第21話 誘拐犯の家へ
姫子の推理によって導き出された灰原。
彼は、その推理通りの情報を知り得ていた人物なのかの追跡捜査が青野によってすぐに開始された。
まず脅迫状の内容。望月は灰原にそれを話していた。
それは、脅迫状についての情報を少しでも得たいと思った望月が、灰原に脅迫状の詳細を話すことにより、彼にも緊迫感を与え、封筒の追跡調査を真剣かつ丁寧にして欲しくて取った娘を思う親心からの行動であった。
次にスイミングへの移動時間。この情報は、下飼から秘書課に電話をした配車のキャンセル連絡を、向村が決裁をもらうために灰原に書類で回していたことが分かった。
さらにこれが私的な配車であったため、望月から灰原に、娘のスイミングで車を利用するという話も事前にされていたのであった。
こうして次々と灰原の状況証拠が裏付けられていった。
そしてなんと灰原は、今日の会社を休んでいた。
追跡捜査を終えた青野が、姫子に言った。
「今すぐ灰原の自宅に行ってきます。そこで何かを発見する事が出来たら、すぐに黒川さんに連絡して応援を呼びます。」
強く頷く姫子。そして青野は準備を急いでいた。
「青野さん、私は灰原の家に以前行きました。会長の指示で車田と一緒に荷物を届けたのです。
彼の家の近くは、細い道や一方通行が多くて、到着までかなり苦労しました。
ですから、よろしければ私に道案内をさせて下さい。その方がより早く着くことが出来ると思います。」
犬飼が青野に申し出た。
「ありがとうございます。それでは案内をよろしくお願いします。」
こうして青野と犬飼は、急いで出発していった。
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灰原の家に到着した二人は、家の道路わきに止められている見覚えのある一台の大型バイクを発見した。
青野は、すぐに黒川に連絡した。まず犯人が使用したと思われるバイクを発見した事。そして停車された自宅に住む灰原が、容疑者である可能性が高いことも姫子の推理と共に伝えた。
それを受け黒川は、すぐに他の刑事と共に応援に向かうと返事をした。
黒川から青野への指示は、現場周辺で警戒しながらの待機であった。
すぐに灰原家に踏み込みたかった青野だったが、それは黒川達が到着するまで禁止されたのであった。
自宅に灰原と佳菜ちゃんがいる可能性は、非常に高かった。
しかし同時に、ここで不用意に灰原を刺激すれば、佳菜ちゃんを人質にして灰原が立て籠もる可能性も高かったからである。
灰原に発見される事がないよう警戒しながら黒川に連絡をしていた青野。
その青野の後ろに静かに控えていた犬飼。電話を終えると青野は犬飼に言った。
「危険ですから、あなたは先に望月家に戻っていて下さい。」
「分かりました。ですが、他の刑事さん達が到着するまでは、ここに居てもよろしいでしょうか。
青野さんが一人で残っている間に、対応できないような事態が起こるかもしれませんから。」
犬飼は、自分が戻ることでここに一人になってしまう青野を気遣った。
青野は、その好意をありがたく受けることにした。
まず現場周辺を確認した青野。そして黒川達が到着するまでの間、灰原に発見されないようにと、少し離れた場所に移動して二人で待機することにした。
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