第17話 今宵の戦を前にして

僕が勇者のパーティの仲間たちから後を託され、4年と364日が過ぎた。

今夜、いよいよ魔王は復活する。

この日は当然、朝から障壁の最終確認と、この日のために訓練を重ねた騎士団や魔術学校生、それからノース様、シルク様の家から集まった家臣団の方々が、動きの最終確認をする。

そして、そんな僕たちのもとに、ソフィアさんとルビエラさんがやってきた。

「対魔王用障壁の闇を結界で防ぎつつ、月光の結界の詠唱装置で中の人間を守るという対魔王障壁の用意は問題ないか?」

「ああ、後はこれだ。戦いが終わった後にでもお前のお姫様にでも渡してやんな。こんなでかいことした後には、必要になるだろう?」

ルビエラさんが手渡したのは、二つの指輪だった。

「ありがとうございます。きっと、ものにして見せます。」

そして、そんな僕達の前に、地響きと共に現れたものは、4年前の展望台をそのまま持ってきたかのような巨大な塔だった。

「ダン君、イアナの代わりといえば、このくらいのデカブツじゃないと務まらないと思って、皆で作ってきたぜ!そら!」

へレポリス。

古代の戦争において作られた、常軌を逸した攻城兵器。

こんな物体に踏みつぶされてしまえば、さしもの魔王もただではすむまい。


僕達の決戦計画はこうだ。

魔王の復活を確認次第、大穴を魔力障壁で塞ぎその上をへレポリスで突撃。

魔王をそのまま轢きつつ障壁の間に用意したへレポリス止めのくぼみに収める。

その後、障壁の向こうから障壁越しに勇者の魔法を魔術学校生や有志魔道士からなる部隊で一斉に叩き込み、魔王を一気に疲弊、戦闘継続困難な状況に追い落とす。

最後に勇者の武具を王国騎士団と家臣団による包囲殲滅で魔王を仕留める。


そして、もし魔王の魔力をこの指輪に吸わせることが出来たら……

いや、これは僕のわがままにすぎないだろう。


間もなく、最後の戦いが始まる。

エルグランド様。貴方こそが勇者でした。貴方の背は大きく、貴方の手はいつも暖かかった。お姉さんのところに帰ってきてください。

イアナ様。貴方の勇気、正義感は今も故郷の皆に伝わっています。それに何より、最愛の吸血鬼があなたの帰りを待っています。

ノース様。貴方の知恵とやさしさのお陰で、僕たちは悲しみから立ち上がることが出来ました。貴方の恩師と親友は、貴方への愛をまだ忘れていません。


そして、ドロテア。

僕達のこの戦いも、今この決戦にこれほどの人がいるのも、君の研究のお陰。

そして僕が勇者の一人としてここまでこれたのも、君にあこがれたから。

今、僕の心に希望と勇気が尽きないのも君のお陰。

僕は今も、君のことを夢に見ない日はない。


だから、見守っていてください。

どうか、僕達に勝利を。

沈む夕日を眺めつつ、僕はただ祈る。

さあ、魔王は蘇る。

今度こそ魔王を屠り、すべて終わらせる時だ。


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