第44話
「みなさん、困惑していますよね。心中お察しします。全身タイツの可愛い女の子が突然2人も現れたらびっくりしますよね」
「いや可愛いって自分で言っちゃう!?」
つい隣からツッコミをいれてしまう。
彩奈と目が合う。
「可愛いんだから、しょうがないじゃん。許してニャン!」
「ま、可愛いけど」
「いやつっこんでよ。恥ずかしいわ」
お客さんから笑い声が少し上がったのが分かる。
ただの掛け合いなのに、それくらいで笑ってもらえるなら有難い。
そんなことより、彩奈がこの後何をするかの方が心配だ。
「え、てか何する気?」
「ちょっとハルピョン!声が小さい!そんなんじゃ声が、届・か・な・い!」
「いやでも私、マイク持ってないし.....」
「青い猫型ロボットが何言ってんのよー!」
「いや誰がドラ○もんだ!てかアヤニャンの方が猫っぽいでしょ名前的に!」
「ほらほら、どんだけツッコミ入れても声が、ち・い・さ・い。でも、こうすれば.....」
言いながら、彩奈は先ほどまで美咲さんが歌に使っていたマイクスタンドを私と自分の間に置いて、そこにマイクを戻す。
「どう?これで2人とも声が入るでしょ?」
「そ、そーだけど....これって」
彩奈の行動に驚いて、私はすぐに言葉が出なかった。
だって、この形でお笑いといえば1つしかないから。
「え、漫才するの?」
マイクに拾われた私の声が大きく響く。
彩奈がニヤッと笑みを浮かべる。
「いやアタシ達芸人だよ?するに決まってんでしょ」
「いやいや、そうだけど。今から野村美咲さんが歌うって時に、乱入して漫才するなんて正気の沙汰じゃなくない?」
「いや全身タイツ着てる奴が正論言ってんじゃねーよ!」
「いや、そうだけど。てかキャラどこ行ったの?」
「あ、いっけなーい!許してニャン?」
「え、もしかして持ちギャグにしようとしてる?」
「あらバレちゃった?」
アドリブ漫才の割には、テンポよく話が進む。
唐突な乱入だが、その割にはお客さんの反応は悪くないように思える。いや決して大爆笑とってる訳ではないんだけど。
悪くないんじゃ?
「あ、そうだ。歌の代わりといってはなんですが、今日は皆さんに楽しんで欲しいと思い、1つアタシ達の芸を見て欲しいと思います」
「え、芸?」
私は彩奈の言葉に訝しんだ。
「あの、そのアタシ達には私も含まれていますか?」
「もちろん」
嫌な予感しかしなかった。
なぜなら、今の私達にある芸なんて、一つしかないから。
彩奈は、今ここでやる気なのだ。
お尻丸出し芸を。
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