第9話 私は君を『観察対象』として好きです(編集)
(ちょっと待って何それ!?私だってチョコを君に贈りたいよ!?おのれ朝日さんも凛花さんも勝手な事を!このままでは許せん。討ち取りじゃー!)
(落ち着け!俺はそんな気は無いからな!)
(いや!君の事だ!絶対にみんな好きになるに決まってる!もー!絶対に許せない!)
何でこんなに興奮しているのこの子?
そもそも俺を好きなのかお前は。
俺は苦笑いを浮かべながらリビングでメッセージを読んだり返事をそのまま返したりしていた。
忙しないんだが。
しかしこれ何か厄介な事になってないか?
俺は考えながら再び苦笑いを浮かべる。
面倒臭い。
(あのな。何でお前はそんなに俺のチョコ動向にこだわるんだ。お前は俺が好きなの?ねえ)
(好きとかじゃ無いけど!だって悔しいよね。何だか色々と!私の観察対象に対してそんな事されるの気持ち良いとは思えないしね!!!!!)
(俺としては観察対象と言われるのがアレなんだが。そこは素直に好きと言ってもらった方が)
(貴方は観察対象であって私の興味対象だから。だからまあ好きとか無いよ?)
無茶苦茶な理論なんだが.....。
俺は顔を引き攣らせながらそのままスマホの画面を見る。
パンダのスタンプを無数に送ってくる杉山。
俺はその杉山のメッセージに溜息を吐きながら額に手を添える。
それから、俺はお前のモノじゃないぞ、と呟きながら文章を送る。
するとこんな返事が来た。
(いや?貴方は私の実験動物だよ?)
(無茶苦茶にひでぇな。俺はお前の実験動物じゃねーよ)
(アハハ。まあそれは冗談だけどねぇ。でも私は君をエッチな気分に絶対にさせたいからまだまだ勝負しないとね)
(俺はそういうのには興味ないっての。良い加減にしろよ)
(でも私は貴方に興味があるからねぇ)
(良い加減にしろ)
アハハ、と文章を送ってくる。
俺はその文章を読みながらまた額に手を添えた。
からかい上手かコイツは。
まるで何処ぞの漫画だな!全く、と思いながら居ると。
こんな文章が来た。
(そういえば今度は家の中でこっそり裸で露出してみようかって思ってるんだけどどう思う?)
(死ね)
(えー。直球でそんな事言わずに。素直にどう思う?)
(何考えてんだこの痴女!アホ!どう思うもクソも無い!)
この変態女め!
俺は赤くなりながら文章を送る。
すると何か写真?の様なものが送られてくる。
それはどうやら風呂場の写真の様だ.....は?
よく見れば風呂場の短いGIF。
俺はどんどん赤面していく。
そこにはバスタオル姿の杉山がニヤッとして立っていた。
こ。このクソバカ!
(何すんだお前コラァ!!!!!)
(アハハ。恥ずかしい)
(嘘吐け!お前という痴女は!俺には妹が居るからな!良い加減にしろ!)
(てへぺろ♪)
(てへぺろじゃない!)
こんな馬鹿野郎に付き合ってられるか!
俺は考えながらそのまま思いっきりスマホを切る。
そして宿題を改めてやり始めた。
それから.....明日の事を考える。
そういえば明日は凛花とのデートだったな.....、と思いながら。
するとナイスタイミングというか。
考えを見透かした様にメッセージが来た。
今度は誰だ、と思いながら見ると。
凛花だった。
(先輩)
(え?どうしたんだ。凛花)
(明日の事ですけど。明日はお昼ご飯はどうしますか)
(昼飯?昼飯だったら適当に買うぞ)
(先輩。それはマイナスです。私に言う事じゃないです。お金が勿体無い)
俺は苦笑した。
節約家だな、と。
それから頬を掻く。
ではどうしたら良いのだろうか、と思いながら。
すると凛花は、明日は私がお昼ご飯を作ります。公園か何処かで食べませんか、と言ってくる。
俺は目を丸くする。
そして返事を送った。
(任せて良いのか?お前に)
(はい。任せて下さい。それから先輩。先輩は女の子で好きな髪型とかありますか)
(それはお前のか?)
(私の髪型ですね。先輩好みの髪型にしたいです)
(それは何かその。デートみたいなんだが)
(デートじゃないですよ?!)
デートじゃないのか。
驚いている様だが。
でも何だかそのデートみたいなんだが。
俺は苦笑いをまた浮かべながら文章を読む。
そうしていると、先輩は本当にオブラートに包まないというかデリカシーが無いですね。いきなり女子にデートなんて、と言ってくる凛花。
じゃあ何なのでしょうね.....。
(すまんな。馬鹿だからな俺は)
(あ.....すいません)
(いえいえ)
俺は答えを返信しながら笑みを浮かべる。
相変わらず良い子だな、と思いながら。
喋れる様になったら.....もっと良いのだろうか。
考えながら居ると.....インターフォンが押された。
俺は?を浮かべていると。
お兄!忙しいから出て!、と声がしたので出る事にした。
のだが何でコイツ!?
何で!?
「おい!何やってんだお前!」
『自宅の位置を聞いちゃった。結構な極秘裏に』
「朝日だな!?あの野郎!!!!!」
俺はプンスカ怒りながら玄関に向かう。
そして玄関を開け放つと。
紙袋を持ったニヤッとしている杉山が居た。
ニコニコしている。
唖然としていると杉山はその持っている紙袋を渡してくる。
バレンタインだよー、と言いながら、であるが。
え?、と思いながら杉山を見る。
俺は見開く。
「私だって貴方に興味があるんだから。渡したいものは渡したいから」
「いや。そういうの止めてくれない?誤解するから」
「うん。アハハ。あ.....でももし誤解じゃないとしたら?」
「え?」
「この気持ちが本物だとしたら.....?」
杉山はモジモジしながら俺を見る。
俺はボウッと火が点いた様に赤くなる。
え?どういう事だ、と思いながら、である。
まさか.....本当に?
本当に杉山は.....!?、と赤くなる。
だが次の言葉で俺はラブコメな展開でズッコケた。
このクソッタレめ、と思う展開だ。
「まあそんな訳ないけど」
「.....ないんかーい!!!!!」
「そんな訳無いでしょ?貴方はあくまで観察対象なんだから」
「お前は!」
「あら?期待したの?アハハ」
膝から溜息で崩れ落ちた。
杉山お前という。
おおブルータス.....散々馬鹿にしやがって.....。
思いながら俺は杉山の額にチョップをした。
すると杉山は、何するの!、と痛みを堪える様に涙を浮かべた。
そしてこうきっぱり言い切った。
「天罰ですけど何か」
「もー!」
「でもまあサンキューな。仮にも嬉しいよ」
「仮にもって。まあ良いけどねぇ」
杉山はツンとしながら答えた。
全く、と頬を膨らませて。
しかし有難いよな。本当に。
でもな杉山。
そして凛花。朝日。俺は.....。
と思いながらだったが。
俺は必死に隠す様に首を振って笑みを浮かべる。
そしてニヤッとしながら杉山に向いた。
まあそれは良いけど。
「早く帰りな。もう夕暮れだぞ。このままだと夜になるぞ」
「あ。そうだね。.....うん。じゃあね」
「ああ」
俺は何度めかも分からないが苦笑いを浮かべる。
杉山は笑顔で手を振ってニコッとしながらこの場から去って行った。
俺はそれを控えめに見送ってから踵を返す。
その途中でこんな声が耳に聞こえた気がした。
全く。とーちゃん。君は何も変わってないね、と。
俺はハッとして背後を見るが。
そこには誰も何も無かった。
気のせいか?今のは.....?
何だ一体。
俺は眉を顰めながら見るが。
何も答えは出ない。
レンガがあるだけだった。
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