第91話 ダンジョン7日目-2

 ゲートとはスキル取得後に一度でも行った事が有る場所で有ればゲートを開き、瞬間的に移動できるスキルだ。これは待ちに待ったスキルだ。ゲートを開いている間は誰でも往き来出来る。但し敵でもだ。

 有るとは聞いていたが、遂に来た。ただし、あくまでも取得後に訪れた事のある場所にしか無理なので、今すぐに家に帰る事は出来ない。


 ドロップ品はアダマンタイトメイルと聖女の衣。そして奴隷引換券。俺は絶句した。

 2つ共異世界者専用装備と有る。


 俺はクレアの所に行く。既にセリカが止血してくれてはいるが、右手を失ってしまった。クレアは申し訳なさそうにしている。他のメンバーは意識を取り戻すと順次セリカが治療してくれていた。


 一旦ボス部屋を出る事にした。ボスを倒すと次の階層へと続くのとは別種の扉が開いていたからだ。


 そこは無機質な部屋で、その中央に大きな魔石が有った。恐らくダンジョンコアだ。それ以外は扉が有るだけだ。

 俺はクレアを抱き寄せた。


「腕を再生させよう。痛かっただろう。俺がお前をちゃんとした体に戻してやる!」


 そういい俺は床に座り、クレアを俺の前に座らせた。左手を彼女の服に手を入れて左胸を摑む。ちょっとだけ揉んじゃったけど何も言ってこないし、ちょっとだけだから良いよね?心臓の辺りに手を置く必要が有ると直感的に分かった為だ。彼女の右腕に俺の右の掌を当て、欠損修復を始めた。

 腕の方ではなく、左手から心臓に向かって魔力が流れていく。そうすると徐々に腕が傷口から再生されていく。

 魔力切れは起こらなかったが、かなり吸い取られた。左手から彼女に魔力が流れ、右手に戻る感じだ。


 お陰で腕が再生し、クレアが泣いて抱き付いてきた。

 お礼を言われて背中をさすってから俺は腕をひたすら触り、異常が無いのかを確認していった。彼女の腕はしなやかで柔らかく心地良い。初めて使ったスキルなので、どうなるか分からなかったのだ。


 次の心配事がコアだ。


 さて、このコアをどうしようか?と自問した。


 まず触れてみる。

 特に何も起こらない。

 次に魔力を流すも反応が無い。仕方がないので収納に入れると入った。いや、入っちゃった。そうすると辺りが眩く光り、ふと気づくと全員外に居た。ナンシーによると、ダンジョンのコアは破壊するか取り除くとダンジョンが維持できなくなり、ダンジョン産の魔物以外の生き物は全て入り口の有った所に転移され、何事もなかったかのようにダンジョンが消えるという。


 今回がそれだ。周辺の気配を探るが特に何も無い。

 俺はセリカに告げた。指輪に魔力を込めて変身するようにと。

 早速セリカの姿が変わった。今後は名前を偽装し、呼び名も変える事にした。仮称で使った名の「セレナ」にすると伝えるとあっさり了承された。何故か泣いていたのだが、その意味を知るのは後日の事だ。


 ナンシーが用意してくれたギルドカードもステータスカードの名前もギフトにて偽装した。

 これで王城の方にセリカの事は簡単にはばれないだろうと、この時はそう思っていたのだ。


 ダンジョンを攻略出来たので、周辺の魔物もダンジョンからは新たに湧き出ないだろう。


 そうして、志郎達は一路町に向かった。

 町に着いたのは19時頃だろうか。

 取り敢えずいつもの宿の食堂で夕食を食べた。

 そしてナンシーから俺とセリカは支払いをしてから引き上げてくれと言われ、他のメンバーは先に帰っていった。どうやら気を遣ってくれたようだ。


 セリカは俺に甘えてきている。どうやら何の奇跡か、絶世の美少女が俺に好意を持ってくれている。ダンジョンで感じた事は間違いなかった。俺はほんまものの女子高生の心をゲットしてしまったようだ。


 腕を組み恋人のように歩く。恋人で良いよね?

 近いので程なくして屋敷に着き、屋敷の敷地に入り建物の入り口前まで来ていた。


「セレナ、家に帰ってきたよ」


「志郎さんってここで下宿でもしているのですか?そう言えば私って今日の宿はどうすれば良いのでしょうか?」


 そう言えば屋敷の事は話していなかったと気が付いた。


「ここは俺が買った屋敷だよ。買ったばかりだからまだ全部の部屋に家具は揃っていないけど、客間も十分に有るし、良かったらここに住まないか?ナンシーはもうじき引っ越してくるけど、他のメンバーは既に屋敷の住人だよ」


 そう言うと絶句し、ジト目をされてしまった。

 可愛過ぎてドキドキしてしまう。


「うん、その、行く当てもないし、お世話になろうかな。私の事を守って下さいね!私の王子様!」


 そう言うと俺の方を上目遣いで見たかと思ったら、目を瞑ってきた。キスをして欲しいというサインだろう。彼女からはキスをしてこない。要求はするが、彼女の中ではキスは男からするものだとなっているっぽい。

 俺は彼女の細い肩を優しく摑み、そっとキスをした。

 一度口を離してお互い見つめ合う。


「セレナいやセリカ、君の事が好きだ」


「私も志郎さんの事を愛しているの。大好きです。好きになってしまったんです。私の事を大事にしてくれますか?他の子と結婚するのは知っているし承知しているの。私もそのうちにその中の一人になるのかもだけど、私とお付き合いをして下さい。愛しの志郎さん」


 そう言うとキスをしてきた。今度は長く。俺の思い違いだ。彼女からもキスはするのだ。

 今までにしてきたどのキスよりも心が昂ぶり、つい胸にタッチしたが、彼女はその手に自らの手を重ねてきた。お触りOKでした。


「志郎さんのエッチ!」


 キスの後にそう言うと、くるっと一回転してお辞儀をした。


「じゃあ、我が家に案内して下さいね」


 そして俺のエスコートで一緒に玄関をくぐった。

 刻印の気配から分かってはいたが、全員がミニスカメイド姿で並んでいた。いつの間に着替えたのやら。その姿よりも、短時間で着替えただなんてある意味凄いよ!


「お帰りなさいませご主人様、セレナ様」


 横から悪感のしそうな圧巻のお出迎えをしてくれた。


 セリカ改めてセレナは屋敷に入ってから興奮してはしゃいでいた。

 城から開放され、安全な居場所をようやく手に入れたのだから仕方の無い事だ。


 俺はセレナを客間に案内していった。予め買って置いた服もクローゼットに入れておいて貰っていた。


 また、お風呂に入り今日は皆さん共々早々に寝る事となった。

 俺が横になっているとセレナが寝室に来た。

 1人だと怖くて寝れないというので、一緒に寝て欲しいと真っ赤になってお願いしてきた。

 俺は黙って抱き締め、布団に招き入れた。

 俺はゲスだが彼女には紳士でいるつもりだ。

 致す事を本当はしたいが、我慢で有る。今はまだ彼女の心の準備はできていない。いや、出来ていたのだ。迫られたら身を委ねるつもりだったのだ。


「添い寝だけだよ。エッチな事はしないから安心してね」


 セレナは耳まで真っ赤にしていた。


「志郎さんにならその、あの、良いの。でも志郎さんを信用しています。今日は添い寝をお願いします」


 そう言うので一緒に寝る事にした。彼女の頭を俺の胸に抱き寄せた。


「志郎さんの心臓の音を感じるの。落ち着くね。あいつらから救ってくれてありがとう」


 そう言うと涙を流し、程なくして彼女は寝ていった。この子を一生掛けて守ろう。どうやら俺の心も既に奪われたようだ。助け出せて良かった。彼女の純潔を守れて良かった。そしてちょっとゲスり、彼女の純潔は俺が頂くのさ!と心に決め、俺も寝顔を見つめている間に眠りに落ちていくのであった。

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