11話:路地裏の邂逅

件のエロい姉ちゃんことルシャールの乙女の一人、リナーシャはオスタルとミカルナに聞き込み調査を任せ、アルク=エプの街を散策していた。

オスタル曰く二人組の盗賊ヴィブルとラプームが隠れ家にしている路地裏に、ターゲットである神格がいるらしい。昨夜ミカルナが到着した後、オスタルは気配が増えたと呟いた。しかも増えた気配はターゲットの神格より上、あまり相手にしたくないクラスのものだとオスタルは補足した。オスタルにしては珍しい発言に、リナーシャとミカルナはハッキリと懸念を示した。

次の日の朝、ルシャールの乙女三人は街での聞き込みをすることにした。主に盗賊と路地裏の怪物についてだ。あの盗賊たちが捕まらないのは、一言で言ってしまえば路地裏に逃げ込むからだ。

路地裏には怪物がいる。それはアルク=エプの街では誰もが知ってることであり、その真偽はオスタルが見た宝石商の末路が物語っている。

だからこそ情報が欲しい。二の轍を踏む気は更々ない。とは言えリナーシャ自身が、聞き込みに向いているかといえば否である。初日から民間人を脅したリナーシャの印象が、最悪なのは誰の目から見ても明らかだった。

そこでリナーシャは人通りの少ない通りに入ると、隙きを見て跳躍。体幹のしっかりしているリナーシャは家の屋根に衝撃を殺し、静かに着地する。そして静かに路地裏に降りていった。路地裏は屋根の軒先によって日が遮られ、薄暗くひんやりした空気を漂わせてた。

「ちょっと暗すぎないかなぁ……」

頭をポリポリ掻きながらぼやくリナーシャ。ここは路地裏の筈だが、3m以上先が真っ暗で何も見えない。これは何かいるな、と明らかに人為的な───人の仕業かどうかは置いといて───作為を感じられた。それから数歩進んだところで、リナーシャは意外な人物と出会った。いや恐らくリナーシャの侵入に気づいて、待ち構えていたに違いない。

「これはこれはまた肉付きの良いお嬢さんだ」

ラプームだ。しかしリナーシャが見たときとは異なり、青い眼を爛々と輝かせていた。足元から上半身にかけてリナーシャを舐め回す様に、ねとつく視線を向けてきたラプームは舌なめずりをする。リナーシャは大男アランとの戦いを思い出し、立ち回りを考える。こうも早く接敵することになるとは。誤算であった。リナーシャは自身の見通しの悪さに苛立ちを覚えた。

闇が二人を囲むように空を覆った。瞬間リナーシャは視界を完全に奪われ、ラプームの姿を見失う。

「───まずッ」

この路地裏はラプームのテリトリーであり、巨大なサイスを振るうリナーシャにとって最悪の地形だった。

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