第4話
「お前、出ろよ」
「へ?」
行原の言った言葉がすぐには飲み込めなかった。
「え、私も出るんですか?」
「あぁ。今から交渉する」
「いや交渉って.....」
私は血の気が引いていくのを感じた。
「いやいや!私まだ何もできないですよ!?」
「何かは出来るだろ」
「いや出来ないですって!てか何したら良いんですか?」
「何でも良い。出来ることをやりゃ良いんだよ」
「そ、そんな.....」
無茶苦茶である。
しばらく歩くと、舞台袖らしき場所に辿り着いた。そこには、ビキニ姿の綺麗な女性だけが立っていた。スラっとした体型で身長も大きい。栗色に染まった髪はおろせば、腰くらいまであるのではないだろうか?
髪をおろせば、と言ったのは、彼女が髪を二つに結っていたからである。
ビキニ美女の生ツインテールだ。なんとなく女としての差を見せつけられた気分になる。少なくとも私は同じ格好はできない。
アイドルだろうか?この格好で今からライブをするのであれば中々に過激だ。こんな可愛い子でも、ここまでやるのか。大変だな芸能界。
他人事のように、そんなことを思った。
行原はビキニ美女の元へ一直線に歩いていくと、気さくに声をかける。
「よう、調子はどーだ?」
「オッサンかアンタは。別に普通だけど」
ビキニ美女がやや不機嫌そうに返事をする。
仲が良いのだろうか。2人の会話する様子を見ていると距離感は近く見える。
にしても、ビキニ美女を目の前にしても、行原は淡々としている。仕事柄慣れているのだろうか。
「てか、その子は?」
ビキニ美女が私を見てから尋ねる。
私は慌てて軽く会釈した。
「お前の新しい相方だよ」
行原が小さく笑う。
あ、こいつ笑うんだ。
そんなどうでも良いことを、ふと思った。
しかし、ある言葉が引っかかる。
ん、てか待てよ。相方?
まさかアイドルユニットでも組ますつもり?このビキニ美女と?
いやいや冗談キツいんですけど?
月とスッポンですよ、マジで。
「あ、あの」
私、無理ですよ、と言おうとしたその時、
「はぁ!?」
突然、ビキニ美女が大きな声を出す。
「この子がアタシの相方ぁ?」
ビキニ美女の目が見開く。
明らかに怒っている。
当たり前だ。今日会った奴といきなり組めと言われたのだ。怒るのが普通の反応だ。
私は怒鳴り声を受ける覚悟を決めた。
大丈夫、コンビニのクレームで慣れてる筈だ。
しかし、私の覚悟は杞憂に終わった。
ビキニ美女は目を輝かせて私に言う。
「めっっっさ嬉しいんだけど!」
「へ?」
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