(短編)道端で出会った人は大物YouTuberだった

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第1話 「一枚の紙」

YouTuber

…それは、世間から注目されている職業らしい

広告や案件などで金を稼ぐ

それが、YouTuber

……だが

なぜそんなにもYouTubeがそんなにも注目されているのか僕にはあまり分からなかった

質はきっとテレビの方が良い

だというのになぜ、小学生や中学生などのユーザーはわざわざテレビを見ずにYouTuberばかり見るのだろう

それが甚だ不思議だ

いや、あれか

テレビの番組はスマホじゃ見ようと思えば見れるかもしれないが、設定などがややこしかったりする

だからこそ、手軽に見れるYouTubeを見てしまうのだろう

じゃあ、テレビがスマホで観れるようになったらユーザーはそちらばかり見るのだろうか?

……いやそういうわけでもない

YouTuberというのにはれっきとしたファンがいるのだからだ

「…わからん」

考えれば考えるほど謎が深まるような気がしてならない

そんな風に、僕が考え事をしながら歩いていると…

「あのっ…!」

背後から声がした

僕だろうか?と後ろを振り向く

…知らない女の子がいた

人違いだろう

僕は無視してそのまま歩き出そうとする

「ちょっ!待って!待ってってば!」

するとなぜか手を掴まれる

どうやら僕を呼んでいたらしい

「……誰?」

見知らぬ人なので尋ねる

「あ、あのあのあの……!カイさんですかっ?」

「誰ですかそれ?」

「あれっ?……人違い?」

するとその子はスマホを取り出して、スマホと僕を交互に見る

なんなんだ一体

「カイさんでよね?」

「違いますけど?」

「だってほら」

スマホの画面を見せつけてくる

そこに僕にそっくりの人物が映っていた

「これは?」

「カイって人の顔です」

「うーん、人違いだよきっと」

「そうなのかな……?」

さっきから口調が敬語だったりタメ口だけど大丈夫かこの子

「じゃあ、僕用事あるから」

特に用事もないがそう言っておく

「あ!」

するとその子は突然目を見開く

「どしたの?」

「髪の毛弄った!」

「いや、髪の毛弄るくらい誰だってするでしょ」

「カイさんTwitterで言ってた!嘘つく時髪の毛弄るって!

絶対にカイさん!顔も姿も絶対カイさん!どうなの⁉︎貴方はカイさんなの⁉︎どうなの⁉︎」

「だーもうるさい!」

口元に人差し指を立ててしーっと言う

「そんな大声で言わないでくれ………恥ずかしい」

「やっぱりじゃあカイさん?」

「……はぁ」

僕はため息を吐く

「君は、よく観てるね」

「そう言うことを言うってことはカイさんでいいんですかっ……?」

「……そう言うことだからあんまり大声で叫ばないでくれ、恥ずかしいから」

それにしても驚いた

昔間違えてTwitterに乗っけた顔写真を持っているとは……それに何気なく呟いたツイート内容まで知ってるし……

「君は僕の信者かなにか……?」

「ふふんよくわかりましたね」

「カイさんの登録者数五百人の時からずっと見てますよ」

「そう言う奴に限ってそんな時代から見てないって一番言われるから」

「スクショありますけどいります?」

「いや別にいらない」

そう言うってことは本当にその時から見てくれているんだろう

説明するのを忘れてたが、こんなふうにYouTubeのことをうんたらこうたら言っていた僕も実はYouTubeにて動画投稿をしていた

だけど、いろんな理由があって辞めた

そんな感じだ

辞めてから数年経つが、まさか昔のファンからリア凸されるとは思わなかった……

「んで、どうしたの?僕はカイに似てるから声を掛けたって感じ?」

「そういうことですね。なんか後ろ姿と顔を見て、あっ、カイさんだなって」

「もし別人だったら恥をかくだけだろうに」

「そのくらいでへこたれるだけの精神なんか持ち合わせていませんよ

というかまず、カイさんに色々聞きたいことがあるんですけどっ!」

「えーっと……用事があってだな……」

「そうなんですか?じゃあこれ」

すると彼女はスマホを突きつけて、

「LINEのコードです。読み取ってLINE交換してくれませんか?」

「え、えっとだな……」

さてどうするか

あまりファンと関わりを持ちたくないのだが……

ぶっちゃけもう投稿する気ないし……

「今、どう逃げようか考えましたよね?」

「うげっ!」

考えたことがそのまんま彼女の口から出たのでびっくりする

「図星ですか……まぁ、Twitterでのあなたの性格を見る限りそんなんだとは思いましたよ。私は一ファンとして貴方と話がしたいんです」

「……でも、僕はもう引退しているから……」

「確かに貴方は引退しているのかもしれません。それは、自分自身の間でです

貴方は突然なにも言わずに失踪した。私たちファンは貴方に放置されたんです」

「投稿を辞めようが辞めまいが勝手だろ?」

「えぇ、勝手です。ですが、私はファンとして聞きたいんです。貴方に色々なことを」

「特別話すこともない」

「じゃあ明日にでも動画投稿できるんですよね?」

「特別理由はないが、動画投稿はめんどくさい。だからしない、それだけだ」

「なんというか、動画で貴方のことを見てましたけど、予想通り謎に包まれていますよね〜」

「う、うるさいな!」

すると彼女は一拍置いて

「……だったらまぁ」

さらさらと彼女はメモ帳にペンを走らせる

そしてメモの一枚を僕に渡す

「私の住所です」

「ここにこいってことか?」

「私は来て欲しいですけど、貴方の気分次第でいいですよ。私はここで貴方を待ち続けます。用事があるんでしたよね、時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。

それじゃあ、この辺で」

「一人暮らしか?」

「一人暮らしです」

「……わかった。不用心だな、一人暮らしなのに見ず知らずの男に住所を教えるなんて」

「見ず知らずじゃないですよ!私の尊敬している人です」

「……なるほどな」

「それでは、待ってます」

そうしてそいつはその場から姿を消す

「……捨てるか」

とその辺に捨てようとしたが、考えてみたら個人情報だ。もし悪用でもされたら……

「はぁ、捨てるわけにもいかない、か」

そうして僕はそのメモをポケットに入れ、歩き出すのだった

一つの胸騒ぎを覚えながら



つづく

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