桜高校の生徒会が色んな意味でヤバすぎる件について

第一章 彼らの日常

1、毎朝の恒例


―――


 よく晴れた日の朝の事だった。



「キャーーーーー!!」

 静かな朝の校庭に、女子の黄色い悲鳴があがる。

 近くにいた男子たちもいつもの事なので特に気にせず、むしろ立ち止まって女子たちの視線の先を追った。



 ここは、この地域では知らない人がいない程有名な、桜高校である。


 有名な、というのは特別頭が良いとか、校則が厳しいという事ではない。

 制服が可愛いとか、芸能人が通っているというのでもない。


 いや、ある意味芸能人というのもあながち間違いではないかも知れない。



 ――そう、この高校には有名な五人の生徒がいる。


 五人はこの学校の生徒会のメンバーであり、容姿端麗、才色兼備、成績優秀、文武両道……

 つまるところ、完璧な五人が揃っているのだ。



「キャ~~!今日も格好良いわぁ~会長さん……」

「副会長さんも素敵ねぇ~♪朝から見れてラッキー!今日の占い、一位だったかいがあったわ。」


 女子たち(もちろん男子たちも)の視線の先には、その五人の姿があった。


 青色のネクタイをした二人を先頭に、同じく青色のネクタイをした一人と、緑色のネクタイをした二人が少し遅れて歩いている。


 その圧倒的なオーラに、その場にいた全員がほぅっ……と見とれた。


 そんな生徒たちを尻目に、五人は真っ直ぐ昇降口へと足を進めていった。



「啓吾くん、毎朝思うんだけどこの人だかり、スゴいよね~」

「そうだね。って聡、他人事のように言うね。」

「え、だって他人事じゃん。あの二人に対しての人だかりじゃないの?」

「まぁ、ほとんどはそうだけどさ。」

「でも僕たちの事も見てるよ。ほら。」


 一番体の大きい生徒が聡と呼ばれた生徒に向かって人だかりを指差す。

 途端、人だかりの中から悲鳴があがった。


「へぇ~」

「へぇ~、じゃないよ、さとちゃん!僕たちだって捨てたもんじゃないって事だよ。まぁ、でも優斗くんと翔くんには負けるけど。」


 先を歩いている二人の背中を見ると、ため息混じりにそう言った。




―――


 ここで、人物紹介をしておこう。


 今ため息をついたのが、服部はっとりまこと。1年B組。生徒会の雑用係である。


 体は柔道部の期待のエースだけあって誰よりも大きいが、五人の中では一番年下。

 その特権を生かして、いつも四人に甘えている。


 先程聡と呼ばれた少年は、日下部くさかべさとし。慎と同じ1年B組。

 慎より半年程誕生日が早いので、ちょっとだけお兄さん気分。

 でもいつもいじられている。生徒会の癒し系。


 啓吾と呼ばれた少年は、瀬尾せお啓吾けいご。2年C組。

 その穏やかな外見と、たまに出る面白さのギャップが人気である。


 生徒会の中では、中間管理職のような立ち位置。


 先頭を歩いている一人で、翔くんと呼ばれたのは、羽村はむらしょう。2年A組。生徒会副会長。


 端正な顔と程よく筋肉がついたスラッとした体で、世の女子を虜にしている。でも基本、女子には興味がない。といってそっち系という訳でもないが。


 そして最後の一人が、桜高校生徒会会長、今居いまい優斗ゆうと。翔と同じ2年A組。


 その整った顔と、いつもニコニコして明るい性格で男女共に人気がある。

 リーダーシップを遺憾なく発揮し、先輩や教師からも信頼が厚い。




―――


 さて、長々と説明したが、そろそろ本編へと戻る事にしよう。



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