魔法学園最低ランクの俺がガチで全勝してる理由

ばらん

season1 最低ランクと最強少女

第1話 学園最強と学園最弱と炎の再会

 魔法学園エンドランド。ここは王国きっての魔法学園である。

 超実力主義を謳い、実力の劣る者は徹底的に虐げられていた。

 そして俺は学園の最低ランク、Fランカー。人呼んで最底辺のリューリ。


 そんな俺は、Sランクの天才美少女、アシェッタから呼び出しを喰らう。

 身に覚えが無いSランカーからの呼び出しに、俺は死を覚悟した。


 学園第一校舎の屋上。強い風が吹くこの場所が、待ち合わせの場所だ。

 太陽が西の空に沈み始めた頃、金のツインテールと豊満なバストを揺らしながら、彼女はやって来た。


 「リューリ、好き!」


 「え……?」


 なんと、彼女はいきなり抱き付いて来た!


 (うおっ……色んな所が当たっているっ)


 「まっ、待ってくれよ、どうしていきなりそんな……」


 困惑の表情を浮かべる俺を見上げた彼女は、少し悲しそうな顔をして頬を掻いた。


 「えへへ、ごめんごめん。いきなりこんな事言われても迷惑だよね。」


 名残惜しそうにしながらも、彼女は俺から離れた。

 そんな彼女の姿を見ていると、何故だか心が締め付けられる。

 俺は手を伸ばした。


 「いや、待ってくれ。お前を拒絶したとかじゃないんだ……」


 「え?」


 「ただ、全てがいきなり過ぎて、何も分からねぇ……だから、説明してくれよ」


 彼女と、目が合った。

 サファイアの様な彼女の瞳が揺れる。視線を外したら負けな気がして、じっと見つめる。

 やがて、彼女は根負けした様に視線を逸らし、「うん、分かった」と受け入れた。




 Sランク女子寮。

 寮とは名ばかりで、Sランクの生徒には一軒家が与えられている。

 何と言うかこう……全体的に白くて高そうな内装だ。


 「しかし、どうしていきなり女子の家に……」

 「説明してあげるって。ささっ、どうぞ座って〜」


 促されるままに、ソファに腰掛ける。

 柔らかい。抱きつかれた時のあの感触に比べればまだまだだが……


 「って、何考えてんだ俺は!」


 「? どうかした?」


 「なっ、何でもない……」


 コトっ。

 ティーカップがテーブルに二つ置かれた。

 そして、アシェッタは俺の隣に寄り添う様に座る。


 「なんか近くないか?」

 「いーの、私とリューリの仲なんだから」


 「まず、どういう仲なのか説明してくれよ……」

 「っと、そうだねぇ〜」


 アシェッタは少し考える様な仕草をすると、何か思い付いた様に手を叩いた。


 「見てもらった方が早いかな」

 「? 何を?」


 リューリが聞くや否や、アシェッタは突然脱ぎだした。


 「うおっ! いきなりどうした!?」


 咄嗟に手で顔を覆ったが、胸とか見えちゃったじゃねーか。

 ありがとうございます。


 「ほら、見て見て〜」


 嘘だろ……

 でもまぁ、本人から許可が出てるし、犯罪にはならねぇよな……?

 リューリは指の隙間からアシェッタの姿を覗いた。


 白く美しいがちゃんと血の通いを感じる健康的な肌、たわわな双丘、ムチムチな足、深い深緑を思わせる鱗を纏った尻尾……

 尻尾!?

 その尻尾をよく見ると、古い傷があった。

 それは、リューリにとってはとても思い出深い……


 「お前まさか、あの時の!?」

 「そうだよリューリ、久しぶり!」


 俺が気付くと、彼女はぱあっと表情を明るくした。


 「やっと……会えたね……」


 アシェッタは、あの時のドラゴンだったのか……


 リューリは幼少期、山で遭難し、死にかけた事があった。

 遭難、それだけでも大変なのに、雨まで降ってきた。

 空腹や疲れで力を失っていく小さな身体。

 彼の消えかけの命の炎を、冷たい雨がさらに追い詰めていく。

 もう何時間彷徨っただろうか、最早手足の感覚が無い。

 その時、リューリの目に止まったのは、ケガをしたドラゴンだった。

 ドラゴンもまた、リューリと同じく力を失い、冷たい雨に追い詰められている。

 あのドラゴンは、俺と違って這いずり回る力すら残っていないらしい。

 喰らって飢えを凌いでしまおう。

 リューリはそう思って近付き、ドラゴンを拾い上げた。

 ずっしりとした重みと、鱗のザラついた感触。そして—————その命は、暖かかった。

 自分より弱っている命、冷たくて然るべき命。だが、それが何故だか暖かい。

 それに触れていると、不思議と自分の手足に熱が戻っていく様に感じた。

 リューリは、その命を抱きしめた。


 「俺の炎をお前にやる、だからお前もお前の炎を寄越せ……」


 ドラゴンが、リューリに身体を寄せる。

 リューリは服を脱ぎ、ドラゴンと抱き合う。

 雨は未だ、俺達の命を蝕む。

 それでも、二人は必死で身体を寄せ合い、励まし合った。

 どれほどそうしていたのだろう……

 二つの炎は、冷たい雨の終わり、その先の先まで、絶える事は無かった。




 「お前、俺が山から脱出した後も、ちゃんと生きていてくれたんだな……」


 気付けば、リューリはアシェッタを抱きしめていた。

 熱い、熱い熱を瞳から零しながらも、それより熱い抱擁を交わす。


 「ありがとう……ありがとう……」

 「うん、これからはずっと一緒だよ……」


 こうして、物語が始まる。

 人とドラゴン。ドラゴンと人。

 否。

 炎と炎の物語が—————————

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