エレビエル・プラネット

織田 伊央華

第1章『独り立ち編』

第0話『プロローグ』

広大な宇宙空間。

上も下もなく、果てしなく遠くまで続くその空間にぽつりと一つの物体が浮遊していた。

正立方体に近い形状をした、人工物めいた形状であり、周囲に何もない空間に浮かんでいる物体。

恒星などからも離れていることからその物体に当たる光の類も少ない。その為、その物体がどのような色をしているのかはわからないだろう。

いつからそこにあるのか。

近くに他の物体や天体もない事から動いているのかすら判別が難しい。


そんな物体に動きがあった。

『・・・・・物体の接近によりセーフモードで再起動・・・・・起動完了』

物体の表面に青白く細い線が走る。

『船体状況把握開始・・・・完了。続いて周辺宙域を再スキャン・・・・完了。当該物体を確認。救命ポッドと認識。ポッド内に生体反応確認。帝国条約に則り、生存者の救助を申請・・・・・・・司令部とのリンクが確認できません。再接続開始・・・・当艦の通信可能距離に中継ブイを確認できません。周囲の天体より位置情報の取得を開始・・・完了。銀河連邦宙域と判断。当艦の最上位命令を一部凍結、艦AIへ一部権限の委譲開始・・・成功。保留中の救命ポッドの回収行動を開始します

物体内部に響く機械的な音。

その直後に物体の一部が開き、小さい何かが飛び出した。

その小さい物体は高速で接近中だった救命ポッドと速度を同期させ、取りつき、固定後に物体へと引き返した。

『救命ポッドの情報取得・・・完了。当該ポッド内の要救助者はコールドスリープ中と判断。委譲権限を用いて艦内医療区域の使用を許可。収容後、蘇生措置を実施します。』

小型の宇宙船によって回収された救命ポッドを回収した正方形の物体は、開いていたハッチを閉じると、発していた青色の光を消し、再び沈黙を始めるのだった。

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