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第18話 朝シャンの乱入者(火野栞視点)
朝からシャワーを浴びていた。
たまに行う私の朝シャンに巧は苦言を呈すけど、いいこと尽くめだ。
寝癖が直せるし、シャッキと意識が覚醒して行動できるし、気持ちいいし、身体を綺麗にできるし、そして、考え事に没頭できる。
キュッと蛇口を閉めると、ボディーソープを身体に纏わせていく。
椅子に座りながら、昨日の夜のことをじっくりと思い出す。
昨日の夜、朧気ではあるが、水上とかいう子が、私の部屋を漁っていたような記憶がある。
夢だったのだろうか。
泥酔していたから昨日のことが夢だったのか、現実にあったことだったのか区別がつかない。
まだ寝ていた水上さんを横目に部屋を調べたけど、特に荒らされた様子はなかった。
盗られたものも何もなかったので、夢だったのかもしれないけど、妙な夢だった。
「――っう」
頭が痛い。
酔いがまだ完全に冷めていないし、昨日の記憶が曖昧な部分はあるけど、自分の口が滑ったことは覚えている。
「ああああああああああっ」
声が響くと嫌なので、小声で悶絶する。
パッド重ねてコスプレする宣言とか、初めてをする理想の場所とか。
昨夜の言動は、もしも日本が銃社会だったら、即座に引き金を引いて脳漿をぶちまけるほどの恥辱の極みだった。
でも、いいこともある。
久羽先輩のお陰で、私達の仲は依然と比べて格段に修復された。
朝、起きた時。
「おはよう」
「おはよう、あれ? それって」
「ああ、指輪? まあ付ける気分だから」
という会話を繰り広げた。
…………。
…………………………。
…………………………………………かっ。
可愛すぎぃいいいいい。
ぶっきらぼうに答えながらも、巧の照れた横顔を朝から見られて最高にハッピーな一日になりそうだった。
格好いいと可愛いという相反する要素が共存しているのが、巧だ。
昨日のことがあったから、指輪を付けてくれたのだ。
もう、その指輪こそが、私達の婚約指輪でもいいぐらいだ。
じっくりと距離を詰めていきたい。
最近、ずっと寂しかったし、辛かった。
今なら徐々に、溝も埋めて行ける気がする。
ただその為には、二人きりになる必要がある。
ここには、今、異物がいるのだ。
その異物がノックもせずに、風呂場に入って来た。
「シオさん。お邪魔しまーす」
「え? あ? あれ?」
思考がフリーズする。
タオルでかろうじて前は隠れているけど、何で裸になって許可もなしに風呂場に入って来てるの?
「本当にお邪魔なんだけど、何で水上さんは入って来てるの?」
「え? でも、シャワー浴びてきていいかってタクさんに訊いたら、いいって、許可はもらいましたよ?」
「それはシャワーを浴びる許可をもらっただけで、私が浴びている時は入って来ていいとは巧も許可しないでしょ。そもそも、私が許可しないんだけど」
「何でですかあ。タクさんだって、光熱費と水道代がかかるから、朝シャンは嫌だって言ってしましたよ。節約するためには、二人一緒に入った方がいいんじゃないですか?」
「それは、浴槽のお湯を使った時で――っていうか、そんなことまであなたに喋ったの? 巧が」
「? はい」
この子もこの子で、何考えているか分からないけど、巧も巧で何を考えているのか。
ShowTubeは喋るのがメインの仕事だけど、だからといってお喋りになっていいことにはならない。
私に対する愚痴を会ったばかりの女の子に話すなんて。
やっぱり、この子と何かあったんじゃないんでしょうね。
風呂から上がったら、早速問い詰めないと。
「せっかくですから、一緒にシャワー浴びましょう」
「ちょ、そっち、水だから!」
何も話を聴かない水上さんは、シャワーの蛇口を開けるが、そっちはお湯じゃなくて水の方。
しかも、全力で捻るし、シャワーヘッドの方向は、私にロックオンされていた。
水が一気に私に降りかかる。
「きゃああああああああああ!!」
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