第12話 覚醒と奴隷の少女

 day4


 ふと目が覚めた。


「知らない天井だ…って、言ってみたかったんです。テンプレって奴ですよね」


 そのように心の中で呟いたが、しかも誰に言っているのか?と言い訳がましくだ。

 でも何だか記憶がおかしくて、どこで知った言葉なのか思い出せないんだけどね。

 よく分からないので、今俺がおかれている状況を把握してみる事にした。窓が有るのが分かるので、そちらの方を見るとかなり明るい。明るさから日中だと思われた。

 腹時計から考えるに、一晩は気絶していたようだ。

 顎に手をやって、ヒゲの状態を確認しようとした。ヒゲの長さから時間経過を判断しようと思ったが、手が動かせなかった。


 動かせなかったが、俺の手には柔らかく暖かくて心地良い温もりを感じとれた。

 窓と反対の方を見ると、椅子に腰掛けた高校生位の金髪の美少女が居て、俺の事を見ていた。そもそもこの手に感じられる温もりの正体は彼女の手だが、俺の記憶は混乱している為、頭の中はパニックに陥っていた。


「えっ!俺この子を連れ込んで、やっ、やっちゃった?どうしよう?淫行罪で警察に捕まる!家族にバレたら家庭崩壊だ!」


 オロオロオロオロ。

 やばいやばいと焦り、冷や汗が出る。


 しかし、どう考えてもこの部屋に連れ込んだ記憶が無い。

 酒好きって訳じゃ無いが、酔って記憶が飛んだ事が無いのが自慢なんだよね。


 取り敢えず彼女を見る事にした。


 うわ!めっさ綺麗やん・・・。


 どうやってこの子と知り合ったのだろうか?この子は何者だ?と思ったところ、ふっと彼女の情報が見えた。頭の中にディスプレイがあり、そこにどうやら彼女の情報が突如表れた感じだ。


名前 シェリー・ハリントン

種族 ヒューマン

性別 女性(処女)

B82 W56 H82  

身長 158cm

年齢 16

レベル 2

生命力 50/54

魔力  79/79

強さ  58

ギフト


 歌姫


 スキル

 剣術(片手剣)1

 馬術2

 交渉1

 算術1

 殿方奉仕

 風魔法1(封印中)


魔法(封印中)


 ウインドカッター

 スピードアップ


職業 無職(奴隷)



称号

 奴隷(ランスロツト)


 あれっ?突っ込みたくなる内容が盛りだくさんなんだが。殿方奉仕?なんだよその殿方奉仕って!それが有るのに処女とかって意味が分からん!


 それより奴隷の所有者が俺っぽいけど、どういう事だ?

 彼女をよく見ると、俺には効果の無かった隷属の首輪が装着されている。

 金髪に蒼い瞳で吸い込まれそうで、髪はかなり長そうだな。


 3サイズが何故かステータスに記載されているけども、どうやら表記は正確のようだ。

 すらっとしていてモデルみたいだ。表記のサイズもスンバラシイな!と言うか、アカンやろ。


 このハリントン嬢はアイドルになったら間違いなく大ブレイク必須な容姿である。

 外観だけじゃなく座っている姿勢も気品を感じる。服が安物のワンピースなのが勿体ないかな。


 うーん、記憶に無い!こんな美少女の奴隷ってかなりの金額がするだろうに、どうやって買ったんだろうか?!確かにあのルシテルと言う王女は奴隷制度があると言っていたな。


「性別の所の表記から、俺はまだ手を出していないんだよね。ほっ!」


 心の中で呟いたが、気にするのはそこじゃ無いよな?と一人で突っ込みを入れていた。

 取り敢えずこの子に確認をしよう。


「えっとおはようで良いのかな?」


「いえ、今はお昼少し前ですから、こんにちはでしょうか」


「ハリントンさんだっけ?今の状況がよく分からないので、教えて貰えると有難い」


 そう言った瞬間、彼女の表情が強張った。


「どうして私の家名をご存知なのでしょうか?名乗った覚えは有りませんが・・・」


 震える声で質問をしてきた。


「ご存知も何も、君の名前がシェリー・ハリントンって出ているよ」


 この後に知ったけど、名が前でファミリーネームは後ろなんだね。


「えっと、あのう、どういう事でしょうか?」


「どうもこうも、君を凝視したらステータスが見えたよ」


「えええ!ひょっとしてスキルもですか?」


 驚く事なのかな?と思いつつ、よく考えずに即答してしまった。


「うん」


 その途端に彼女の雪のような白い肌が急激に赤くなり、両手で顔を覆ってしまった。


「ランスロット様のばかばかばか!」


 モジモジしてしまった。握られた手が離れたのが残念。

 でも可愛いから許すのだ。

 少なくとも俺のステータスカードの名前は知っているのね。

 よくよく考えてみれば誰かに名乗ったような気がしてきた。


「ごめん。本当に状況が分からなくて、説明をしてくれると嬉しいんだけど」


 そう言うと彼女は体を起こし、姿勢を正した。


「失礼しました」


 再び手を握ってきた。45歳のおっさんには、自分の子供のような年の子に手を握られるとドキドキするんですけど!いや18歳でも彼女にそうされたらドキドキするよね。

 段々と45歳のおっさんではなく、思春期のチェリーになってきた気がする。


「改めてご挨拶を申し上げます。私の事を助けて下さりましてありがとうございます。先程おっしゃられましたシェリーと言うのは昔の名前ですので、新しい名前をどうかお付け下さい」


 理解不能な事を口に出していたが、取り敢えず頷くだけにしてスルーしたが、野営地を脱出した直後の事について話しを始めてくれた。


 要約するとこうだ。

 何人かの追っ手が来たが、俺が魔法で返り討ちにしたのだそうだ。初級魔法の筈なのにとんでもない威力で驚いたのだと。更に詠唱が聞こえなかったから心底驚いたと。

 追っ手を倒した直後に俺は気絶し、気絶する前に指示された通りに町に行った。町に入る時にひと悶着が有ったが、盗賊に襲われた事と、俺の状態を見て慌てて町に入れてくれた。


 但し、起きたら門番の所に来て手続きをして欲しいと言われたと。


 そして急ぎ治療士の所に向かい、治療を行った。

 治癒術士が治癒魔法を使って傷を治療し、金貨30枚が対価だったと。

 貨幣価値が分からないので、それが安いのか高いのかは分からない。貨幣価値を後で必ず確認しなければいけないなと心の中にメモをした。


 今は門番に案内された宿屋におり、宿泊費は金貨2枚との事だが、高いのか安いのかよく分からなかった。

 俺は丸一日気を失っていて、漸く目を覚ましたのだと言われたのだが、どうやら彼女はほぼ付きっきりで俺の看病をしてくれていたようだった。


 また、既に盗賊に襲われた場所には騎士団を派遣しており、生存者の救出と、可能で有れば遺体の回収等を行うそうだ。

 あの馬車やお金等は現場の確認次第になるが、どうやら俺の物になるらしい。騎士団の帰投待ちなんだとか。ぶっちゃけ生存者次第だというが、あの状況でとてもではないが彼女以外に生存者がいるとは思えないが。


 もう一つは門番の所で俺のステータスカードを確認し、犯罪者では無い事だとの条件が有るという。

 死亡した盗賊から回収したカードは一旦預けたそうで、この盗賊達が賞金首だった場合は懸賞金が出るらしい。


 今回の出来事は隣国の奴隷商がこの町にシェリーを含め、4人の高級奴隷をオークションに出品する為に隣国から向かっていた。

 その道中で起きたらしい。2つ離れた町で冒険者10名の護衛を雇い移動したが、最後の野営地は王都から約半日の距離だった為に油断したようで、そこを盗賊に襲われた。


 普通は時間的に隣町で一泊し、朝出発するのだそうだが、隣町からだと朝出れば夕方前には辿り着く。勿論小さな町はその間にいくつか有るが、あの人数でとなると、主要な町で宿泊するのがセオリーだと言っていた。小さな町だと宿の空きがなかったり、複数の宿に分散する事になる。流石に奴隷の為、何故危険な野営を選んだのかは聞かされていないとの事だった。


 どうやら見張りが矢で射殺され、冒険者の半分は寝ている所を襲われ、戦わずして戦力が半減したようだ。彼女達も馬車から引きずり出され、その場で犯された者もいた。


 そしてシェリーは天幕に引きずり込まれ、レイプされ掛けた所に俺が助けに入り今に至るとの事であった。

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