things
へーるしゃむ
0 ことのはじめ
鞭を打つのはやめたまえ。かわいそうに、怯えて疲れ切っている。いったいこの子が何をしたというんだ。最後に休ませたのはいつだ。最後に水を飲ませたのはいつだ。最後に労いの言葉をかけたのはいつだ。こんなに多くの荷物を負わせて、どれだけ遠くからそうしてきたのだ。背中に乗ってあぐらをかいて、怠けるなどと世迷言を! 機械にだって油をさすと知る子供らもいるというのに!
第一どこへ向かうと言うんだ? 地図をさかさまに見ていることにお気付きか? 頼りの馬はくたびれきって、いずれは息も絶えようというのに。
そんなに不満なのだというなら、衰えきった自身の足でどこへでも歩いてみたまえ! もっともとうにあなたには目的地など分からぬ様子。
鞭を打つのはやめたまえ!
この先の荒野、そんな調子では入り口にも辿り着けまい。まずは川辺で水でも飲ませてこの子を休ませたほうがいい。そしてこの子をじっくり労い、思い直す時間をとりたまえ。あなたの陳腐な苛立ちなどで、進める道などあるものか。何をそんなに恐れているのだ? せせら笑う声は身の内からのみ湧くものであろう。木こりの斧も研がねば切れまい。
鞭を打つのはやめたまえ! あなたにとってそれが前に進むための唯一の術なのだとは言うまいな。それともそうして言い訳をして、一歩も進めぬままで満足か。この先の荒野は甘くはない。悪いことは言わない。鞭を打つのはやめたまえ。
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