機械バカ親父

シヨゥ

第1話

「いろいろと大変だけど、まあどうにか生きている」

 画面越しの親父は疲れた顔で微笑む。

「どうにかって」

 そのやつれぶりが極端で体が心配だ。

「場所が場所だけに電気と通信機材は潤沢なんだが、食糧と水がな」

「それってヤバいんじゃ」

「まあ志願して行く場所なんて大抵ヤバい場所だ。それはここも同じだ。それでもここには夢が眠っている。ここは機械バカにとって宝島だ」

 親父そう言い切ると映像にノイズがのる。

「帯域の維持をしっかりせんか!」

 親父が叫ぶ。

「すまんな。また奪われかけているみたいだ」

「いいって。そろそろ戻らないとだろ?」

「そうなんだ。若い者に任せっきりにもできんからな」

 またノイズがのった。

「機械になんか負けるなよ」

「応よ!」

 その返事とともに画面に表示される『No Signal』の文字。

 親父は暴走した機械が支配する島で戦っている。戦闘員と非戦闘医の区別なく続く血みどろの戦いに好き好んで参戦した親父。きっと頭のネジが何本も抜けている。

 きっと今も機械をばらして暴走の原因追求に明け暮れていることだろう。それを止める術はない。せいぜい生きている内に飽きることを願うくらいか。

「生きて帰ってこいよ」

 そんな届かない言葉をモニターに投げかける。それしか出来ないのが歯がゆく感じるのだった。

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機械バカ親父 シヨゥ @Shiyoxu

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