第3話 『また』君の家に(編集)
「凛花さん。長野くんの事を教えてくれない?」
「.....」
「.....いや。それなりに困っているからな?良い加減にしろ杉山」
俺と中学の後輩だった凛花との再会後。
杉山はニコニコしながら凛花に思いっきり迫っていた。
凛花に俺の事を隅々まで知りたいと質問をぶつけている。
でも何だか違和感がある感じの会話だ。
まるで.....初めて会った様な感じでは無い感じ。
どうなっている?
まあ何方にせよ止めなくてはなるまい。
考えながら俺は杉山を止める。
だが杉山は目を輝かせて質問を止めなかった。
その時だ。
背後からツッコミが飛んできた。
「こらこら。五月蝿いよ」
と言葉が飛んできてから杉山の頭に書籍が飛ぶ。
痛い〜、と言いながら杉山は涙目でその人を見る。
それは司書の江口さんだった。
中年女性な感じの。
俺はそんな江口さんを見てから、すいません、と言いながら杉山と共に黙る。
「そうそう。図書室では静かにね」
「.....はい」
「すいません」
俺達は頭を下げながら謝る。
それから江口さんはそのまま受付に戻って行った。
俺はそれを見ながら杉山を睨む。
お前な、と言いながら、であるが。
杉山はそんな言葉にクククと吹き出した様にしながらクスクスと笑う。
それから俺を涙を拭きながら見てきた。
「アハハ。騒ぎ過ぎちゃったね」
「全部お前のせいだけどな」
「まあそうだね。確かに。御免なさい」
「それでどうするんだこの後」
俺は杉山をジト目で見る。
そうしていると、うーん。えっとね、と杉山は俺をニコッと見てくる。
それからいきなり俺の手を握ってから、じゃあ漫画選ぼっか、と言う。
俺はビックリしながらその手を見る。
何すんだいきなり。
そんな感じで思っていると。
凛花が俺達を見ていた。
それからササッとスマホを弄ってから見せてくる。
(杉山先輩。あまりイチャイチャしないで下さい)、と書かれていた。
(お2人はどういう関係ですか)
「え?私と長野くん?そうだね。本当に色々な関係」
「誤解を招く様な発言をするんじゃない。えっとな凛花。俺達の関係だがそんな深いもんじゃないから。友人関係みたいな」
そんな言葉に凛花は、(本当ですか)、とホッとした様な感じを見せる。
何故そんな感じの顔をするのかは分からないが、だ。
俺はその顔を見てから杉山を見てみる。
杉山は真剣な顔で顎に手を添えている.....うん?
「何しているんだお前は?」
「いや。うーん。いや。何でもない♪」
「???」
意味不明なんだが。
俺は考えながら、漫画を選ぶんじゃないのか、と杉山に持ち掛ける。
すると凛花がまた、(長野先輩)、と書きながら向いてきた。
俺はそんな凛花を見る。
凛花はモジモジしながら俺を見ていた。
ん?何だ?
(もしかして長野先輩は漫画を見たいんですか?それだったら今流行りのオススメが有ります)
「オススメ?それってどんな?オススメだ?」
(長野先輩の好きなバトル系です)
「へえ?.....え?いや。よく知っているな。俺がバトル系が好きなの」
(へ?あ、えっと、heiobhjsajuah.....)
凛花の打った文字が滅茶苦茶になった。
そして思いっきり目を回す。
それから、(えっと。とにかくこっちです)、と指差した。
俺は???を浮かべながら付いて行く様に歩き出す。
というか何というか俺は凛花に一度たりとも漫画でバトル系が好きとは言ってない気がする。
それなりに昔に漫画好きとは言ったが、だ。
一体何故その事を知っているのか、と思いながらも案内してもらうと。
その中で杉山がニヤニヤしているのに気が付いた。
「やっぱりね」
「は?どういう事だ?」
「君が気付くまでは内緒。.....内緒。私達の関係」
「???」
何度も言うが意味不明過ぎる。
俺はそんな考えを浮かべながらそのまま案内された場所に向かう。
それから本棚を見つめる凛花。
俺はその指さされた方向を見てみる。
そこには面白そうなバトル系の漫画が置かれていた。
ああそういえば言い忘れていたがこの学校は基本的に生徒の自由を尊重している。
その為に漫画とかも置かれている。
まあ流石に教育上悪いのかラノベとかは流石に無いけど、だ。
学校にそんなもの置かないと思うけど。
俺は考えながらその漫画を手に取る。
ちょうど良いスパイスの効いているバトル系だ。
というか.....俺の好みに合っている。
俺は驚きながら凛花を見た。
「凛花。.....俺の好みに合わせたのか?」
(え。ち、違いますよ?)
「そうか?でもかなり俺の好みに合っているけど」
(偶然です)
「.....???」
偶然にしてはかなり好みが合っている、と思ったが。
まあ良いや、と思い巻数を少しだけ持って行く。
それから杉山を見ると。
杉山は、そういうのが好きなんだね、と笑みを浮かべて見てくる。
俺は、まあな、と返事をした。
「凛花ちゃんは物知りだね」
「そうか。何で念を込めた様に言ってんだ」
「内緒」
「お前さんさっきから何がしたいのか」
「内緒」
あのな。内緒って。
何が言いたいのかさっぱり分からんのだが。
まあ良いや、と思いながら俺は顔を引き攣らせながらそのまま漫画を見る。
そして面白いな、と思いながら見ていると杉山はまたメモを取った。
俺の好みを知る為に、であるが。
そして俺を見てくる。
「君の好みが大幅でも知れたから良かった」
「.....はいはい。そうですか.....」
「後はねぇ。そうだ。また家に案内してよ」
「.....は?」
またって何だ、と聞くと。
杉山は見開いてビクッとした。
それから黙ってから慌てて切り返す。
凛花もピクッと反応した様な感じを見せる。
俺は凛花をチラ見しながらそのまま杉山を見る。
どういう事だ?、と思いながら俺は杉山を見るが。
杉山はニコニコッとしていた。
先程の感じではない。
何だコイツ.....気になるな。
「女の子に追及無し。バラすよ?」
「うお。オイオイ。この野郎.....」
「だから今度家に招待してね!」
意味が全く分からない。
そんな感じで目をパチクリしていると。
凛花が、(私も長野先輩の家に行ってみたいです)、と書いた。
え!?は!?、と思いながら凛花を見る。
凛花はやる気に満ち満ちていた。
何を言っているの!?
俺は愕然とする。
(別の日でも良いです)
「.....いや.....良いけど。つまらないぞ?俺の家」
(それでも良いんです。是非行きたいです)
「あれあれぇ?何だか私が言うよりもかなりやる気になってない?長野くん」
「.....いやからかうなって。そんな事無い」
いやいや。
仮にも女の子を家に呼ぶってその。
うん冗談じゃない。
特に杉山はもっと冗談ではない。
どうしたものか、と思いながら俺は盛大に溜息を吐く。
それから2人を見つめる。
2人は、というか。
杉山の方が特に何故かニヤニヤしながら俺を見ていた。
何だコイツ、と思うのだが.....。
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