第66話 壁ドン
最近流行りのやつあるじゃん。壁ドンっての。
あれ、すっごく憧れるっていう女子多いけどさ、結局ああいうのはイケメンに限るっていう条件が大前提だよな。
一切モテない男なんてアウトオブ眼中。寧ろそれやると全力で嫌がられるのが現実って所。
だからああいうのは、期待させるだけバカじゃねーのって思っちまう。
漫画とかドラマとかで入れときゃ良いだろ的に使われると、逆にイラッとするレベルだから、そういうの始まったら「あー、ハイハイ。またですか」って見るの止めちまうくらい理解出来ねぇ。
こう言うこというとさぁ、妬みだの僻みだの言われるけど、別にそれで良いよ。俺が壁ドンが嫌いだって事には変わらないから。
大体さぁ、怖くね?
いきなり壁際に追い詰められて至近距離で見られるんだぜ?
期待よりも恐怖の方が先にくるっつーの。
それがさ、まだ知り合いだったら良いよ? 見ず知らずの人にやられたりしたらマジびびる。ほんっとホラー。冗談笑えねえって。
それは考え過ぎとか、言いたいことは分かるよ。でも、万が一、そう言う状況になったとしても可能性的には有るわけだろ?
ああ、恐ろしい。
彼女が居ないお前が何を言うって思ってんだろ? 分かるよ。言いたいことは。本当はお前もそういうのに憧れてるんだろって、そう言いたいんだよな?
でも残念。
マジで俺はそう言うのはゴメン。無理だわ。相手にするなんて無理無理。考えらんねぇよ。
ん? 実際彼女が出来たらやるかもしれないだろうって?
あー。それも無い無い。バカみてぇじゃん。やって楽しいのは当人達だけで、傍から見てたら何やってんだって思うだろ? 俺が誰かにやってるとこ全然想像出来ねぇから。どんなに可愛い彼女が出来てもやんねーよ。そう言うの柄じゃねぇし。
負け惜しみ乙? 何とでも言え。ってか、さっきからマジしつこいんだけど! 俺がこの手の話題スキじゃねぇって分かってて振ってねぇか? お前。
は? じゃあ、おっぱいがでかくてすげぇ美人の姉ちゃんに壁ドンされたらどうかって?
…………それは………やっぱねぇわ。無い無い。
うっ、うるせぇ!! 別に、ちょっと有るかなとか考えたりしてねぇよ!
いーや! 思って無い! 全然考えてないですー! 思ってませんー!!
そ、そりゃあ美人なねぇちゃんに迫られるとか嬉しいかもしんねぇけどよ! でも、やっぱ何かこえぇよ! どうして良いかわかんねぇし! そう言うときって!
…………。
ってかさ。何で唐突に壁ドンの話何てしてるわけ?
お前さ、今までそんなこと興味もなかったよな?
…………もしかして、お前、好きなやつとかいんの? で、ソイツにやってみたいって思ったりしてんのかよ?
……何も答えないってことはマジで図星?
嘘だろ? マジかよ!! で、誰? 俺の知ってるやつ?? すっげぇ気になるんだけど!
何だよぉ、お前も隅には置けねぇな! 奥手だから恋愛なんて興味ねぇかと思ってたのに、そうかそうか。
……って……ん?
……え?
……いや…………あ…………。
……うん。分かってるよ。……頼むから、それ以上は言うな。
ところで……さ。一つ聞きたい事があんだけど、聞いても良いか?
さっきから、目の前に何か居るんだけど、ソイツが全然離れてくれねぇんだけどよ。
俺、一体……
何に壁ドンされてるんだろうな?
教えてクレよ。頼む。
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