第2話 落ちる落ちる落ちる

俺も帰るか。まだ数人残っている夕焼けに照らされた放課後の教室を出た。


校舎から出ると、1、2、ファイオーっという運動部の掛け声がグラウンドから聞こえてくる。

この暑い中よく頑張るなぁ。ミンミンと鳴き続ける蝉の声と合わさって、9月だというのにやけに今日は蒸し暑く感じた。


「あっちぃな」


ボソッと声にしていることに、少し遅れてから気がついた。


遠くでゆらゆらと陽炎が揺れているのが見える。今まで見たことがないくらいに鮮明にコンクリートに広がっていた。心なしか、その陽炎が徐々に徐々に大きく、近づいているような気がする。


「やばいな、錯覚を起こすくらい俺は暑さにやられてるのか。」


少し焦りを感じ、急いで家に帰ろうと早足になる。が、それが錯覚ではないと確信したのは足元を見た瞬間だった。


「なんだよ、これ..」


紛れもなく、足元に青空が広がっていた。先ほどまで陽炎だと思っていたそれは自分の足元にまで伸び、まるでコンクリートを淀みのない鏡にしたかのように鮮やかな青空を映していた。


「空の上に、立ってるのか..?」


そう錯覚せずにはいられなかった。

よく見ると、自分を中心にコンクリート半径2メートルほどのきれいな円だけが青空に変貌を遂げていた。


パニックになり尻餅をついた。

とっさについた右の手のひらに固いものがあたり、痛みが走る。コンクリートの石でも刺さったか。


慌てて右手を見ると、透明な、あまりにも透明な5センチほどの星形のネックレスが握られていた。厚みも1センチほどはあるだろうか。

そのネックレスから妙な力を感じ、スッと冷静になった。精巧に出来すぎてはしないか?ガラスとも宝石とも違うような.. 本当にこの世界のものか?


その瞬間、ネックレスから発生したまばゆい光で視界を奪われながら、恐ろしいほどの浮遊感に襲われた。


どこかへ落ちている!?



徐々に体全体を光に包まれながら、意識を失っていった---

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