第83話 ダンジョン3日目-1
day19
翌朝俺はクレアに起こされた。セリカはまだ隣で寝て、ナンシーの姿は既になかった。
セリカを起こして朝食の準備をする。
今日のセリカは調子が良く、手伝いをしたいと言うので、俺が収納から出した食事を皆に配って貰う。皆は言わなくてもセリカに感謝の言葉を掛けてくれる。
セリカはとても嬉しそうだ。
この世界に来て何かしてお礼を言われた事が無いようだ。
見張り以外の全員に食事を配り終わった後、俺もセリカにお礼をいう。
「いやーセリカが手伝ってくれたから超助かっちゃったよ。サンクス!」
今風の若者が言うならこんな感じかな?と思い頭を撫でながら言った。
「うん。どう致しまして。それにしても綺麗な子ばかりで、セリカ焼いちゃうなぁ」
「うん。大丈夫。本妻がセリカだから。セリカの事を一番愛しているよ」
そう言うとパッと明るくなった。
実は皆には既に話してある。セリカが一番大事だと言う事に暫くはして欲しいと。彼女を皆が必要としていて、役に立っている様に振る舞って欲しいと。本当は誰かを贔屓にしたりはするつもりは無いが、病気の間は勘弁して欲しいと土下座をして頼み込んだのだ。俺も余裕がある訳ではない。皆に頼むべきではない事を頼んでいる。俺は最低な奴だと言うと、ナンシーに頬を引っぱたかれた。
「私達は既に家族なんだから、家族の為に尽くすのは当たり前よ。1人で抱え込まないで。ね、皆で頑張ろうね。私達は家族なんだから。もっと、もっと頼っても良いのよ。皆でセリカさんを助ようね!」
ナンシーは抱き締めてくれた。ナンシーは俺の扱い方をよく分かっているんだよな。時に厳しく、時に甘々で緩急を付けてくる。俺は尻に敷かれるんだろうな。既に完全にナンシーの掌の上にいる感じかな。
大きな舵取りは俺がして、細かい事はナンシーに任せば間違いがない。いつの間にか彼女に俺は生きる術を依存している。向こうにいた時の俺では考えられない。
社畜として20年以上飼い慣らされてきて、部下の生活を抱えており、自分を殺してきた。ナンシーはそんな俺の心に優しく入ってくる。心地良いんだよな。胸も…余計だったな。
有難かった。ナンシーのお腹に抱きついて暫く泣いた。誰かが背中と、左右に抱きついてくれた。暖かかった。
俺が立ち上がっても誰も何も言わないので俺は救われた。セリカを必ず救わなければ!と心に刻んだ。
キャンプを撤収し、ダンジョンに繰り出す。
16階は様子が変わっていた。
壁の色が違う。なんとショッキングピンクだ。何故?目が痛くなる。
暫く進むと十字路に出た。そうすると前後左右からオークナイトとリザードマンナイトが大量発生し、40匹程が襲ってきており、魔法を使うのもいた。
数が多く逃げ道が無い。
俺もセリカすらも戦う事になってしまい、大混乱だった。
俺はセリカを守りつつ戦い、クレアがセリカに張り付いていてくれた。
この戦闘で剣豪が3つと闇と聖を入手した。
怪我はニーベルングが肩に矢を受け、フレデリカの脚に剣が刺さったのと、一番重傷なのがナンシーで、右腕を半ば切断されていて、痛みから動けなかった。だが、幸いな事に、命に関わるような重症者はいなかった。後は小傷が少々といった具合だ。
皆にヒールを使い、治療をして行く。
俺がナンシーを、セリカがフレデリカを治してくれた。
フレデリカは大袈裟にセリカに抱き付き、お礼を述べていたのでセリカが困惑していたが、感謝をされた事に照れていた。
その後は散発的に魔物が出る程度で、フロアボスの所に辿り着いた。
そこで異常事態が発生した。
フレデリカとニーベルング、レフトアイとシェリーが石化したのだ。
どうやらメデューサのようだ。
目が合うと石化するやっかいな相手だ。
フレデリカが石化する直前に念話でメデューサだと伝えてきた。
メデューサはS級指定。強さ自体はオーガの方が強い。石化が厳しい為にS級と成っているとナンシーが教えてくれた。
俺は目を瞑り石化した仲間を避けつつ、強目に生成した40発以上のアイスアローを通路一杯に投げつけた。
奴隷紋と刻印のお陰で、目を瞑っていても例え石化していても仲間の位置は分かる。
気配察知の効果もあり、メデューサに当たったと確信した。
「石化を取得しました」
程なくしてアナウンスが出た。うは!恐ろしそうな能力のような気がする。
皆が何故か泣いてオロオロしている。何でだろう?たかだか石化ごときに。
クレアとトリシアに周辺警備をお願いし、2人以外に手伝わせて石化した者を向き合わせて立たせた。いたずら決行である。何故かいたずらにみんな付き合ってくれているな。
でもみんな泣いている。意味が分からない。大袈裟だなぁと、この時は呑気に思っていましたよ。
試しに収納してみようとしたら無理だった。
フレデリカとニーベルング、レフトアイとシェリーをくっつけて頭が当たる感じにした。試しに胸を触ってみた。
「うわー本当に石だなこりゃ。つるつるだなぁ」
次にお尻を撫でる。やっぱり堅い。
「それじゃあ行くよー。セリカはちゃんと見ていてねー」
そう言い、一呼吸置いた。
「状態回復」
そう発して4人に触れて回る。
そうすると、先程まで戦っていたのに、誰かと抱き合う感じの近さで、更に目の前に顔がある。フレデリカ達は唇が触れていたよな?。くくくくく。慌てふためいてくれ。
「うへー」
「えええ」
「ひぃー」
「ぎゃー」
と4人共驚きのあまり、尻餅をついた。ついついにやけそうになったが、殺気を感じてあそこもキュッとなった。
周りの女性陣は俺にジト目をして、無言で詰めよって来た。
ふと、殺気を察しどう切り抜けるか考えた。
「これはあかんやつだ。多分ナンシーに正座させられる奴だ。考えろ!俺は出来る子だ!」
身の危険を悟り、シレッと躱す事にした。教育的指導発動である。逃げ切るぞ!
「君達4人は俺が居なかったら死んでいたぞ。危機感を持って以後気を付けるように。石化は解除したけど、異常はないか?それとこれはお仕置きだからね!」
フレデリカのお尻を撫でた。
そう言うと皆が4人に群がり声を掛けて抱き合っていた。
「ふう。何とか乗り切ったぜ」
小声を出して呟いてしまっていたが、セリカにだけは聞こえていたようだ。
「あー、志朗さんっていぢわるなんだからぁ。いけないこでちゅねぇ。うふ。皆には黙っていてあげまちゅねぇ」
何故か赤ちゃん言葉になっており、親指を立て、サムズアップをしていた。
「セリカは優しいね。頼むよ」
俺もサムズアップを返したら赤くなり頷いていた。
そんな事も有ったが、気を取り直して17階に進むのであった。
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