第10話

 アルト達はゴブリンの巣に入った。

 中はジメジメとして、かび臭くて生臭い空気が立ちこめている。

「すらすけ、すらみ、大丈夫?」

「ぷるん!」

「ダイジョウブ」


 アルト達が奥に進んでいくとゴブリン達が現れた。

「すらすけ強化! 攻撃力上昇!!」

 アルトがすらすけに手を当て叫ぶと、すらすけの体が発光し、少し堅くなった。

「行って! すらすけ!!」

「ぷるん!!」


 すらすけがゴブリンに体当たりすると、鈍い音がしてゴブリンが倒れた。

「えい!!」

 アルトが剣で倒れたゴブリンにとどめを刺す。

「ワタシ、タタカイ、イヤ」

「うん。ごめんね、すらみ。でも、ここにいるゴブリンキングを倒さないと町の人たちが危ないんだ」

「……ワカッタ」


 すらすけは次々とゴブリン達を倒していく。

「氷の刃!!」

「ぷるぷる!!」

 すらすけから発せられた氷魔法で、残っていたゴブリンは一掃された。

「ぐぷっ」

 最後のゴブリンを倒すと、奥から普通のゴブリンの三倍は大きい、巨大なゴブリンが現れた。


「行くよ、すらすけ! すらみ!」

「ぷるんっ」

「ハイ」

 ゴブリンキングの強烈な一撃を受けて、すらすけが倒れた。

「すらすけ!? スライム強化スキル、防御力向上!!」

「ぷるんっ」

 すらすけの体が、ガチリと堅くなった。


「!!」

 堅くなったすらすけが、力一杯ゴブリンキングに体当たりをする。

「スピードアップ!!」

 すらみが新しい魔法をすらすけにかけた。すらすけの動くスピードが一気に加速する。

「ドゴッ」

 鈍い音と共に、ゴブリンキングが倒れた。

 アルトはすらすけと共に、ゴブリンキングの首に剣を当て、力一杯切りつけた。


「アルト、コウゲキリョク、アガレ!!」

 すらみが攻撃力向上魔法をアルトにかけた。

「ありがとう! すらみ! えいっ!!」

 アルトの剣が、ゴブリンキングの首をはねた。


「倒した……のか?」

 ゴブリンキングの体は、一度立ち上がろうとしたがそのまま前のめりに倒れた。

「……何か、持ってる?」

 アルトはゴブリンキングの剣を取り上げた。それは魔石がはまっていて鮮やかに輝いていた。

「炎の剣だ!! 貰っていこう!」

 アルトはさび付いた剣を脇に差し、炎の剣を手に持った。炎の剣は軽いけれど、振るといくつものファイアボールが飛び出してくる。


「アルト、スゴイ」

「うん。すらすけ、すらみ、帰ろうか? でも、その前にゴブリン達のお墓を作ろう」

「ぷるん」

 強化魔法の切れたすらすけは、柔らかな体で土を掘り返し、ゴブリン達を埋めた。

 ゴブリンキングまで埋め終わると、アルトはさびた剣をゴブリンキングの墓標にして、洞窟を去っていった。


 洞窟を出ると、ユーナが立っていた。

「アルトくん、無事だったんだね」

「ユーナさん。町には帰らないんですか?」

「……スライムとアルトに助けられるなんて、冒険者失格だからね」

「タスケラレタノニ、ソノイイカタ、ヒドイ」

 すらみが抗議した。


「悪かったよ、アルトくん。この先もせいぜいスライムと頑張ってくれたまえ」

「ユーナさん、一人で大丈夫ですか?」

 洞窟わきの、森の空気は暗く沈んでいる。

 ユーナの表情も険しい物だった。

「私は、これから一人で旅に出るよ。なに、一人には慣れてるさ」

「ユーナさん、一緒に行きませんか?」

「アルト!?」

 すらみとすらすけがアルトを見た。

「お断りさせて頂くよ。私はすらいむとつるむ趣味は無いからね」


「そうですか……それじゃ、気をつけて」

「……悪いね、アルトくん」

 ユーナは白の泉に背を向けて、チェントロの町から離れるように歩いて行った。

「僕達はチェントロの町に帰ろう!」

「ウン」

「ぷるんっ」


 アルト達は、白の泉に置いておいた薬草と毒消し草をカイシュウしてから、町に帰っていった。

 

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