不死鳥の禁断魔女
@elise7
第1話 プロローグ①
満月の夜、ベッドの家で魔法使いが登場する小説をマリアは興味津々に呼んでいた。
魔法が使えたらどれだけ楽しいのだろうか、どれだけ綺麗なものだろうか。しかし、自分は魔法の使えない人間だとマリアは心の隅で失望しながらページを捲る。そして、たまたま目に入った興味深い一文を口に出す。
「どんなに割れない硬い石が魔法の炎で溶けていく、、」
小説の挿絵には大きな石を串刺すように炎の棘が何本も刺さっている。少々十二歳ほどの少女には過激な絵だ。それでも彼女は瞳を輝かせながら挿絵にそっと触れた。
「やっぱり魔法っていいなぁ〜。もし使えたら、、そうだなぁ、、」
もしも魔法使いになったらとマリアは妄想をした。魔法使いにしかできないことって何があるのだろう。考えられる限りいくつか候補を出し指を折り曲げながら数える。
「空を飛んだり、天気を操ったり、人の願いを叶えてあげたり、、炎を出したり、あ、英雄になったり!」
妄想でしかないが、考えるだけでも心が躍るようだ。魔法が使えないという現実から少しでも離れられる幸せなひととき。
刹那ーーーー
コンコンコンコン!!
ベッドのすぐ隣にある窓を誰かが急かしておるかのように叩く。しかし、人が叩いていると言い難いほどの小さな音だ。こんな時間に誰なんだろうとマリアは何の不審もなく窓を開く。
「(誰だろう、、)」
窓を開くと、
「お願い!! 助けて!!」
「、、、、!?」
声が出るほど驚きはしなかったが、目の前には背に透明感のある羽根を生やした小さな妖精がマリアの目の前に飛び出して来た。
「よ、妖精?! 妖精だよね?! 絵本で見たことある!」
「ええそうよ! そんなことより早く来て!!」
妖精は高い声を出しながら、小さな体で数倍も大きいマリアを窓からひきづり出そうと腕を引っ張る。
よっぽど緊急事態なのだろう。マリアは止むを得ず窓から外へと抜け出して、裸足のまま妖精について行った。
〜数分後〜
「ついて来るんじゃなかった!!」
騙された。罠だった。
妖精に連れてかれる場所は真夜中の森。唯一の明かりは満月の光。
そしてそこにいたのはーー
ギシャアアアアアアアア
背丈が大樹ほどある何本も足を生やした。大ムカデ。
寝巻きのまま逃げ回っているマリアを近くで見ている者がいた。そいつこそ妖精に助けを呼んでこいと言った張本人だ。しかしそいつは人間の姿をしていない。所謂、魔獣という類の者だ。
尖った耳に、鋭い牙と爪、そして獣のように毛で覆われている体。しかし、体躯はマリアと同じくらい。
ウルフの子供だ。
そのウルフ少年は妖精に怒鳴った。
「ジュリ! 俺は助けを呼べと言った筈だ! 子供連れてこいなんか言ってねーぞ!!」
「いやん!! ジュリに怒鳴らないでよ! それに魔力の気配が一番強いのがあの子だったもん!」
「、、、、っ!」
再びマリアの方へと目を向けると、暗くて見えなかった彼女の髪色が月光に照らされ、ウルフ少年は目を見開いた。
「まさか、、!」
すぐに走り回るマリアの元へと地面を蹴り、共に走った。
「おい聞け!!」
「ええええ?! オオカミが喋った?!」
「ここは危険だから早く帰れ!」
「はあ?! 無理無理! 完全あのキモいのあたしのこと追ってるもん!! 無理無理!」
確かに大ムカデはマリアの赤髪を標的に追って来ている。
この大ムカデは暴魔害虫といって目立つものを追う習性がある。この中で一番目立つものといえばマリアの赤髪だ。
大ムカデは会心の一撃を食らわすように大きく頭を地面に叩きつける。
するとその衝撃でマリアとウルフ少年は前へと倒れ込んでしまった。
「ぎゃっ!」
「ッッックソ!」
こうなったら倒すしかない。ウルフ少年はすぐ近くの木に鋭い爪を埋め込み、魔法を発動する。
木々のの枝がたちまち急成長を果たし、それは隣の木へ伝染していく。やがて、触手のような木の枝が大ムカデの体を貫いていった。
ギャシャアアアアアアアア
大きなうめき声を上げて、大ムカデは体をうねらせて大暴れし始めた。まるで水に上げられた魚のように。
そんな状況で無事なわけがない。
大ムカデが暴れたせいで、土砂崩れのように土が下へと崩れていく。
マリアの頭上に無地では済まなさそうなサイズの大きい石が落ちて来る。
「ひいいい!!!!」
「離れるな!!」
間一髪のところでウルフ少年に腰に手を回され、引き寄せられた。
「あ、危なかった〜」
しかし、安心するのも束の間。
二人の頭上目掛けて大ムカデの尻尾が振り落とされようとしていた。
「(まずい!)」
ウルフ少年は退避しようと爪を埋めている木から手を離そうとしたが、思っていたよりも深く爪が刺さってしまい抜けない。
マリアはというと、心の中で後悔した。そして、悔やんだ。
ここに来るんじゃなかった。
夜更かしして小説読むんじゃなかった。
夜の森には行くなっていうルルアの言うこと聞くべきだった。
そして、、
小説のような魔法がもし使えたのなら、、。
彼女は命の覚悟をした。どーせ死ぬのなら最期の最後まで魔女にでもなった感覚で死にたいと。
ぎゅっと目を瞑り小説で見た挿絵を思い出した。
その瞬間ーーーー
ボオオオオオオオオオオオ!!
大ムカデを貫いている木の枝を伝って、炎が大ムカデへと燃え移っていく。
「なんだ?!」
ウルフ少年は突然の出来事に見ることしかできなかった。自分が出した炎ではない。
それじゃあ誰が出したのだろうか。
答えは決まっている。
この魔力の強さの正体は、、今ぎゅっと目を瞑り自分の胸板に顔を埋めている赤髪の少女。
マリアの魔力がウルフ少年の体を伝って炎を生み出したのだ。彼の体にとって強力ななマリアの魔力が体に負担があったらしく、タラッと鼻血を出してしまった。
炎によって枝は燃え焦げてしまったが、炎が棘の形を成し、さらに大ムカデを串刺しにする。
寝る前に呼んだ小説の挿絵のように。
シュウゥゥ
やがて大ムカデはマリアの炎によって灰になった。
「大丈夫?」
今までずっと避難していた妖精のジュリが二人の前に姿を出した。
ウルフ少年は力みながら木から手を離し、「ああ」とだけ答える。自分の懐に収まっているマリアにいつまで目を瞑っているのかと目を向けるが、彼女は気を失っていた。
「寝てる、、」
よく見ると足を怪我している。きっと大ムカデが頭を地面に叩きつけた時だろう。ウルフ少年はマリアをおんぶし、その場に立ち上がった。
刹那、不快な気配を耳で感じ、尖った耳をピクピクっと反応させる。
「マジかよ、、もう戦う気力ねーぞ、、」
大ムカデの次に現れたのは大きなトカゲの体をしたサラマンダーだ。しかし、暴魔害虫でも魔獣でもない。つまり、誰かの使い魔だ。
だとすると、今ここに自分たちを殺そうとしている敵が潜んでいる可能性が高い。
殺意しか感じられない怪物に相手する気力は残ってないウルフ少年はマリアをおんぶしながら迷わず選択をする。
「ジュリ! 逃げるぞ!」
「あ、グーちゃん待って!」
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