第44話 シェリーやらかす

 ボス部屋を出ると周辺に2人が居るのが分かり、俺は教育的指導と言う名のセクハラを敢行した。

 5階層もそうだが、ここは城の通路を彷彿とさせるデザインの石の壁だ。また、魔物がいつ出てもおかしくない、そんな場所でもある。


 隠密を使って2人の背後に回り、お尻を撫でた。


「キャー!」


 悲鳴が上がる。


「今のが魔物なら殺されているぞ」


  2人は確かに油断していて驚いた訳だが、実際は行動を正当化しただけの単なるセクハラおやじである。

 2人に謝らせてから先に進み始めたが、何かが飛んで来た。


 鳥である。


 3羽おり、ナンシーがウインドカッターで次々に倒していく。先に進むに従って鳥の数が増えてきて、俺の方にも向かって来た。そいつらは拳で殴り倒す。

 全部で50匹位倒した頃に漸く階段に辿り着いた。


 その手前に小部屋が有ったので、そこで休憩を取る事にした。弁当を食べたりして英気を養った後、下に向かう階段を進んだ。


 7階は森だった。

 リザードマンが3匹向かってきたが、ナンシーが相手をしていた。しかし倒し損ねた奴が俺に向かってきたので、拳を振り抜くとその頭が吹き飛んだ。


 ここで初めてドロップアイテムが出たが、どうやらアクセサリーのようだ。

 ネックレスだったが、鑑定で読み取れるアイテムの内容に驚いた。身代わりの石が使われていたのだ。

 

 一度だけ命を落とす筈のダメージを食らった時に、石が身代わりになり、石が砕けると書かれている。


 今日は貴重な品が出た場合、装備品はナンシーに優先して渡す事に決めていたので、早速ナンシーに渡して装備して貰った。

 1個3000万Gとかなり価値がある一品らしいが、ナンシーの命に比べられないからね。ナンシーの命が助かる事を考えれば安いものだ。


 その後リザードマンは全部合わせて10匹位現れたが、難なく先に進む。次は8階だ。

 8階層に着くやいなや、いきなり獣が飛び込んで来た。

 狼を大きくした感じだが、数が多い。

 20匹位の群れで襲って来たので、流石に俺もシェリーも戦わざるを得なくなり、皆で斬りまくった。

 最後の一匹は虎ほどの大きさだったので、思わずナンシーに尋ねた。


「行けるか?」


「お任せください。」


 頷くので、任せる事にした。


 魔獣の動きはかなり早いが、ナンシーも何とかついていけていた。しかし相手のフェイントに引っ掛かり、胸元を殴られてしまいナンシーが吹き飛ばされる。魔獣が追撃を入れようとしたので、俺が間に入って防ぎ、その間にシェリーがナンシーの元に駆けつけた。


「まだやれます。私にやらせて下さい。」


 ナンシーが立ち上がり、必死の形相でお願いしてきたので渋々頷いた。


「次くらったら俺が変わるからね!」


続きをさせると、今度はフェイントに引っ掛からず、遂に前脚を切り飛ばしてみせた。そこからはあっという間に勝負が付いていった。


 また、ドロップが有り今回は指輪だ。2個出て来たので早速鑑定した。遠話用のマジックアイテムで、対になる指輪を装着した相手は指輪に魔力を込めると離れていても念話が可能となるようだ。但し距離に応じて消費魔力が上がるとも記述があったが、早速ナンシーに渡したが、シェリーが羨ましがっていた。

 中々のドロップ品に気を良くして9階に向かうのだった。


 9階は人工の建造物としか思えないような造りをしていた。

 早速大型の熊が出て来たので、ナンシーが果敢に攻めていく。熊は素早かったが、ナンシーの方が更に素早い。その上スピードを唱えたのもあり、ナンシーはすぐに熊を圧倒していった。


 ナンシーの攻撃は一撃一撃が浅く軽いが、確実に体力を削り、遂に首を切断して倒した。


 続いて3匹というか3頭が来たので、各人が1頭づつ戦った。

 シェリーは魔法を中心に戦い、最後は脳天にエストックを突き刺して終わった。俺は転移で後ろに回って首ちょんぱをしたが、取得したスキルは剛腕だった。

 ボス部屋目前で違和感が有り、よく確かめるとどうやらマップに無い隠し部屋が有るようだった。

 罠解除のスキルで隠し扉を発見したのだ。中を覗いてみると小学校の体育館ほどの広さのある部屋があった。

警戒しつつ中に入ると、中にはメルヘンチックな宝箱が有った。俺は宝箱にはすぐには近付かず、周りの異常を探る。シェリーの行動に注意を向けていなかったのはその為だったが、俺が気が付いた時には、シェリーは宝箱の蓋に手をかけていた。


「駄目だ!開けちゃ不味い!」


 咄嗟に叫んだが、既にシェリーは宝箱の蓋を開けてしまっていた。けたたましくアラームが鳴り響き、シェリーは固まってしまった。

 元の場所へ戻ろうとしたが、入ってきた扉が無くなっていて戻れない。シェリーとナンシーを隅に行かせ、俺が2人の前に立つ。そうこうしている間に、広い室内にはオークキングとそれに率いられたオーク50匹位が現れたのだ。


「不味い!マズイ!まずい!」


 俺は叫んだ。


「ごめんなさいごめんなさい」


 シェリーはひたすら謝っている。

 確かオークキングはS級かSS級の魔物の筈だ。2人を背中に守りながら


「いけるか?」


とフラグを発しながら自問し、冷や汗をかくのであった。

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