セプテンクロバー

rapipi

ノワール国第一王子

 暗黒界では魔王の誕生歴257年。人間界ではユーリ9年、天界では丁度神の生誕祭をしているころ、3つの世界は大きな分岐点に立たされていた。

天魔人大戦てんまびとたいせんが起ころうとしていたのである。

天魔人大戦とは100年に一度起こる、3つ世界が争う総力戦のことだ。

3種族間で不可侵協定を結んでいるため、普段は互いの世界には干渉できないのだが、この年は戦争をしても良いことになっている。

予知では終焉のきざしが見られ、今回の戦いは今までのよりもより一層激しいものになると危惧されていた。

しかし、最も窮地にあったのは暗黒界であった。


「ベステーユ大臣、北闇の民が王都に向かい進行中のこと。次第に勢力を広げている模様です。」

「あーわかっておるわい。北の民に西と南の戦争、東の我が国に対する軍事行動。食糧問題に義勇兵も集めなくてはならぬ。」

60歳ぐらいの見た目をしたでっぷりとした腹に猫背、目つきの悪いベステーユは白髪をかきむしりながら言った。

シャツのボタンは今にも飛んでいってしまいそうなほど、来ているシャツはピチピチだった。

「ベステーユ大臣、王迎についての話ですが。」

もう1人の兵士が話しかける。

「ぐぬぬ。そうであった。しかも半年後には天魔人大戦が控えておる。本当に何の手でもいいから借りたいわい。」

暗黒界の中央に位置するノワール国は王迎おうげいと呼ばれる次の王を決める試練がある。

新たな王を迎えるための試練である。

つまり現時点では国王不在の国であり、それが暗黒界の不安定さに直結している。

ベステーユと兵士とのやりとりを1羽のカラスがじっと見ていた。

 赤い宝石のような目をしたその鳥は、しばらくして木から飛び去った。





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