第24話 ドラゴン・ドラッグ・ガントレット
「DDG、ディスチャージ!」
リューリが叫ぶと、ガントレットの三つの突起のうち、一番奥の突起が沈んだ。
横穴からスチームが噴出し、その中で何かの液体がリューリの腕に注入されている。
それは、ドラゴンの里で入手した灰と、八種類の霊草を合成して作られた秘薬。
魔力促進と、鼓動を安定させる効果がある。
効果時間は短いが、その間はアシェッタから大量に魔力を引き出しても暴走せず、アシェッタへの負担も抑えられる。
「初っ端から全開で行くぞ——————火風混剛、ドラゴニックインパクト!」
風と火を操り、ジェット噴射させる。加速したリューリの拳は、重い音と共にザラギアを撃ち抜いた。
ザラギアはそのまま地面へと叩き付けられる。
地面に羽毛が散乱していても、クレーターができる程の勢いだと意味が無い様だ。
「ぐっ、うぅ……」
地に伏したザラギアは、苦しげに顔を上げる。
彼女が目にしたのは、攻撃後も残っているジェット噴射で急接近するリューリの鬼の様な形相だった。
「チッ、こんなの審判は回帰せりで——————」
すぐさま体制を立て直し、天使魔法を発動しようとするザラギア。
しかし、
「ドラゴンブレス!」
頭上から火炎が放たれた。
ドラゴンのブレスは魔法的強化があり、鉄をも溶かす高熱。天使だろうと、当たればひとたまりもない。
「ギャアアアアアアアアアア!!!」
リューリの気迫に目を奪われていたザラギアは、それに一切対応出来なかった。
白く美しい天使の翼の先が、黒く焼け焦げる。
「消し飛べえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
アシェッタのドラゴンブレスをモロに喰らってよろけるザラギアに、リューリの容赦無い追撃が迫る。
(こっ、コイツら……連続攻撃でアタシに魔法を発動する隙を与えない気か!)
敵の策に気付くが、もう遅い。
目の前にはリューリの拳、天にはアシェッタのブレス。
ザラギアは完全に挟まれていた。
(ありえねぇ……下等生物と神話より遥かに劣化したドラゴン如きにこのアタシが……)
ガシャンと、鉄が砕け散る様な音がコロッセオに響いた。
それは、リューリの拳——————
「やりやがったな……カス共……」
額から血を流し、よろめきながらも膝を付かないザラギア。
リューリがバックステップでパンチの助走距離を稼ぎつつ、アシェッタのブレスがさらにザラギアを追い詰める。
(このまま行けば、勝てる——————っ!)
アシェッタが、リューリが、ドラッグが。
誰もがそう思った。
確信はあっても油断は無い。アシェッタのブレスが止まる数コンマ前にリューリがまたパンチを放ち、ザラギアが攻撃を喰らっていないタイミング———隙を一切作らない作戦はこのまま実行する。
リューリがタイミングを見計らい、パンチを放った。
コロッセオに散乱する羽毛をジェット噴射の余波で撒き散らしながら、怨敵ザラギアに迫る。
その時、リューリの目の前に、白い羽毛に包まれた二メートル程の瓦礫が落下した。
何たる不運か。
それでも、リューリの拳は瓦礫を打ち砕いた。
いや、打ち砕きはしたが—————————
「おいおい、何だよそのヘボパンチ」
拳を頬に受けながら、ザラギアは笑う。嗤う。
リューリの拳は、瓦礫を砕いた時点でかなりのパワーを消耗し、ザラギアに届く頃には本来の三割の威力しか残っていなかったのだ。
隙が、出来てしまった。
「おいおい、アタシ今めっちゃ自由だよ。いや、最高の気分だ。三十秒振りの自由。こりゃ、早口言葉みてーにせかせかと詠唱する必要すら無さそうだなぁ!」
「余裕ぶっこいてんじゃねーぞ!」
リューリが手甲の無い左腕でパンチを繰り出すが、ザラギアは避けもせず、邪悪な笑みを浮かべ続けていた。
「いや、余裕なんだよッ!」
そして繰り出されるザラギアの蹴り。
型なんてあったもんじゃ無いのに、単純な威力だけでリューリは崩れかけのコロッセオの壁まで吹き飛んだ。
「それじゃ、邪魔も無くなった事だし、噛まない様にゆ〜っくり詠唱するかね。」
「ザラギアーーーっ!」
「普通当たんねーんだよ、そんなブレス」
再び放たれたアシェッタのブレスを軽快なステップで躱したザラギアは、大きく息を吸い、いやらしい笑みを浮かべ、リューリ達への当てつけの様にゆったりと詠唱した。
「我命ず〜神の使者の権限以て、荒ぶる力を沈めたまえ〜!」
ザラギアの右腕が、眩い光を放つ。
「天使魔法、
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