二章
第一話 [ププローグ]
嫌な予感がしたんだ。
いつもはいい予感しかしなかったのに
今日は嫌な予感がしたんだ。
僕らはなんでもできる気がしていた。
人間には、超えられない壁がある事を
僕たちは、理解する事になる。
エルナ……君は今何を考えているのだろうか。
「逃げろぉぉぉおお。今の俺たちじゃコイツと戦っても死ぬだけだ!!」
<<<<<<<<<<<<<<<
時は、さかのぼり、《最難関ダンジョン》正式名称終焉の洞窟。入り口前
「凄い。こんなでかい門なんて見たことない。」
「気を引き締めて行けよ。」
「アルト様もユイさんも一人で突っ込まないでくださいね?」
俺たちは、最難関ダンジョンの門に触れる。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと音を立て、扉が開く。
「あっかんやわー」
「ユイのたまに入る関西弁はなんなの?」
「なにそれ?」
「知らんのかよ!」
ドアの先には下に続く階段があり、俺たちは一階層に進む。気温が下がり、肌寒くなる。一階層に降りた先に待ち構えていたのは、コウモリの大群だった。
「ピィーーーーー!!!」
コウモリ達の警戒音がダンジョンに鳴り響く。くそっ。頭がいてぇ。耳を塞ぎ鑑定アリでコウモリを調べる。
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【マラカスバッド】
侵入者を見つけると警戒案を鳴らす。
自ら攻撃をする事は、無いとされている。
怒らせたら、地の果てまで追いかけてくる。
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「エルナ!ユイ!絶対に手を出すな!!」
耳を塞いでいるので出来るだけ大きな声をだして、エルナ達に伝えようとする。二人とも俺を向いて頷いた。マラカスバッドの鳴き声が止み、耳を塞ぐのを止める。
「凄い音、耳が壊れるかと思いました。」
「大丈夫か?エルナ。」
「はい。問題はありません。」
「僕の心配は?」
俺はユイの方を向いた。ニコニコとしている様子だったので無視して進む。
「ちょっと待ってよ〜。」
ユイはフラフラしながら俺に近づく。ダメージ食らってたのに、我慢してたな。ユイをお姫様抱っこで持ち上げた。軽いな…ちゃんと食べてるのか?
「辛いなら辛いって言えよ。」
「ごめん。」
「ユイさんは後でお仕置きですね。」
一本道のダンジョンを警戒しながら進む。モンスターに出会う事が無く、順調ってとこだろう。順調すぎて、少し不気味さを感じる。なんせここは、最難関ダンジョンなのだから。
「おかしいです。」
「どうした?」
「モンスターが居なさすぎます。」
「いないと不味いのか?」
「強力なモンスターが、弱いモンスターを捕食してる場合があります。その状況に近い物だと考えます。」
俺たちが出会ったのは、最初のマラカスバッドだけ。ダンジョンには通常様々な種類がいるとされている。イレギュラーケースとしてそう言った事態がある事も、文献で記されていた。『ダンジョン攻略講座』ダンジョンの役立つ情報が載っている本だ。
冒険者になる時、初心者講習で教科書になる本。スキルの使い方。野営の仕方。なども細かく載っている。しかし書いてある事の殆どが、再現不可能な物が多く。必要な箇所だけ、勉強する。誰が書いたか不明であるが、高ランク冒険者が書いたとされている。
「たしかに、気をつけた方がいいな。教えてくれてありがとう。」
「感謝は不要です。仲間ですから」
強敵の戦いに備えてアルファ・ベータ・ガンマを呼び出した。アルファ達は俺たちの前を進み安全確認をしてくれる。万が一罠があってもアルファ達なら問題なく突破できる筈だ。
カチッ!
アレ、アルファさん何か音しましたよ?上から槍が降ってきてくるが、アリの皮膚を貫通することは出来ず、槍の方が壊れた。心臓に悪いから、罠踏まないで欲しいな。アルファ達は罠を気にも止めず前に進むのであった。
「なにあれ………。」
「アルト様鑑定して貰えませんか?」
「わかった。キィ頼む」
【転移石】
触れると、ダンジョン内の何処かに転移される。
「転移石だ。触れるとダンジョン内の何処かに飛ばされるらしい。」
「離ればなれになったら大変です。触れないようにしましょう。」
「僕も賛成〜!」
運が良く先に進めるかもしれないが、リスクを取ってまで急ぐ必要はないだろう。俺たちはまた、歩き始めようとした時、地響きがした。振り返るとそこには、真っ赤に光る目が俺たちを見ていた。
2本の頭の横に生える角、黒い体毛で覆われており、猿と牛を足して二で割ったような。ミノタウロスをよりモンスター化したような、見た目であった。
「金獅子……。」
エルナが震えながら声を出した。あの猿みたいなモンスターが伝説の金獅子とでも言うのか?!
「グォォォォォオオオオオオオオォォォ」
金獅子は両手を振り上げ雄叫びを上げる。次の瞬間、腕を交互に振りながら俺たちに近づいてくる。
「エルナ!ユイ!戦闘体制!!」
「了解!」
「承知しました。」
「鉄塊!」
ユイが俺たちの前に出て、振り下ろされる腕を受け止める。エルナが隙をついて金獅子に触れるが、何も怒らなかった。嘘だろ。何が起きてるんだ?
「アントビースト!貫け!酸貫神槍(バリスタ)」
ドカンッ!!!と金獅子に当たる。
「嘘だろ………。」
バリスタを食らったはずの金獅子は、無傷で立ち上がる。標的を俺に定め猛スピードで、突進を仕掛けて来た。金獅子は体を大きく広げ、自身の体重に
任せて倒れる。金獅子の攻撃から俺を逃す為、ユイが俺にタックルをして吹き飛ばす。
「ユイ!」
「ユイさん。」
踏み潰されたユイが剣を杖にして立ち上がる。ボロボロになった体を無理やり起こし、口から血を吐く。
「ごめん。僕。もう役立たないかも。」
苦笑いをするユイ。
「殺してやるよ。クソ猿。」
アルファ・ベータ・ガンマを呼び出した。一瞬で良い。時間を稼いでくれ。
爆弾アリ達が金獅子に向かって突撃をする。毒アリ達も毒霧領域を吐いて相手の動きを鈍らせた。
「吹っ飛びやがれ!」
次々と爆弾アリが金獅子に向かって自爆特攻を仕掛ける。よろめく金獅子に、追い討ちをかけるようにガンマが巨大化して噛み付いた。
「グォォォォォオオオオオオオオ」
一瞬だった。ガンマの頭に金獅子の拳が辺りドーンと音を立て、地面に埋め込まれた。地面にヒビが入り、地震が起きる。一瞬。時間にして0.1秒。金獅子を抑えられた時間だった。それでも良く稼いでくれた。その一瞬を使い俺は金獅子に触れる。
「食べ尽くせ!!捕食(エフージオ)!!!!!」
金獅子の周りに黒い渦が現れる。金獅子を飲み込み俺は勝利を確信するのだった。
「危なかった。せっかく貯めたレベルを使っちまった。」
「仕方ありません。相手は金獅子ですから」
「ねぇ、あれって………。」
俺たちの目の前には、片腕を失った金獅子が俺を睨みつけていた。どんな生命力してるんだよ。くそったれ。もぅ戦える体力残ってねぇーよ。
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