魔物駆除開始します。

大西 詩乃

月火隊

「月火隊到着しました」


無線に向かって報告する。


『南東からオオカミ型の魔物が接近中。健闘を祈る』


ブチッと不快な音を立てて無線機は一方的に切れた。私はそのまま100メートル先の相棒に話しかける。


「ねぇアンタってオオカミ得意だったっけ」


『普通だな、ヒトよりは得意ってくらいだ』


潜められた声がノイズ混じりに聞こえる。

屋上に着いた私は南東に向かいスコープを覗く。


「ねぇ、東の方に引き付けてくれない?、撃ちやすいから」


『俺囮かよ!』


「しょうがないじゃない。あの子がインフルったんだから」


『……やばい、見つかった』


今度は衣擦れの音がノイズ混じりに聞こえる。


「あんな大声出すからよ」


『誰のせいだと……、まあいい、九時の方角行くぞ』


「了解」


建物の陰からオオカミと隊長が全力疾走で出てきた。滑稽だった。


「なに走ってんのよ、撃ちにくいでしょ」


『撃てるだろ、お前なら』


呆れたように、溜め息を吐く。手前の、今にも噛みつこうとしているオオカミに狙いを定め、銃に魔力を込める。


「3、2、1」


バコンと隣の狙撃銃が火を噴いた。

魔力の弾丸はこめかみに命中し、それに驚いて足を止めたもう一匹は、隊長の刀によって二つに分かれた。オオカミだったものは砂になって風に消えた。


『おい、お前!俺の服掠ったぞ!』


「当てたのよ。良かったわねノースリーブじゃなくて」


『ふざけんな』


ジジッと無線機から音が鳴り、無機質な声が聞こえた。


『駆除ご苦労、東に向かうトカゲ型の魔物を発見した。直ちに急行せよ』


屋上から躊躇なく飛び下り、羽を広げる。

まだ夜は終わらない。

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魔物駆除開始します。 大西 詩乃 @Onishi709

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