第30話 アリサVSシューバート

特訓の日々はあっという間に過ぎ去り、当日を迎えた。


強い人の動きを見ることはできたが、自分が強くなれたかと言うと微妙だ。


ルデビト城内は異様な緊張感に包まれている。

外には鉄に囲われた大きなリングがあり、まるで闘技場だ。


すでに第1試合のアリサとシューバートは準備運動を行っている。

こっちまでドキドキするなぁ。


もちろん全員仲間だが、やっぱり心のどこかでアリサを応援してしまう。


「では、両者リングへ。」


王家の老人が2人を誘導する。


「アリサ、頑張ってな!」


横を通り過ぎるアリサに、シューバートに聞こえないよう小声で応援する。


「うん、行ってくる。」


アリサの声は震えていた。


鳴り響く甲高いゴングの音。


先に仕掛けたのはアリサだった。


「下位魔法:【小氷】」


氷を纏った矢がシューバートを襲う。

恐ろしいのはアリサのスピードだ。


弓の速度ももちろんだが、アリサ自身の速度も半端じゃない。


立ち止まらずに弓を放ち続けるため、シューバートはアリサの動きを捉えることが出来ず、ギリギリで矢を弾くので精一杯だ。


俺やミゲルと特訓しているときは本気じゃなかったのか。段違いの速度だ。


数分経ったときだった。

「下位魔法:【小風】」


アリサに魔法が直撃し、吹き飛ばされた。

シューバートが動きに慣れたのか?


アリサが呼吸を乱し、なかなか立ち上がれない。


どうやらシューバートが慣れたというより、アリサの体力の限界のようだ。


「そんだけ走りながら魔法使い続けたら、バテるよなぁ。」


なるほど、シューバートはこれを狙って反撃しなかったわけだ。


「下位魔法:【小風】!」


今度はアリサが防戦一方だ。

魔法を受け続け、かなり外傷も目立ち始めている。そろそろ止められるのでは。


審判が手を上げ、シューバートの勝利を宣言しようとした瞬間だった。


シューバートの攻撃は止み、お腹には氷の矢が刺さっていた。


「おま、氷の矢も作れんのかよ。」


「下位魔法:【氷矢】小氷より体力使うから滅多に使わないけどね。」


誰もがアリサの勝利を確信した時だった。

シューバートの周りを風が包む。


「負けるかよ。やってやる。」


ただならぬ雰囲気にアリサも身構える。


「はぁはぁ、中位魔法:【リストフロスト!】」


使えるのか!?ウーラと同じ中位魔法が!


両手から溢れる巨大な竜巻。

紛れもなくリストフロストだ。


繰り出そうと一歩前に足を踏み出す。が、踏ん張れずにそのままうつ伏せに倒れた。


「第1回戦!セトラ•アリサの勝利とする!」

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