。死体の回収を女性達にやらせたくはない。

 死体を全て回収し、武器も確保。鎧こそ皮鎧だが、武器は騎士がよく使うロングソードが殆どだ。

 金目の物は意外と少なかった。今回、奴隷商人を襲った分くらいしかない。おかしい。稼ぎを既に上納した後のようだ。

 金目の物を回収して牢はファイアーボールを撃ち込んで破壊してきた。

 アジトの入り口はアースウォールを使い塞いだ。他の盗賊に悪用されないようにだ。

 アースウォールの場合発動したら消せないので、その場に残るので蓋をするのに適している。


 そして街道に戻り次の街を目指すのであった。 


 そうそう、俺は馬鹿だった。取り敢えず4人は屋敷に送り、一緒に連れて行くのではなく、保護しておけば良いだけだったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る