冬のひととき
@syouryu-
出会い
ゴトン…ゴトン…。
ゴトン…ゴトン…。
電車が走っている。
あたりが一面石英でできたような地面の上を電車で走る。
電車の中に一人、青年がいる
青年は桂太一。
絵描きを志す美大生。
現在は課題のために雪国に来ている。
雪の中の島で、電車が止まる。
桂は電車を降りる
「美しい」
そう思って電車を降りでもしたのだろうか。
桂は気を抜いていた。
そんな彼の前に一瞬、何かが横切った。
不思議な、でも何か懐かしいモノであった。
そんなことがあった日も、瞬きの如く一瞬であった。
翌日、桂は山へ向かった。
山は眠っている。
桂が絵の題材に適した場所を探していると、社が現れた。
地図にも載っていそうにない、小さく、古い社だ。
普通なら近寄らない社だが、桂は違う。
桂は昔っから頭のネジが2、3本外れていると言われた者だ。
この程度では怯まない。
「美しい…。決めた!ここを描こう。」
桂はそう言うと、絵を書く準備を始めた。
よし、描こうと思い社を見ると、いなかったはずの女が立っていた。
「誰だ、お前は。どこから入ってきた」
女が桂を問い詰める。
流石の桂もこれには怯んだ…。
しかしこれしきのことで桂は逃げ帰らない。
むしろ好奇心が湧くほどだ。
「お前こそ誰だ。どこから出てきた。」
桂が聞き返す。
すると女は、面白そうに笑い、
「すまん、すまん。ここまで度胸のある人間は見たことなくてな。」
と言うとまた笑いだした。
桂はしばらく話においていかれたが、また質問した。
「度胸のある人間は見たことないって…。まさか、君は人間とでも言うのか。」
すると女は、
「そうさ、私は人間ではない。お前達の言葉で、神と呼ばれる存在だったモノだ。名はもう覚えていないが…。」
と答え、更に
「ここはもう、神の世界ではない。神と言った存在はもう、人間たちから忘れ去られてしまったからな。」
と語った。
桂は女から少し寂しいものを感じた。
「俺にはここの土地がわからん、けれど、ここの土地の人達に、君の存在を思い出させて見せる。」
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