踊り

HUDi

 愛犬の死を悟った。犬が死ぬこと自体は身の回りにありふれたことで、話題にも度々上った。しかし今度は自分の家の犬の死だった。

 …だが悟るという程大仰なことではない。心臓病、靭帯損傷、白内障、13歳。その内決定打は心肥大だった。ある日病院から帰ってきたら、いつ死ぬかわからないと彼女の母が言った。彼女は苦労をかけさせて申し訳ないという、もはや惰性的な母への感情と、深い悲しみと、それを麻痺させる何かを感じていた。

 何か償おう。

 そうだ、ずっと一緒にいてやればいい。

 別に死ねるとも思ってはいなかったが、夜の田舎道を一時間歩いてみた。犬の吠え声がして、それ以外は、住宅と田んぼばかりだったので、たいして怖くなかった。森ではなかったからだ。時々電灯もあった。

 結局一緒にいてやることはできなかった。一番堪えたのは、愛犬の首が細くなっていたことだった。どうしろというのだろう。死に触れることが忌避感を感じさせる。

向かいの家の犬が瀕死の時、ぞうきんと見間違えたのを思い出した。ぞっとするほど小さく薄くなっていた。その犬はすぐに死んだ。

目の前に愛犬がいる。隣に寝そべってその顔を見ていた。少し眠った。

 

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