第4話 追放
day2
バタバタどかどか。
夜中か明け方だと思うが、部屋の外から聞こえてくるやたらと騒がしい音と振動で俺は目覚めた。
そしてガチャガチャと音がしたが、ノックもせずに俺のいる部屋のドアを開けようとしているようだ。寝る前に鍵を掛けていたから直ぐには開かなかったようだが、何だ?何だ?と思っていると、扉の外から声が聞こえてきた。
「隊長!どうしますか?」
「行け!」
突撃を命じる声が聴こえた直後に勢い良くドアが開き、開いた勢いのまま兵士の一人が飛び込んで来た。
どうやらショルダーアタックを決めこんでいた。
転がりこんで来た兵士は転がって倒れたが、その兵士を乗り越え、数人の兵士が部屋の中に一気に押し入ってきた。
俺は唖然としていて声を出す事が出来なかったが、兵士の一人がありきたりな事を叫んできた。
「抵抗するな!大人しくしろ!」
部屋の外には完全武装した兵士の何人かが控えているのが見えた。
そして俺はというと、為す術もなくあっさりと組伏せられていた。
一応中学の時は柔道をやっていたので、本来であれば一般兵士の一人や二人位ならぶん投げてやれるのだが、流石に寝ている所へ数人で押し入ってこられ、一気に制圧してきた状況ではどうにもならなかった。
床に引きずり下ろされ、更に顔を床に押し付けられている状況である。だがそれでも無駄だと思いつつ当たり前の反応を示し、叫んでみた。
「何をする!」
すると隊長らしき者がありもしない事を告げてきた。
「何を言うかこの痴れ者が!王女様に暴行を働いておいてとぼける気か!クズが!」
俺は唖然となった。そう、身に覚えの無い事を言われたからだ。
「何なんだよお前達」
悪態をつくが体を押さえる力は益々強くなっていき、苦しくなり唸った。
そして部屋から引きずり出され、ご丁寧に猿ぐつわまでする始末だ。
騒いだ所でどうにもならないので大人しく言う事を聞くしかなく、歩けと言われたので兵士の後を着いて行ったが、辿り着いた先は食堂と思われる所だった。
そうすると、その場に第二王女と神官達が待ち受けていた。
「罪人をこれへ」
神官が兵士に指示を出していた。
そして俺は王女の前に引き出され、頭を床に押し付けられた状態で漸く猿ぐつわを外された。
「これは一体何のつもりだ?」
俺は捲し立てたが神官が俺に対して信じられない事を告げた。
「王女に対する暴行罪を償ってもらう」
「はあ?何をいっているんだ?そんな事をする訳ないだろ!」
そう言い返しても聞く耳を持たず王女に何かを頼んだ。
「王女様、お願い致します」
神官に言われ、第二王女が別の神官から渡された首輪を持って俺へ近付いてきた。
そんな!あれって隷属の首輪だよな?と俺は狼狽え、そして呻いた。
「まっまさか!」
なんでだよと思う暇もなく、第二王女が俺の首に隷属の首輪と思われる物を填めてきた。ただ、第二王女が目の前で前屈みの為、胸元が見えた。一瞬その見事な谷間に釘付けになった。
しかし首輪は何の反応も示さなかった。
第二王女と神官が顔を合わせて一様に驚いていたが、俺の方はそんな事を知る筈もなく必死に唸った。
「ふざけるな!なんで奴隷になんかにならなきゃいけないんだ!」
そんなふうに焦っていたが、首輪が突如勝手に外れ、全員が驚いていた。俺の方はほえ?となり、暫しの沈黙の後に神官が意味不明な事を言い出した。
「南の魔の森にこいつを置いてこさせます。第二王女様、宜しいですね?」
第二王女に同意を求め頷くのを確認すると、兵士達にてきぱきと指示をし始めた。
ドアの外から高校生の何人かが見ていたようだが、誰も何も発する事もなく、ただ見ているだけだった。
「俺は何もしていないのに酷い仕打ちだ!暴行も何も昨夜は宿舎に入ってから一歩も出ていないんだ!。調べれば分かる!頼む!」
必死に訴えるも誰も相手にしてくれなかった。
そうこうしている間に馬車の用意が出来たようで、馬車の到着を確認した神官が、兵士に顎でしゃくって俺を連れ出させたが、兵士は神官と第二王女に確認をした。
「あそこは魔物がうようよしている所ですよ!良いんですか?」
そう聞いてきた兵士に対し、第二王女はただただ頷くだけだった。
「冗談じゃない。そんな所に放り出されたら無事じゃいられない!やめてくれ、話を聞いてくれ!俺にそんな事が…」
必死に訴えていたが、背後にいた兵士に頭を殴られ、俺は意識を手放した。
意識を手放す前に思ったのは、第二王女の胸って思ったより大きそうだな!だったが、俺ってしょうもない奴だなと、このような状況でそんな事を思っていたから呟いていたのだ。
とてもじゃ無いがオッサンの思考じゃなく、思春期真っ盛りの思考や言葉使いになっていたのだが、その事に気が付くのはまだ先の事だった。
どれ位時間が経ったのだろうか、意識を取り戻すと体は縛られており、無造作に荷台に寝かされていたようだ。
荷馬車が揺れる度に体に痛みが走り、理不尽なこの状況に意味が分からず、悔しくて涙を流すのだった。
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