因縁の戦い

 翌朝、タフィたちはダンジョンへと向かう途中で、会いたくない人物と遭遇していた。


「待っていたぞ、平民のタフィ・カルドーゾ」


 偉そうにふんぞり返りながらタフィを指差した少年こそ、カリンがバカ息子と称したアポロス・ガーランモだ。身長150センチ、体重45キロという小柄な体格の一方で、態度はものすごくでかかった。


「うっわ、なんであいつここにいんの?」


 タフィは露骨に嫌そうな顔をした。


「あんたがお宝探しをやってるって聞きつけて、大急ぎでやって来たんでしょ」


 カリンは道端に止められている馬車と、従者らしき人たちの姿を確認していた。


「お前、すごい包丁を探しているらしいな」


 アポロスは指を差したまま、どんどんタフィとの距離を詰めていく。


「てめぇには関係ねぇだろ」


「関係大ありだ。なぜなら、俺様がその包丁を先に手に入れるからだ!」


 アポロスは人差し指がタフィの体に触れるギリギリのところで足を止めるや、今度は親指で自分を指差しながら挑発的な台詞を吐いた。


「は? てめぇは包丁なんか必要ねぇだろ」


「お前を困らせるのに必要なんだよ。じゃあな」


 アポロスは意地悪な笑みを浮かべると、馬車へ向かって駆け出した。


「チッ、このバカ息子がっ!」


 タフィは大声で悪口を叫んだが、アポロスは無視して走っていく。


 それが余計に腹立ったのか、さらに悪口を叫ぶ。


「そんな風にクソみたいな性格だからチビなんだよ!」


「チビ? お前今チビって言ったか?」


 アポロスはその場に立ち止まってタフィをにらみつけた。


「言ったよ。クソみたいな性格だから身長が149センチしかないってな」


 身長にコンプレックスを抱いているアポロスは、それを聞いて完全にキレた。


「黙れっ! 俺様はチビなんかじゃねぇ! それに俺様の身長は149じゃなくて、150センチだ!」


 アポロスは感情のままに、タフィに向かってウォーターボールを放った。


「野郎っ。うおりゃあああ!」


 タフィは咄嗟にバットを構え、反射的にウォーターボールを打ち返した。


「「打った!?」」


 思わず声をあげるカリンとボイヤー。


 上から叩くようにして打ち返されたウォーターボールは、低い弾道で左方向へと飛んでいき、そのまま地面に直撃

して消滅した。


「チッ、この野球バカ。お前がどんな手を使おうとも、絶対に包丁は俺様が先に手に入れるからな」


 アポロスは動揺を誤魔化すかのように捨て台詞を吐くと、馬車に飛び乗って去っていった。

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