第31話 リーファVSアビル
声が聞こえ、リーファは椅子から、副官を幕舎に呼んだ。
リーファは地図に見入って一人呟く
敵が、動いている。
偵察からの報告があったわ。
敵を見つけられたのは、運がよかったとしか言いようがないわ
副官が尋ねる
「動いてるとは、どんなふうにですか!?」
騎兵団2万が後退しながら。
大きく迂回し、我らの側面か背後に回ろうとしているわね。
副官が地図を覗きこんだ。
2万ですか、どれくらい迂回しているのですか?
約十キロ退り、そこから横へ。
十キロ後退と言うのは、絶対に隠密と言うことよ。
戦闘が開始されてからでも、横に回り込むこともできるはずだけど、そうしてはいないわ。
なぜ発見できたのです!?
近くの村人からもたらされた情報よ。
なんでも、昨日の日暮れから後退しはじめた騎兵団がいたと。
そこから、所在は掴めなくなった。
さっき、わかったばかりよ。
本気ですね。
「ぶつかり合って、膠着する
その時、後方か横からの攻撃に寄って勝敗が決め手になる。
アビルは、そう考えていると思う。
「それで、俺がこれに向かうのですね」
「そうよ」
「リーファが喋り、副官は考え込んだ。」
「2万騎か……」
「さすがに敵の騎馬は多い。」
だが、本隊には約6万の兵力が残っていると言う
地図に目をやり、リーファは副官と顔を突き合わせて考え込むという恰好だった。
リーファは、まだ考えこんでいる。
副官が呟いた
やはり、この2万騎が勝敗を決しえませんね
意見具申致します
「エリザに」一軍を預け、敵の背後か側面を攻撃させるのはいかがでしょうか。
実戦での手腕はまだみてないわ
それは、わかりますが。
しかし、ここで躊躇しているときではありません。
エリザ以外に、誰が止めるのですか?
「かすかに、エリザが頷いた。
リーファが、地図の上に引いた線を、指でなぞった。
アビル軍の騎馬隊の、通ったあとである。
対峙している両軍の陣を、遠くから巻きこむようなかたちを、それはしていた。
これは騎馬隊の主力だと思う」
「本隊を離脱してからの動きは、非常に速い。
知らぬ土地でありながら」
嫌、敵は事前に地形は調べあげているのでしょうね
「この騎馬隊の動きは速いわ。」
「これまでの相手してきた敵軍より」
「私が、できるだけ、こちらへ引きつけます。5キロ以内に」
「エリザ、たのんだわよ」
エリザが、リーファにむいて1度頷き、幕舎を出ていった。
「もう、お互いに動かざるを得ないところまで来ました、リーファ様」
「皮肉なことに、私とアビルの呼吸はぴったりとあっているわ。
明日は、どちらが先に攻めかけるかよ」
備えに抜かりはありません。この作戦と同時に
シンシアの軍もアビルの軍に対して反撃を開始したのである。
アビルは斥候の報告を聞いた。
ラムド軍の騎馬隊が、我が軍の騎馬隊を追うかたちで、夜中に
出発したという報告は、すでに受けている。
陣形が、変っていた。前衛の後ろには、すでに本陣が出てきている。
それを両翼から守るというかたちだった。
騎馬5千を、敵の右翼へ」
続けて、5千を、敵の左翼へ」
本隊は1万を」
「勝負よアビル」
この戦闘により、マザー麾下のアビル軍は全滅したのである。
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