リミットゲーム

朝陽の雫

タイムオーバー

 諦めた。


 みんなの幸せを。


  諦める。


  それは悪い事?


  考え方が大事だと思う。幸せになる事そのものを諦めたわけじゃない。 今まで目指してた方法がダメなら、やり方を変えて幸せになればいいというだけ。


 やっと気づいた。 本当にダメなのは何もしなくなる事、進まなくなる事。そうなったら終わり。 危うく目の前の大切な人を失う所だった。


  しかしもう、妻は離さない。何があっても。 改めて誓おう。


 理央りおずっと一緒だ。 


 全てを諦めたあの日から、理央とはさらに仲良くなった気がする。


「あー疲れた」


 仕事から帰宅したその時だった。扉を開けたらいつものように理央が出迎えてくれた。


 しかし、普段と様子は少し違っていた。


「お帰り、めぐる」


「ただいっ…ま……ちょ、何だよその格好」


 控えめな理央は清楚で物静かなタイプだが、家で2人の時だけ見せてくれるお茶目な部分がある。


 そして今、理央は普段の控えめな部分をどこかに控えてきたらしい。


 玄関まで何も纏わずエプロン1枚の状態で迎えに来ていたからだ。


 疲れているとはいえ、刺激的な主張に思わず体が熱くなる。


「ねぇ、めぐる」


 目がとろんとしている。顔も少し赤くなってるように見える。


「何だよ理央、まだ俺帰ってきたばっかりだよ」


 すると理央が思わぬ問いかけをしてきた。


「お風呂でする?」


「え?」


  一文字違くない?


「ベッドでする?」


 もう、ご飯の選択はないんだね。


「いや、だから……帰ってきたばっ」


「それとも……ここでする?」


 話を遮った理央は返答を待たずに唇を重ねて舌を絡めてきた。


「ちゅ……っ……んっ……」


  濃密に舌を絡ませた後、俺のシャツのボタンを取り上半身を裸にする。そのまま俺を押し倒すと今度は露になった乳首をよだれをたっぷり含ませ味わっている。


「ちゅっ……んっ……ん……」


  反対側の乳首も涎で湿らせた指先で妖しく淫らに刺激をくわえられる。


「理央、それ気持ちいい……」


  さっきまでその気じゃなかったが理央の行為に俺の体は敏感に反応していた。下半身は膨らみを作り興奮を理央に知らせる。それを見て理央は意地悪に笑う。


「すっごい元気だよ。本当に疲れてたの?」


「うるさいな。理央のせいだよ」


「私もう、我慢できなくなっちゃった」


  俺のズボンを脱がして解放すると硬くなったそれの上に理央は跨って挿入した。


「あぁぁん。気持ち……ぃ……っ……」


  快感を貪るように激しく腰を打ち付ける。甘くて熱い吐息を漏らし気持ちよさそうに行為に浸っている。


 普段のおとなしい性格からは想像できない程乱れている。


「理央、ダメ……あんまり激しくするとすぐいっちゃう……」


「いいよ……出して……」


  理央は俺を導くように腰をくねらせ打ち付けながら、両手で俺の乳首をもてあそぶ。


「いきそ……あっ……ん……」


「はぁ……はぁ……」


  果てて脱力感に襲われると、理央も力が抜けたのか覆いかぶさってきてキスを求めた。


 そして俺は目の前の愛しい存在をぎゅっと抱きしめた。


 その後、風呂に入りご飯を食べた。


「帰ってきていきなりって、初めてだよね。びっくりしたよ」


「ごめんね、つい。何か今日は我慢できなくなっちゃって」


「たまにはいいんじゃない?」


  恥じらう仕草も可愛かった。さっきまでの乱れた理央が別人のように思える。 話しているとスマホから音が鳴った。チャットアプリに通知が来たようだ。


【政府の意識調査】

【必ず回答して下さい】

    ■開始■


「何だこれ、意識調査? 理央にも来た?」


  簡単なものだろうと思った。さっさと済ませようと軽い気持ちでタップした時、電源が切れたように目の前が真っ暗になった。


  問いかけた後、振り向いた理央の表情が最後に見た光景だった。

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