魔法をかけて

芹沢ジュネ

魔法をかけて

アラームの音に目を覚ます。


…。

スヤスヤと眠る僕が見える。


幽体離脱してしまったようだ。


「戻らせてくれよ、遅刻する」


僕がそう強く願うと、元の僕に戻る。


と、ここまでは、いつものことだった。


しかし、今日は少し違った。


僕の上を何かが飛んでいる。


蝶?


「なんだ?」


すると、その飛んでいる物体は止まり、こっちを睨む。


「なんだ?じゃないわ!おまえ、毎日毎日、よう寝るわな!」


うわっ。喋った。蝶が喋った。


「だ、誰だ、おまえ?」


「おまえなんて言うな!オレ様は天使だ!」


僕は意味がわからず、きょとんとする。


「おまえ、毎日毎日、オレ様が起こしてやってたのに、ちっともオレ様に気づかねぇじゃんか!」


「ご、ごめん。」


なぜか謝る。


状況が読めない僕は、ふたたび眠りにつこうとする。


するとふたたび幽体離脱させられて、起こされる。


「おい!やめろよ!」


自称天使はニヤリとする。


「おまえ、誰のおかげでおとといの朝一の会議間に合ったと思ってるんだ?」


僕は確かに遅刻魔だった。幽体離脱の毎日がやってくるまでは。


幽体離脱させられるようになってから、無遅刻だ。

これは、この自称天使が起こしてくれていたからだったのか。


「あ、ありがてぇー。天使様!」


それからというもの、僕はこの自称天使と会話するのが朝の日課になった。

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魔法をかけて 芹沢ジュネ @june_s

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