明日のキミは照れのち笑顔

あめいろ

輝く舞台へ

第1話

私の名前は雨宮晴。

どこにでもいる平凡な21歳の女子大生だ。

というのは、つい1ヶ月ほど前までの話で、現在は21歳のフリーター(高卒)だ。

私は1ヶ月前、2年半通っていた大学を辞めた。

理由は、つまらなかったから。ただ、それだけ。それ以上でもそれ以下でもない。

そんな私は今、コンビニのレジでボーッと宙を眺めている。

「暇だ」

店内には人っ子一人いない。私にココのバイトを紹介した、同じシフトの相方は品出しもせずに休憩室で寝ている。いや仕事しろ。

小さく溜息を吐く。

私の人生、これからどうなっていくのだろう。

漠然とした将来の不安を抱えようと、時間は止まってはくれないし、目の前の仕事はこなさなければならない。

入口が開いたときの音楽が鳴り響いた。機械的に「いらっしゃいませー」と声を発する。最初は「い、いら、いらっさいやせー」みたいな発音しか出来なかったけど、一ヶ月もすれば、なんてことはない。慣れとは怖いものだ。

入ってきたのは、Tシャツ短パンというラフな格好をした青年だった。髪は黒のストレートヘアで少し大人しめな感じの見るからにフツメン。そして、重そうな黒のリュックを背負っている。いかにも大学生っぽい。

クソッ、なんか腹立つ。

別にその青年が悪いわけではないのだけど、なんとなく嫌いだ。そんな歪んだ自分自身も嫌いなのだけども。

そんな、どーでも良いことを考えていると、青年が商品を持ってレジに向かってきた。

菓子パン2つとお茶がレジに置かれる。

質素だ。やはり大学生か。

パパッとレジ業務を進める。

「三点で324円になります」

青年が財布から小銭を出す。

小銭を受け取る。丁度だ。

「丁度ですね。レシートはご利用ですか?」

「あー、お願いします」

ダルそうな低い声。カッコつけてるつもりか。逆にダサいのが分からないところが、またダサい。

レシートを渡し、商品を渡す。

「またのご利用お待ちしております」

完璧な口上。これで一連の仕事は終了。

商品を受け取った青年が軽く顔を上げる。

「あざま.....」

ただ、その目が固まる。

私の視線とズバリ合ったところで。

「?」

あれ、帰らないの?

何か間違ったことがあったのだろうか?おしぼりは入れたし、レシートも渡した筈だが。

思案する私を尻目に青年はグイッと私に顔を近づけて来た。

「アンタ、面白そうだな」

はぁ!?


それが、後に私の運命を変える男との出会いだった。



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