第90話 ダンジョン7日目-1

 day23


 朝になり目が覚めるとやはりセリカが俺の頭を抱えて撫でていた。

 心臓の鼓動が力強い。

 起きようとしたが、がっちりとホールドされていて起きられない。

 セリカが寝ている振りをしているのは分かってはいるが、やたらと抱えて撫でてきている。おまけにチューをしてくるのだ。


 流石にそろそろ起きたいのでセリカを起こす。


「おはようセリカ。そろそろ起きたいのだけれどもいいかな?」


 そう聞くと恥ずかしそうに言い訳をしていらっしゃいます。


「あらやだ、私って志朗さんを抱き枕と勘違いしていたんですね。おはようございます!」


 絶対中毒の所為や勘違いにして大胆行動を誤魔化す気のようです。まあいいか?


 彼女には優しい俺でございます。


 彼女が起きたけれども下着姿だったので、指を差し示します。


「キャー!なんで私ったら服を着ていないの?」


 そう言うが、先程自分から脱いでいたのを俺は知っています。


「さあ、寝ぼけていて脱いだんじゃないのかな?自宅にいる夢でも見たのかい?」


 俺は助け船を出しました。


「そ、そうだよね。寝ぼけていたんだよね?私ったらはしたないね。ねえ志朗さん、こんな私を嫌いにならないでね」


 そう言い背中を向けて服を着だします。


「セリカの事を嫌いになるなんてあり得ないよ。うん!朝から良い目の保養になったよ!」


「ばかばかばかばか!志朗さんのむっつりすけべ」


 顔を赤くして俺の胸をぽかぽか叩きます。

 可愛いな。愛おしく思えます。むっつりスケベって、今の若い子も言うんだなと思いつつ頭を撫でます。


「じゃあ目の保養になったし、朝食の準備と行きますか。セリカ、手伝ってくれないか?」


 そう言うとパッと明るくなり、俺の服を掴んで外についてきます。何処かで似たような事が有ったな?

 皆で楽しく食事を頂き、ダンジョンに繰り出す準備を始めます…


 ようやく訪れたなんの変哲のない日常のひとこまだが、俺には眩しかった。皆が生き生きとしている姿が嬉しかった。


 今日は26階からのスタートだ。セリカが自分も戦うといい、槍を欲しがった。そこで俺の槍を与えた。何でも薙刀部に所属していると言う。なるほど!それで姿勢が良く凛としているのかな?


 薙刀と槍とは違うけれど、薙刀に近い穂先の作りの槍を出した。比較的薙刀に近いので使えそうと言うので様子を見る。

 まず出てきたのは蠍の大型な奴で、中型バイク位の大きさだ。


「きもいよー」


 と言うがセリカは薙ぎ払いであっさり葬り、次に5匹同時に来た。


「いやー気持ち悪いの無理だよー」


 と言いつつ5連撃の突きにてあっさり倒す。

 俺はセリカの護衛で隣にいるが今の所出番はない。


 次に蛙の頭を持ったオークチックな奴。

 スパーンと首を刎ねた。その様子は凛として格好いい。

 薙ぎ払う時の顔が物凄く様になっていて、正に女神で有る。

 思わず見惚れてしまった。


 難なく先に進み、フロアボスとご対面。

 カマキリだった。と言ってもポニー位の大きさなのでキモイ。

 セリカが果敢に攻めるが腕に切り傷を負い、槍をあっさりはじき飛ばされた。

 鎌が振られ、セリカが立ち竦んでいる所にカマキリの鎌がセリカの細い首に向かっている。俺は転移してその鎌の付け根を切り落とした。しかし腕その物はセリカに当たり、セリカは吹き飛ばされた。

 俺は怒りに我を忘れ、ひたすら切り結んだ。40合位だろうか、動きを見切って両腕を根元から切断し、遂に頭部を切断した。


 ドロップは薙刀だ。

 早速カマキリの魔石で強化を行う。

 +12になった。付与した能力は80%の確率で気絶させる。それと自動修復。120%の強度と攻撃力アップ。ミスリル製だ。

 又もや凄い事になった。早速強化した薙刀をセリカに渡す。

 強化をする所を全員がじっと見ていて、正直恥ずかしかった。


「俺なんか見ていても面白くないだろう?」


 全員がジト目だ。


「いえ、ランスロット様の真剣なお姿を見ていたいんです」


 皆同じような事を口走る。どうやら薮蛇だったようだ。

 セリカは薙刀を受け取ってから何度か振ったり構えたりして、感覚を確認していたようだ。暫くすると頷いていた。それを見ていた何人かが見惚れていた。


「流石勇者様のお一人だ」


 呟くのが聞こえた。周りからすると見た事も無い不思議な武器を、それも初見で華麗に操っているのだから驚くよな。


 そしてダンジョンをさくさく進む。

 27階はブラックスワン、28階はムーンストーン、29階はセリカを含めたブラックオニキスで各々のチームが主体となって連携を含めた戦闘を行っていった。

 そしていよいよ30階だ。

 15時頃なのでもぐもぐタイムにし、甘味店で買い溜めしたスイーツを振る舞い、景気づけを行った。


 30分程休んだ後ボス部屋に挑んでいった。


 部屋は直径80m位だろうか。円形の部屋で高さは10m位有る。


 出てきたのはハイオーク。オークの上位種だ。

 ざっくり評価するとオークジェネラル以上キング以下だ。

 先ずはレフトアイ、フレデリカ、シェリーの3人が斬り掛かった。

 シェリーは蹴られて吹き飛んでいき、フレデリカは3合打ち合うと頭を剣の横腹で打たれて転倒し気絶した。レフトアイは腹を刺されて後退し、倒れ込んだので、セリカが慌てて治療する。

 フレデリカに追撃しようとするのでアイスウォールを展開し足を止め、更に転移にてレフトアイとフレデリカを安全な所まで連れていった。


 ナンシーが弓を、他のメンバーは各々魔法を放った。次にトリシアとクレアが斬り掛かり、トリシアが脚を切られ、皮一枚で繋がった状態で吹き飛ばされ、のたうち回っている。クレアは右肘から先を切断されてしまった。あっという間に俺以外の前衛衆が全滅だ。


 クレアは絶叫していて、ニーベルングに半ば抱えられながら下がっていく。

 俺が怒りに震えていると、奴はクレアの腕を食べ始めて、少しかじると魔法で灰にしてきた。これで腕をくっつける事が出来ない。


 俺はアンタレスに魔力を大きく込めて奴に斬り掛かり、腹にアイスアローをぶち込んで後方に飛ばす。飛んでいった先に転移して首を刎ねに行くも、腕でガードされ左手を切断するに留まった。俺は右手を殴られ、剣を落とした。


 強い!俺は楯を投げつけて、その隙に懐に入り奴に肉弾戦を挑んだ。

 一瞬の隙を突き、内股を決めて豪快に床に叩き付けた。


「グオーーー」

 雄叫びを上げて立ち上がり、悶絶しながら頭を振っている。


 俺は剣を拾って握りしめ、奴の胸に剣を突き立てた。追撃を放ち、アースランスで胸を串刺しにする。まだ生きているので後ろに転移して首を刎ねる事でボスを倒し、勝利してご褒美となるゲートのスキルを取得したのであった。

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