異能使いと転生者

アルましろ

平凡乖離編

第1話:プロローグ改…

超常となったあの日から百年が経った。


昔ほどでは無いが、現代でも人を駆逐せんと襲いかかる魔物に人々は今も不安と恐怖に駆られている。それは仕方のない事だ。鍛えられた軍人でも、重火器を持った人でも……魔物には勝てないのだから。


それでも希望を捨てなかった。重火器がダメならもっと強力な兵器を。それもダメならさらに強力な兵器…核兵器を。しかし、それだけやっても、どれだけ強力な兵器を用いても…魔物には傷すら付かなかった。それによってより一層死者が増えた。


だが、ここで人類史は終わらなかった。突如として使えるようになった超常の能力は今まで傷すら付かなかった魔物にダメージを与えた。この事実に世界各国は希望を見いだし、とある組織を作った。


国際魔物対策連合。魔物に対抗するために結成した組織のおかげで魔物の侵攻を抑えたり、都市を奪還したり、国を奪還したりと現代まで長きに渡って偉業を叩き出した。

だが、それでも…まだ四割は人が住めない場所が存在する。


誰かが言った。────アイツらは生きる災害にして、動く厄災。


そいつらを殺すには異能を持つ存在が異能を使うこと。それが唯一の対象法だと。


…それでも、やはり届かない。完全な勝利には程遠い。


何故なら、魔物はどこからともなく現れ…無限に生まれてくるのだから。





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それはいつものようなな日曜日。何処にでもあるような、二階建てのとある一軒家の一室にソイツ───如月蒼真は居た。


「ふぁぁ〜…」


ベッドから起き上がった俺は目に涙を貯めながら眠気と共に出てきた欠伸。否応がなしに眠いぞと訴えてくるコイツを理性で押しとどめると、青年は自然な動作でチラリとドアの方向に目を向け、またかと心の中でツッコんだ。


そこには何の変哲もない、木製のドア。…なのだが俺は、はぁ…とため息を吐き、呆れ口調で言い放った。


「……で?何してんの?そこで」


虚空へと向けた言葉に返事はない。


そりゃそうだ、俺以外は居ないはずだから。だが、俺が見つめ続けてると、不意に視線の先が揺らいだ。


「……」


ため息をぐっと堪えてベッドから降りるとドアの数歩前に立ち止まり、揺らいだ先に手を置く。


「…っ」


ビクンっと何かが震え、声のようなものが耳に入る。そして、やっと観念したのか徐々に空間から何かが抜け落ちる様に姿を現す───。


「──今度は何をやるつもりで?」


目の前に現れた一人の少女に向けてこれでもかと優しい笑顔を向けた。


「…あはは…お兄ちゃんを起こそうと思ってたら思いのほかぐっすりだったから、ちょっと…ね?起きた時気づくかなぁ〜って」


俺の笑顔に一瞬やべっと思ったのか上目遣いをしつつ、悪巧みがバレた子供のような無邪気な笑みと共に返ってきた言葉に案の定かよって心の中でため息を吐いた。


この前も同じような手を使い、俺の事を図ろうとしたからお仕置きしたのに…未だにやり続けるとはなんとも罪深き存在だ。寝込みを襲うわ(襲撃的な意味)、イタズラするわのタチの悪い常習犯め…!


目の前にいる自分よりも小さな少女に呪詛を吐きたくなったよ全く。

如月 優奈。金髪に碧眼という何処か外国人みたいな容姿をしているが、純粋な日本人であり、能力者としての一面を持つ俺の大事な妹だ。


しかしだ。いくら大事とは言えだ。思春期の女の子が兄とは言え男の部屋に勝手に入ってくるのはいかがなものか。…よし、ここは教えておかないと。


頭から手を離し、我が妹の目を真っ直ぐ見据える。一瞬残念そうな声が聞こえだけど無視しよう。


「ゆな」

「な〜に?」

「……いや、何でもない」


首をこてんと傾げる姿に思わず胸をやられ、喉元まで出てきていた言葉が一瞬で消えた。

これは仲の良い兄妹の軽いスキンシップ、そうだよ。別に咎めなくていいじゃないか。うん、そうしよう。


……と、最早手の付けようがないほど妹に甘々だった。


「そだ。お兄ちゃんお兄ちゃん」

「ん?なんだ?」


俺の真横に来たゆなは少し背伸びして俺の耳元に顔を近づけ、


「フッ!」

「っ!?」


思いっきり俺の耳に息を吹き掛けてきやがった。あまりの出来事に咄嗟にゆなから三歩程の距離を置いて被害にあった右耳を両手で押えた。


「あははは!!」


それを見て笑っている妹。


「……」


その笑っている妹を見てコイツ分からせるぞ…と思うも、笑っている姿を見て可愛いから許すか。と思っている兄。


「あ、そだそだ。お兄ちゃんお兄ちゃん」


腹を抱えて笑っていたゆなが目に溜まった涙を拭き、何かを思い出したのか俺の方へと歩き俺の肩をツンツンと突く。


だがしかし、この後にどんなことが起きようと冷静で居ようと最大の警戒をしつつ、前科のあるこいつに今度は何をするつもりだの意味を込めて訊ねた。


「……どうした?」

「そろそろご飯できるから降りてきてって」


は?


どゆこと?……は?


「……ちなみにそれいつの話かな?」

「1時間前」


警戒は無駄に終わった。首を傾げ、一瞬考えた後に聞こえてきた言葉に疑問が生じて口にしたは良いが、返ってきた言葉に理解するのに時間が経ってしまった。


この兄にしてこの妹ありとはまさにこの事。時間にルーズというか、数時間前所か数秒前の事すらも忘れて目先のことに目が行くのは俺譲りだろう。


ダメな所が似てしまってお兄ちゃん不甲斐ないよ。


……などと言うとる場合か。


「早く行くぞ!!」


事態は思った以上に深刻だ。これはもう覚悟を決めねばなるまい……!!


「あ!お兄ちゃん!?」


妹の驚く声を無視し、右手で柔らかい手を引きながら1階へと駆けた。



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結果から言うと、飯が終わってました。


俺の慌て具合からして何かあると思っているだろうが…正解である。実は我が家のルールとして、朝食は7時に取り、遅れた者は朝食抜き。…と言う何とも言えないが厳しい掟があるのだ。


決して世間様に公言出来ないようなやべーことは何一つされてない。ただ、朝食を抜きにされて二人して何してんの?と説教されただけである。断じてそれに反論してたんこぶ作ったわけじゃないからな!


ち、違うからな!?ゆなが可哀想に思ったからちょっとお言葉を返しただけであって、決して生意気にも反抗期とかイラッとしたからあのオバ…………あ。




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ちょっとしたアクシデントがあったが、ポストの中身を探ろうと家の玄関を開け、郵便ポストの中を覗き数枚の紙を取り出す。


塾の紙やらどっかの店のチラシやらが目に入る中、一つの手紙に目が入った。


名古屋異能学園。


これは人類に突如として発現した異能と呼ばれる超常の力を持つ者だけが入る事が出来る学園のパンフレットだった 。


現在では能力者と呼ばれる人達が扱う異能という力を理解させ、魔物と対抗できるように育てるのが、この異能学園。


今から40年ほど前に設立された国立の教育機関で、国際魔物対策連合が定めた「未来ある能力者を育み、心身共に成長させ、人類のシンボルたる人材を育成させる」を掲げているのがこの学園。


要は、魔物から人類を守り、平和の象徴として対魔物用の兵器になれってことだ。


ちなみに異能の具体的な例を挙げると先程ゆなが使ったあの透明化の力が異能だ。様々な異能が存在し、時に回復させたり、時に攻撃したり…あるいは補助したりと。無限の可能性を秘めているのだ。


ゆなの異能、透明化も例に漏れず可能性の塊だ。一見して、世の男共が喜ぶような異能だが、正にその通りなんだよ。ゆなが特殊な嗜好してなくて良かったと心から思う。悪戯はされるが。


さてと、そろそろ問題に向き合わなければいけないな。右手に持つこの、異能学園のパンフレット…という名の入れと言わんばかりの文字列がズラズラと……。


"ここに入れば、君の異能は更に強くなるよ!"

"人々を守るヒーローに君もなろう!待ってるよ!"


…はっ。紙はまだマシか…。


と、思っていたらパンフレットの間から紙が落ちた。今度はなんだ、と訝しながらもハラリと地面に落ちた紙を拾い、マジかよと唸る。パンフレットに挟まっていたし。なんだこれは。


正直言って厄介事の匂いしかしない。なんで物騒極まりない所に入れようとしたがる。絶対に嫌だぞ俺、ここに入ったら平和の道が茨の道になる。


そもそも、学園に入るって事は国の監視下に置かれるって意味でもあるんだよ。誰が好き好んで行くか。唯一、救いがあるとすればこの学園の入学は本人の意思に委ねられるって点のみだな。


基本的には16歳になれば誰だろうと異能学園の入学・編入資格が得られるんだ。カッコイイとか、俺も強くなりたいとかの理由からこの学園には殆どの人が入学もしくは編入するらしい。


そんな個人を尊重します!の学園は本人の意思次第とか言ってるが…それはあんまり意味を成して無さそうなんだけど。だって見ろよ。パンフレットに入学願書が挟んであるんだぞ。いやらしいな。


拾わなければ良かったわ。いつでもウェルカムって解釈よりも、ここ強制な、って解釈にしか出来んのだけど。……と、散々言ったが実はこれ、ゆな宛なんだよね。


俺に来てる風に言ってるが、全然俺のじゃないです。まぁ、これが俺のだろうとゆなのだろうと言うことは変わらない。妹をそんな危険な場所に行かせるわけないだろ。戦塵の谷に突き落とすライオンか。


そもそも、ゆなはまだ14歳だぞ。中2だぞ中2。ふざけんな、誰だ送ってきたヤツ、送り返すぞ。


せめて送るのなら時期を考えろよな、なんで中2の6月頃に送ってんだよ。おかしいだろ、早いわ!


「はぁ……それだけ、ゆなの異能は凄いってことの証左かぁ?」


さっきも言ったけど、普通は16歳にならなきゃこの話は来ない。来るとするなら、俺の所だ。


え、だったら、俺宛には来てないのか?だって?…何言ってんの?来るわけないじゃん。


だって俺……



──────無能力者だもん。













「さてと、この話は終いだな」


そう呟くと周りにバレないよう、この紙を持っていたライターで








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リメイク致しました。展開としては同じですが、ところどころ解釈など人物への差異があります。改と着いているのはリメイクしたものになります

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