15 夜のハーモニカ

 

 切り絵の横スクロールアクション

 剣と魔法の冒険譚は

 五巻で打ち切りになっちゃった


 ワーニャはいつでもいらいらして

 秋の庭で煙草ふかして

 眉間のシワはとれなくなっちゃった


 夜のハーモニカ

 手招きするコーヒー 

 きみの肩にのる

 粉砂糖みたいな雪が

 きれいだった


 言葉は最大公約数

 足りないぶんはありあわせて

「やりすごす」ってほど大変かな

 眠らないままに過ごした

 暗い部屋で毛布かぶって

 くすくす笑って 笑っていたっけ

 

 あんなに楽しみにしてたのに

 あのバンドの新譜のケース

 落としてヒビだらけになっちゃった


 迂闊で間抜けな毎日を

 キザに飾り立てて謳って

 気付かれないふりでやりすごして


 夜のハーモニカ

 手招きするコーヒー

 きみの吐く息が

 粉砂糖みたいな雪を

 笑った


 いつかと今日の公倍数

 どこまでも見慣れた景色で

「わからない」ってほど新鮮かな?

 吐き捨てた愚痴もいつか忘れて

 そんなことあったっけ なんて

 いつかも忘れて 忘れちゃった

 


 

 

 

 

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