eat me.
KaoLi
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最近、他出版社の記者たちが謎の不審死を遂げている。
事件は、一か月前に
とある記者が何もない閑静な住宅地の道路上で不自然な死に方をした。
不自然な死に方、それは死んだ記者がクリームを口の端に付けて死んでいたというもの。
警察はこれを、殺人事件と事故の両方の可能性から捜査を開始した。
検視の結果、死因と思われるクリームの成分からは毒物や他の原因となり得るものは何も見つからなかった。
それは、事故と判断させるには十分な証拠であり、事件と判断させるには不十分な証拠であったことが認められた。
さらに被害者は高血圧症の持ち主で、どういうきっかけがあったのか定かではないが発作が起きたことによる死だろうと判断されたのだ。そうしてこの事件は、病死として処理されたのである。
数日して、この不自然な『事故』は『事件』に変わる。
二人目の犠牲者が出た。
その犠牲者もまた記者で、口元にはクリームを付けていた。一人目の犠牲者とほぼ同じ状態でこちらも閑静な住宅地で死亡していたのである。彼も一人目同様、死因は高血圧症の持ち主であり発作を起こしたことによる病死だった。
ここで分かったことがある。
一人目の犠牲者は、この業界でもトップを走るほどの実力を持つ出版社『キャロル紙』の記者。そして二人目の犠牲者はその次に力を持つ『ドードー紙』の記者であった。
警察はこれらの捜査情報から同一犯として犯人のプロファイリングを行い捜査を進めていった。同時に、警察の情報公開を皮切りに、各出版社たちも警察の犯人像からネタを掴み求めていくこととなった。
ある記者がネタを掴んだ。
犠牲者たちの死ぬ前の動向、そして共通点についてである。
彼らに共通しているのは、彼らは死ぬ直前に必ず『アリス・リデル』なる人物に会っていたこと。そしてその『アリス・リデル』なる人物とお茶会をし、どういう
その『アリス・リデル』なる人物に会った者は死に至っているため謎に包まれているが、犠牲となった記者のもとには必ず、死ぬ直前に一通の手紙が届いていたという。そこには彼(とここでは紹介しよう)の経営する店と、彼自身が取材に応じる旨が『ある条件』とともに記述されていたそうだ。
「取材に応じる条件として、こちらから要望したいことがある」
「弊店はしがないケーキ屋で、客足が少なく大変困っている」
「そこで、弊店の試作品を取材してほしい」
「
「代わりと言ってはなんだけれど、私の身の上話を聞いてほしい」
「その話も、勿論記事にしてもらっても構わない」
なんとも、不思議な条件である。
あくる日。
ある男のもとに『アリス・リデル』なる人物から、例の手紙が男の働く出版社『マーチラビット紙』に届いた。
内容は他の殺害された二人の記者たちと同じ、条件付きの取材可能通知。
記者であるその男は、この『アリス・リデル』なる人物に会い真実を確かめるべく、早速彼からの手紙に記載されている、彼の経営するケーキ屋の住所へと
男はまだ知らない。
『アリス・リデル』なる人物が、どういった人間なのかを。
『アリス・リデル』の術中に、その足を踏み入れていくことになるとも知らずに。
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